冶金スラグで鋳造合金を革新:コスト削減と性能向上を実現する微細構造制御の新アプローチ
本技術概要は、J. SITKO氏によって執筆され、Arch. Metall. Mater. 66 (2021)に掲載された学術論文「AN ATTEMPT TO USE VARIOUS METALLURGICAL SLAGS IN THE MODIFICATION PROCESSES OF CASTING ALLOYS」に基づいています。


キーワード
- 主要キーワード: 冶金スラグ改質
- 二次キーワード: 鋳造合金、AlSi7Mg、IN-713C、微細構造制御、結晶粒微細化、表面改質、ニッケル超合金、アルミニウム合金
エグゼクティブサマリー
- 課題: 鋳造合金の機械的特性は、しばしば粗大な結晶粒構造によって制限され、性能向上とコスト効率の両立が課題となっています。
- 方法: 産業廃棄物である銅スラグや鋼スラグを粉砕・調製し、AlSi7Mgアルミニウム合金およびIN-713Cニッケル超合金の改質剤として適用し、その効果を熱分析と微細構造観察によって評価しました。
- 主要なブレークスルー: 粉砕した銅スラグはAlSi7Mg合金の共晶組織を効果的に微細化し、銅と鋼スラグの混合物はIN-713Cニッケル超合金の結晶粒を微細化することが実証されました。
- 結論: 従来高価な改質剤に頼っていた鋳造合金の特性向上を、低コストの産業副産物である冶金スラグで実現できる可能性が示されました。
課題:なぜこの研究がHPDC専門家にとって重要なのか
鋳造業界、特に高圧ダイカスト(HPDC)の現場では、製品の機械的・動作的特性の向上が常に求められています。その鍵を握るのが、合金の微細構造、特に結晶粒の大きさや形態の制御です。しかし、これを実現するための改質剤は高価であり、製造コストを圧迫する要因の一つとなっています。
一方で、製鉄や製銅などの冶金プロセスでは、産業廃棄物として大量の「冶金スラグ」が発生します。これらは長年、主に建設資材など限定的な用途でしか利用されてきませんでした。しかし、本研究が着目したのは、これらのスラグにNa、Mg、Ca、Tiといった、鋳造合金の改質に有効な元素が酸化物などの形で豊富に含まれている点です。この未利用資源を鋳造合金の改質プロセスに活用できれば、廃棄物の削減(環境貢献)と製造コストの低減(経済性)を同時に達成できる可能性があります。本研究は、この革新的なアイデアの実現可能性を探るために不可欠なものです。
アプローチ:研究方法の詳解
本研究では、産業副産物である冶金スラグが鋳造合金の改質剤として機能するかを検証するため、以下の体系的なアプローチを取りました。
- 材料の準備:
- 製鋼ダスト(EAFD)と粒状銅スラグを実験材料として使用しました。
- これらのスラグを実験室用ボールミルで粉砕し、篩(ふるい)にかけて粒度を調整しました(本試験では0.071mm以下の粉末を使用)。
- その後、電気炉で800~850℃で1.5時間焼成し、不純物や水分を除去しました。
- AlSi7Mgアルミニウム合金の改質試験:
- 約1kgのAlSi7Mg合金を炭化ケイ素るつぼ内で溶解し、約850℃に到達後、準備したスラグ粉末30gを添加しました。
- 5分間保持し、定期的に攪拌した後、凝固プロセスを記録するためのQC40-80プローブに鋳込みました。
- 得られたインゴットから試料を採取し、微細構造を観察しました。
- IN-713Cニッケル超合金の改質試験:
- 本試験では、溶湯に直接添加するのではなく、鋳型の表面に改質剤を含むコーティングを施す「表面改質」のアプローチを取りました。
- 3種類の鋳型を用意しました:(1) コーティングなし、(2) 従来のアルミン酸コバルトを含むコーティング、(3) ケイ酸ジルコニウム、スラグ混合物(銅スラグと鋼スラグを1:1)、コークス粉を含む新規コーティング。
- ロストワックス法でセラミック鋳型を製作し、真空誘導炉内でIN-713C合金を溶解・鋳造しました。
- 鋳造品の表面と内部の組織を観察し、結晶粒の大きさを定量的に評価しました。
ブレークスルー:主要な発見とデータ
本研究により、冶金スラグが鋳造合金の改質に有効であることを示す、いくつかの重要な発見がありました。
発見1:銅スラグによるAlSi7Mg合金の劇的な微細構造変化
AlSi7Mg合金の改質試験において、特に銅スラグを添加した場合に顕著な効果が確認されました。
- 論文の図2 に示されるように、未処理の合金(a)では粗い粒状の共晶組織が見られますが、銅スラグで改質した合金(c)では、共晶組織が望ましい微細な繊維状に変化していることが明確に観察されました。これは、機械的特性の向上に直接寄与する変化です。
- また、ATD熱分析の結果、銅スラグ添加後に凝固開始温度(Tliq)が4℃上昇したことが示されました。これは、スラグ中の微細な化合物が不均一核生成の核として機能し、結晶化を促進したことを示唆しています。
発見2:スラグ混合物によるIN-713Cニッケル超合金の結晶粒微細化
IN-713Cニッケル超合金の表面改質試験では、スラグ混合物を含むコーティングが結晶粒の微細化に有効であることが示されました。
- 論文の図10 のデータによると、改質を行わなかった鋳造品の平均結晶粒面積が27.15 mm²であったのに対し、スラグ混合物コーティングを施した鋳造品では4.78 mm²へと大幅に減少しました。
