本技術概要は、Elisa Fracchia氏、Claudio Mus氏によって執筆され、ACTA METALLURGICA SLOVACA(2024年)に掲載された学術論文「LOW CARBON FOOTPRINT ALUMINIUM COMPONENTS FOR E-MOBILITY」に基づいています。
![Fig. 1 RESAL supply format [15].](https://castman.co.kr/wp-content/uploads/image-3103.webp)
![Fig. 2 Production of specimens for alloy characterization. a) casting; b) mould; c) obtained specimen [15].](https://castman.co.kr/wp-content/uploads/image-3104.webp)
キーワード
- 主要キーワード: リサイクルアルミニウム HPDC
- 副次キーワード: AlSi9Cu3(Fe), E-モビリティ, 循環型経済, バッテリーハウジング, 低炭素フットプリント, アルミニウムスクラップ
エグゼクティブサマリー
- 課題: E-モビリティへの移行には低炭素な製造ソリューションが不可欠ですが、要求の厳しいHPDC(ハイプレッシャーダイカスト)用途で100%リサイクルアルミニウムスクラップを使用することは、品質管理上の課題を伴います。
- 手法: 本研究では、自動車産業のスクラップから供給されたEN AC 46000(AlSi9Cu3(Fe))合金のみを使用し、E-モビリティ用バッテリーハウジングを製造。そのミクロ組織と機械的特性を標準的なインゴット材と比較評価しました。
- 重要なブレークスルー: HPDCプロセスを用いることで、鋳造添加剤を使用せずとも、100%リサイクル合金から微細で高品質なミクロ組織と共晶シリコンを持つ部品を製造できることが実証されました。
- 結論: HPDCは、自動車スクラップを高品質かつ低炭素フットプリントのE-モビリティ部品に直接転換し、循環型経済を推進するための重要な技術です。
課題:なぜこの研究がHPDC専門家にとって重要なのか
E-モビリティへの急速な移行が進む中、自動車業界は持続可能性と循環型経済の実現という大きな課題に直面しています。特にアルミニウムは、その軽量性と優れた特性から電気自動車に不可欠な材料ですが、一次アルミニウムの生産は膨大なエネルギーを消費し、環境への負荷が大きいという問題を抱えています。一次アルミニウム1トンの生産には、ボーキサイト4トンと14,000 kWhもの電力が必要です。
一方、リサイクルアルミニウム(二次合金)は、一次材に比べて最大95%のエネルギーを節約でき、CO2排出量を大幅に削減する可能性を秘めています。しかし、特に自動車部品のような薄肉で複雑な形状が求められるHPDC製品において、品質のばらつきが懸念されるスクラップ材を100%使用することは、これまで技術的なハードルが高いとされてきました。本研究は、この課題に正面から取り組み、リサイクル材のみを用いて高品質なE-モビリティ部品を製造する実現可能性を検証することを目的としています。
アプローチ:研究手法の詳解
本研究では、品質評価の信頼性を確保するため、体系的かつ厳密なアプローチが採用されました。
- 使用材料: 自動車産業から発生したEN AC 46000(AlSi9Cu3(Fe))合金のスクラップ(本稿では「RESAL」と呼称)を主材料としました。比較対象として、認証済みの同種インゴット合金を使用しました。
- 予備分析: まず、RESALとインゴット合金をそれぞれ10kgずつ電気炉で700℃で溶解し、直径50mm、厚さ20mmのタブレット状試験片を鋳造しました(図2参照)。これらの試験片を用いて、化学組成分析(発光分光分析)、ブリネル硬さ試験、示差走査熱量測定(DSC)を実施し、基礎的な材料特性を比較評価しました。
- HPDCによる部品製造: 次に、RESAL合金を5トンのガス燃焼式溶解炉に投入し、脱ガス処理を施した後、1350トンのHPDCマシンに移送しました。以下のパラメータで、革新的なバッテリーモジュールハウジング(BM-Basic Module)を製造しました。
- 溶湯温度: 710 °C