- これは、図8 の微細構造写真でも視覚的に確認できます。未改質の大きな結晶粒(a)と比較して、スラグ混合物で改質された組織(c)は、より小さく均一な結晶粒で構成されています。この結晶粒の微細化は、特に高温クリープ特性や疲労強度といった、航空宇宙分野で要求される重要な性能の向上につながる可能性があります。
R&Dおよび製造現場への実践的示唆
本研究の結果は、様々な役割の専門家にとって、具体的で実践的なヒントを提供します。
- プロセスエンジニアへ: この研究は、AlSi7Mg合金の改質プロセスにおいて、高価なストロンチウム(Sr)系改質剤の代替または使用量削減の選択肢として、適切に処理された銅スラグの利用を検討する価値があることを示唆しています。
- 品質管理チームへ: 図2および図8の微細構造写真は、スラグ改質が組織に与える影響を明確に示しており、改質効果を評価するための新しい顕微鏡検査基準を設ける際の参考情報となり得ます。
- 設計エンジニアへ: IN-713Cのようなニッケル超合金部品において、鋳型コーティングによる表面からの結晶粒微細化は、特に薄肉部や応力集中が懸念される部位の信頼性向上に寄与する可能性があります。これは、設計の初期段階で考慮すべき重要な要素です。
論文詳細
AN ATTEMPT TO USE VARIOUS METALLURGICAL SLAGS IN THE MODIFICATION PROCESSES OF CASTING ALLOYS
1. 概要:
- Title: AN ATTEMPT TO USE VARIOUS METALLURGICAL SLAGS IN THE MODIFICATION PROCESSES OF CASTING ALLOYS
- Author: J. SITKO
- Year of publication: 2021
- Journal/academic society of publication: Arch. Metall. Mater. 66 (2021), 4, 1067-1074
- Keywords: Surface modification, metallurgical slags, cobalt aluminate, nickel and aluminium alloys, free enthalpy, microstructure
2. 要旨:
本稿は、鋳造合金の改質プロセスにおける特定の製錬スラグの使用に関する予備的な研究結果を提示する。これにより、これらの合金の構造変化と機械的・動作的特性の向上がもたらされる。0.1mm以下の粒径を持つ粉砕銅スラグが、亜共晶シルミンAlSi7Mgの改質効果に正の影響を与え、粗粒共晶の形態を微細分散型に変化させることが実証された。この改質効果は、前共晶α相にも適用され、追加の結晶化サイトの形成(核生成プロセス)をもたらし、これはATD凝固熱分析によって実証され、TliqおよびTemax温度の上昇を示した。銅スラグと鋼スラグの混合物が、鋳造ニッケル超合金IN-713Cの構造の断片化という表面改質効果に正の顕著な影響を与えることが示された。これまでに実施されたアルミン酸コバルトの改質効果に関する研究結果に基づき、適用された冶金スラグの還元された金属成分がニッケル合金の微細構造の核生成プロセスと形成に与える影響に関する仮説モデルが開発された。
3. 導入:
冶金スラグは、産業廃棄物総量の中で最大のグループを占める。銑鉄や鋼の製錬プロセスでは、大量の高炉スラグや転炉スラグが生成される。銅、ニッケル、亜鉛の製錬プロセスでも相当量のスラグが生産される。一部の冶金スラグの利用可能性、化学組成、物理化学的特性、そして経済的・生態学的配慮が、様々な産業での利用可能性に関する研究の基礎となっている。スラグは、一方では冶金プロセスの廃棄物と見なされるが、他方では他のプロセスにおける重要な原料や製品となり得る。本研究では、これらのスラグを鋳造合金の精錬・改質剤として使用する可能性を探る。
4. 研究の概要:
研究トピックの背景:
冶金スラグは産業廃棄物として大量に発生するが、その化学組成にはSi, Al, Cu, Mn, Feや、改質特性を持つNa, Mg, Ca, Ti, Pなどの価値ある成分が含まれている。これらを鋳造プロセスで利用することは、廃棄物の有効活用と鋳造品の品質向上の両面で意義がある。
先行研究の状況:
冶金スラグが鋳造合金、特に鋼やアルミニウム合金の精錬プロセスで使用される研究は存在するが、鋳造合金の体積改質および表面改質プロセスにおける特定の種類のスラグやダストの使用に関する研究データはこれまで文献に存在しなかった。
研究の目的:
適切に調製されたスラグ混合物や調製物が、AlSi7Mgアルミニウム合金およびIN-713Cニッケル合金の構造改質プロセスにどのように利用できるかを調査し、その予備的な結果を提示すること。
コア研究:
- 粉砕した銅スラグおよび鋼スラグをAlSi7Mg亜共晶シルミン合金に添加し、その微細構造(特に共晶組織)に与える影響を評価した。
- 銅スラグと鋼スラグの混合物を含む鋳型コーティングを施し、IN-713Cニッケル超合金を鋳造して、表面からの結晶粒微細化効果(表面改質)を評価した。
- 自由エンタルピー計算を行い、スラグ中の金属酸化物が炭素によって還元され、核生成の核となり得る金属原子が生成される可能性を熱力学的に検証した。
5. 研究方法
研究デザイン:
本研究は、2種類の代表的な鋳造合金(アルミニウム合金とニッケル超合金)に対し、2種類の冶金スラグ(銅スラグと鋼スラグ)を用いて改質効果を検証する実験的デザインを採用した。AlSi7Mg合金では体積改質を、IN-713C合金では表面改質を評価した。