- 射出速度: 2.67 m/s
- 最大射出圧力: 220 bar
- 最終製品評価: 製造されたバッテリーハウジング(図3参照)からサンプルを切り出し、ミクロ組織観察(光学顕微鏡、SEM-EDX)、ブリネル硬さ測定、DSC分析を行い、リサイクル材のみで製造された最終製品の品質を詳細に評価しました。
ブレークスルー:主要な研究結果とデータ
本研究により、100%リサイクルアルミニウムのHPDCにおける実用性を裏付ける、いくつかの重要な発見がありました。
発見1:微細で均質なミクロ組織の実現
HPDCプロセスの急速冷却効果により、最終製品のミクロ組織は劇的に改善されました。元のRESALスクラップの断面では、図8に示すように粗大な板状の共晶シリコンが観察されました。これに対し、HPDCで製造されたバッテリーハウジングでは、図9に示すように、非常に微細で洗練された共晶組織が形成されていることが確認されました。さらに、機械的特性に悪影響を及ぼすことで知られる針状のβ-Al5FeSi(鉄系金属間化合物)も、最終製品中では元のRESAL材よりも「非常に細く、短く」なっており、その有害な影響が軽減されていることが示唆されました。
発見2:インゴット材に匹敵する硬度と品質の維持
ブリネル硬さ測定の結果は、リサイクル材の品質がインゴット材と同等レベルに維持されていることを示しています。図6に示されるように、予備分析で作成したタブレットの平均硬さは、RESAL材が77.4±6 HB、インゴット材が78.1±1.8 HBと、ほぼ同等の値でした。HPDCで製造された最終製品の硬さは72 ±1.5 HBであり、供給されたままのRESALスクラップ片の硬さ(73 ±1.6 HB)と類似していました。これは、再溶解とHPDCプロセスを経ても材料特性が劣化せず、安定した品質の製品が得られることを示しています。
研究開発および製造現場への実用的な示唆
本研究の結果は、HPDCに関わる様々な専門家にとって、具体的で実用的な知見を提供します。
- プロセスエンジニアへ: 本研究は、HPDC特有の急速冷却が、特別な改質剤や結晶粒微細化剤といった鋳造添加剤なしで100%リサイクル合金のミクロ組織を微細化できることを示唆しています。これにより、溶湯処理プロセスを簡素化し、コストを削減できる可能性があります。
- 品質管理チームへ: 図9のミクロ組織と図6の硬さデータは、原料となるスクラップの組成に多少のばらつきがあったとしても、管理されたHPDCプロセスによって最終製品の品質を一貫させることが可能であることを示しています。これは、原料の化学組成だけでなく、最終製品のミクロ組織を重視した新しい品質検査基準の策定に役立つ可能性があります。
- 設計エンジニアへ: バッテリーハウジングで実証されたように、リサイクル材を用いて薄肉(< 1.5mm)部品を鋳造できる能力は、一次アルミニウムに頼ることなく、E-モビリティ向けの複雑で軽量な設計が実現可能であることを裏付けています。
論文詳細
LOW CARBON FOOTPRINT ALUMINIUM COMPONENTS FOR E-MOBILITY
1. 概要:
- Title: LOW CARBON FOOTPRINT ALUMINIUM COMPONENTS FOR E-MOBILITY
- Author: Elisa Fracchia, Claudio Mus
- Year of publication: 2024
- Journal/academic society of publication: ACTA METALLURGICA SLOVACA
- Keywords: Aluminium; High Pressure Die Casting; Aluminium Scrap; AlSi9Cu3(Fe); E-mobility; Recycling
2. 抄録:
急速に進化するE-モビリティへの変革において、循環型経済は、持続可能性と共に、2050年までにヨーロッパをカーボンニュートラルにするための重要な要素の一つです。これは、原料の選択からリサイクル、再利用を目的とした製品設計に至るまで、相乗的なアプローチによってのみ達成可能です。二次アルミニウム合金は、一次金属に比べて炭素フットプリントが20分の1であり、大幅なCO2削減につながります。その特性は、最適化された製品設計を通じてエンジニアリング目標を満足させることができます。機能がアセンブリに割り当てられるスマートなシステムレイアウトを採用することで、二次合金のいくつかの低位な機械的特性を相殺できます。容易な分解のための設計は、選択的な再利用、そして最終的には環境に優しい部品のリサイクルを保証します。この分野の革新的な製品は、インゴット形式に代わる低炭素フットプリントの原料を採用し、最適化されたハイプレッシャーダイカスト(HPDC)技術によって開発され、成功裏に生産されています。本研究では、自動車産業のスクラップから供給されたEN AC 46000合金(AlSi9Cu3(Fe))を用いて、E-モビリティモジュールバッテリー用のハウジング部品を製造しました。選択されたスクラップを溶解し、鋳造してバッテリーハウジングを形成しました。その後、初期のスクラップと得られた部品の両方について、合金の品質を評価するために包括的な分析を行いました。化学分析、硬さ試験、およびミクロ組織観察が実施されました。その結果、鋳造品において微細で高品質なミクロ組織が確認され、リサイクル合金のみを使用したハイプレッシャーダイカスト(HPDC)によるバッテリーハウジングの生産の実現可能性が肯定されました。
3. 緒言:
今日の自動車市場はE-モビリティに向かっており、アルミニウムとその合金は、電気への移行を迅速、クリーン、かつ持続可能にする道を確実に導いています。実際、アルミニウムはリサイクル可能な材料として有名であり、優れた比特性を持ち、そして最後に、自動車産業ですでに広く使用されています[1]。事実、アルミニウムのリサイクルは革新ではありません。鋳造市場におけるアルミニウムのほぼ全量が、スクラップや使用済み部品のリサイクルに由来しています。一次資源からのアルミニウム生産は、非常に高いエネルギー消費と顕著な環境影響を必要とします。1トンの一次アルミニウムの生産には、4トンのボーキサイトと14,000 kWhのエネルギー消費が必要です[2]。一方、リサイクル合金の再溶解は最大95%のエネルギーを節約します[3]。この情報を考慮すると、アルミニウムスクラップはますます重要視されるしかありません。持続可能性と環境への懸念が産業慣行の最前線にある時代において、様々な材料と製造プロセスの環境影響を評価することがますます重要になっています。特に注目される分野の一つが、鋳造所におけるアルミニウム合金部品の生産です[4]。さらに、研究者たちはLCA(ライフサイクルアセスメント)を通じてアルミニウムリサイクルの重要性を証明しています[5, 6]。広大なアルミニウム合金の中で、EN AC 46000合金(AlSi9Cu3(Fe)としても知られる)は、HPDC(ハイプレッシャーダイカスト)による薄肉部品の鋳造のために自動車分野で広範な用途が見出されます。
4. 研究の要約:
研究トピックの背景:
E-モビリティへの移行に伴い、持続可能な製造プロセスと循環型経済の確立が急務となっています。特にエネルギー消費の大きいアルミニウム生産において、リサイクルスクラップの活用はCO2排出量削減の鍵となります。
先行研究の状況:
EN AC 46000合金のミクロ組織や機械的特性に関する研究はすでに行われており、デンドライト状のα-Al、共晶Siプレート、各種金属間化合物(α-Fe, θ-Al2Cu, β-Al5FeSi, π-Al8FeMg3Si6)の存在が報告されています[7]。また、Fe含有量が増加した場合の再溶解の影響についても研究されています[10, 11]。しかし、100%リサイクルスクラップのみを用いて、HPDCでE-モビリティ向けの薄肉・複雑形状部品を製造し、その品質を体系的に評価した研究は限られています。
研究の目的:
本研究の目的は、自動車産業から発生するEN AC 46000合金のスクラップを100%使用し、HPDCプロセスによってE-モビリティ用バッテリーハウジングを製造することの技術的な実現可能性を実証することです。インゴット材と比較して、リサイクル材を用いた最終製品の品質(化学組成、硬さ、ミクロ組織)を評価します。
研究の核心:
研究の核心は、インゴットを一切添加せず、リサイクルスクラップのみを再溶解してHPDCプロセスに投入し、薄肉(<1.5mm)で抜き勾配の小さい(<0.2°)という厳しい設計要件を持つバッテリーハウジングを製造した点にあります。そして、その最終製品の品質が、標準的なインゴットから製造された場合と比較して遜色ないことを、微視的および巨視的な分析を通じて明らかにすることです。
5. 研究方法
研究デザイン:
本研究は、リサイクルアルミニウムスクラップ(RESAL)と標準的なインゴット合金の特性を比較する実験的デザインを採用しています。まず両材料からタブレット状の試験片を作成して基礎特性を評価し、その後RESALのみを用いて実際のE-モビリティ部品(バッテリーハウジング)をHPDCで製造し、その品質を評価しました。
データ収集・分析方法:
- 化学組成分析: 発光分光分析装置(Spectrolab, Ametek)を使用。
- 熱分析: 示差走査熱量計(Setaram Typ. TGA 92 16.18 DSC)を使用し、加熱・冷却時の相変態温度を測定。
- 硬さ試験: ASTM E10-23規格に準拠したブリネル硬さ試験を実施。
- ミクロ組織観察: 光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡(SEM Zeiss EVO15)とエネルギー分散型X線分析(EDX)を用いて、ミクロ組織と金属間化合物の形態・組成を観察。
研究対象と範囲:
研究対象は、自動車スクラップ由来のEN AC 46000(AlSi9Cu3(Fe))合金です。範囲は、スクラップ材の初期評価から、HPDCによる実際の部品製造、そして最終製品の微視的・機械的特性評価までを含みます。
6. 主要な結果:
主要な結果:
- HPDCプロセスにより、リサイクル合金から製造されたバッテリーハウジングは、非常に微細で洗練された共晶シリコン組織を示した。
- リサイクル材(RESAL)から作成したタブレットのブリネル硬さ(77.4±6 HB)は、インゴット材のタブレット(78.1±1.8 HB)とほぼ同等であり、材料品質が維持されていることが示された。
- 最終製品のミクロ組織では、有害とされるβ-Al5FeSi相が、元のスクラップ材よりも細く短くなっており、HPDCの急速冷却が組織の改善に寄与していることが示唆された。
- DSC分析により、最終製品は非常に微細な組織を持つことが確認され、これは薄肉部品の急速冷却に起因すると考えられる。
- 本研究は、鋳造添加剤を使用することなく、100%リサイクルスクラップのみを用いて高品質なE-モビリティ部品を製造できることを実証した。
図の名称リスト:
- Fig. 1 RESAL supply format [15].
- Fig. 2 Production of specimens for alloy characterization. a) casting; b) mould; c) obtained specimen [15].
- Fig. 3 BM- Basic Module battery housing.
- Fig. 4 DSC analyses - RESAL and Ingot tabs.
- Fig. 5 DSC analyses in the heating and cooling conditions for the Module battery housing alloy.
- Fig. 6 Brinell hardness results.
- Fig. 7 Optical Microscope images. RESAL tablets microstructures (a, c) and ingot microstructures (b, d).
- Fig. 8 Optical Microscope images. RESAL section microstructures. Magnification 20X (left) and 50X (right).
- Fig. 9 Optical Microscope images. Cast microstructures. Magnification 20X (left) and 50X (right).
- Fig. 10 SEM images. Ingot (left) and RESAL (right).
- Fig. 11 SEM image and EDX analysis in cast component (Fig. 3).

7. 結論:
本研究では、Endurance Overseasが関与する欧州プロジェクト(IPCEI – BATTERIE 1)の進捗が示されました。この研究は、使用済みの46000合金鋳物を用いて、合金のさらなる処理なしにE-モビリティ分野で使用するための新しい鋳物を製造することを含みます。硬さおよびミクロ組織分析から、改質剤や結晶粒微細化剤のような鋳造添加剤を使用せずとも、追加の再鋳造ステップにもかかわらず、合金の品質が維持されているように見えることは明らかです。さらに、鋳造プロセス後のミクロ組織は厚くなっておらず、それどころか、鋳造部品内のα-アルミニウムマトリックス内に非常に微細で均一に分布した共晶シリコン相が観察されます。結論として、このプロジェクトの現段階で、アルミニウムスクラップをリサイクルして、非常に低コストでスクラップ合金のみを使用して新しい部品を製造する実現可能性が明確に示されました。さらなる特性評価の改善は、そのような部品の全体的な品質を評価するために、Basic Moduleバッテリーハウジングの機械的試験に関するものとなります。
8. 参考文献:
- [論文に記載されている参考文献リストをそのまま引用します。翻訳や省略は行いません。]
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専門家Q&A:技術的な疑問にお答えします
Q1: なぜこの研究では、特にEN AC 46000(AlSi9Cu3(Fe))合金が選ばれたのですか?
A1: この合金は、自動車分野で薄肉部品をHPDCで製造するために広く使用されているためです。したがって、リサイクル材の活用を検討する上で、産業的に非常に関連性が高く、現実的な選択肢となります。この合金で実現可能性を実証することは、多くの自動車部品メーカーにとって直接的な価値を持ちます。
Q2: 最終製品の硬さ(72 HB)が、再溶解したタブレット(約77 HB)よりもわずかに低かったのはなぜですか?論文ではどう説明していますか?
A2: 論文ではこの差に言及していますが、最終製品の硬さ(72 ±1.5 HB)が、供給されたままのスクラップ片の硬さ(73 ±1.6 HB)と非常に近いことを指摘しています。このことから、プロセスによる特性の劣化ではなく、一貫した結果が得られていることを強調しています。硬さのわずかな変動は、スクラップの多様な性質や自然時効の可能性に起因すると考えられます。
Q3: 論文では、有害なβ-Al5FeSi相が観察されたと述べられています。HPDCプロセスはそれにどのような影響を与えましたか?
A3: β-Al5FeSi相は確かに観察されましたが、論文によれば、最終的な鋳造部品中では、これらの針状の相は元のRESAL材に見られたものよりも「非常に細く、短く」なっていました。これは、HPDCプロセスの急速な凝固速度が、この有害な相の形態を改善し、機械的特性への悪影響を軽減するのに役立ったことを示唆しています。
Q4: 微細なミクロ組織を達成するために、シリコンの改質剤や結晶粒微細化剤のような鋳造添加剤は使用されましたか?
A4: いいえ、使用されていません。結論部分で、「改質剤や結晶粒微細化剤のような鋳造添加剤を使用せずとも、合金の品質が維持されている」と明確に述べられています。これは、HPDCプロセス自体の急速冷却能力が、組織を微細化する上で非常に効果的であったことを示しており、本研究の重要な発見の一つです。
Q5: 表1の化学分析ではわずかな組成のばらつきが見られます。論文では、スクラップ材を使用することによる固有のばらつきにどう対処していますか?
A5: 論文は、このばらつきがスクラップ部品の多様な性質によるものであることを認めています。しかし、考察と結論では、このような原料のばらつきにもかかわらず、最終的なHPDC部品のミクロ組織と特性は高品質で一貫していたことを強調しています。これは、HPDCプロセスが原料の変動をある程度吸収し、安定した品質の製品を製造できる堅牢性を持っていることを示しています。
結論:より高い品質と生産性への道を開く
本研究は、要求の厳しいE-モビリティ分野において、リサイクルアルミニウム HPDCが真の循環型経済を実現するための強力なソリューションであることを明確に示しました。100%スクラップ材からでも、添加剤なしで高品質な薄肉・複雑形状部品を製造できるという事実は、コスト削減と環境負荷低減の両立を目指す製造業にとって画期的な進歩です。微細で均質なミクロ組織の実現は、部品の信頼性と性能を確保する上で不可欠です。
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著作権情報
- このコンテンツは、Elisa Fracchia氏、Claudio Mus氏による論文「LOW CARBON FOOTPRINT ALUMINIUM COMPONENTS FOR E-MOBILITY」を基にした要約および分析です。
- 出典: https://doi.org/10.36547/ams.30.1.1997
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