データ収集と分析方法:
- 化学組成分析: 改質前後の合金の化学組成を分析した。
- 熱分析: ATD(Advanced Thermal Analysis)法を用いて、AlSi7Mg合金の凝固プロセスにおける特徴的な温度(Tliqなど)の変化を記録した。
- 微細構造観察: 光学顕微鏡を用いて、改質前後の合金の微細構造写真を撮影した。
- 巨視的構造評価: IN-713C鋳造品について、表面の巨視的構造を観察し、画像解析プログラム(Met-Ilo)を用いて結晶粒の数と平均面積を定量的に算出した。
- 熱力学計算: HSC Chemistryソフトウェアを用いて、スラグ中の酸化物が炭素によって還元される反応の自由エンタルピー(ΔG)を計算し、反応の実現可能性を評価した。
研究トピックと範囲:
本研究は、冶金スラグを鋳造合金の改質剤として使用する試みに焦点を当てている。対象合金はAlSi7MgとIN-713C、対象スラグは銅スラグと鋼スラグ(製鋼ダスト)である。評価は主に微細構造の変化に限定されており、機械的特性の詳細な評価は範囲外である。
6. 主要な結果:
主要な結果:
- 0.1mm以下に粉砕した銅スラグは、AlSi7Mg合金の共晶組織を粗い粒状から微細な繊維状に変化させる顕著な改質効果を示した。
- ATD熱分析により、銅スラグ添加後に凝固開始温度が4℃上昇することが確認され、不均一核生成が促進されたことが示唆された。
- 銅スラグと鋼スラグの混合物を含む鋳型コーティングは、IN-713Cニッケル超合金の結晶粒を微細化する効果を示した。未改質材の平均結晶粒面積27.15 mm²に対し、スラグ改質材では4.78 mm²に減少した。
- 熱力学計算により、1350℃以上の温度域では、炭素がFe2O3、Cu2O、FeOなどの酸化物を還元し、金属原子を生成する反応が熱力学的に可能であることが示された。これらの金属原子(特にCr)が核生成の核として機能する可能性が示唆された。
Figure Name List:
- Fig. 1. Alloy cast into the QC40-80 probe
- Fig. 2. Microstructure of the AlSi7Mg alloy: initial state (a), modification – steel slag (b), modification – copper slag (c)
- Fig. 3. The influence of grain size on the properties of nickel superalloys castings
- Fig. 4. Average change of the free enthalpy ΔG as a function of temperature for the considered reactions of oxides with carbon
- Fig. 5. The cavity of the ceramic mould
- Fig. 6. Cast from experiment no. 2
- Fig. 7. Change of the surface structure at the height of the castings: unmodified (a)
- Fig. 8. Microstructure of castings: unmodified (a), current technology (b), slag mixture in the modifying coating (c)
- Fig. 9. Influence of technological conditions of casting on the number of grains per mm² of the casting surface
- Fig. 10. Influence of technological conditions of casting on the average grain surface
- Fig. 11. Hypothetical model of the modifying effect of a coating containing zirconium silicate, a mixture of slags and coke breeze




7. 結論:
冶金スラグは、廃棄物や副産物として扱われるが、鋳造合金の精錬および改質を含む多くの産業で成功裏に使用できる。適切に準備された銅スラグを少量を液体の亜共晶アルミニウム合金に導入すると、顕著な改質特性を示すことが示された。IN-713Cニッケル合金の場合、改質コーティング中のスラグ混合物の存在は結晶粒を微細化する。この効果はアルミン酸コバルトよりも劣るが、場合によっては大幅な結晶粒微細化が不要なケースもある。得られた結果は完全には満足のいくものではないが、著者の意見では、ニッケル合金の表面改質用のニッケルスラグや、リン、ナトリウム、カリウム化合物を含む電解スライムやダストなど、より広範なスラグの使用に関するさらなる研究を行う動機となる。
8. 参考文献:
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専門家Q&A:トップの疑問に答える
Q1: なぜ銅スラグがAlSi7Mg合金の改質に特に効果的だったのですか?
A1: 論文では、銅スラグ中に含まれるケイ素、銅、カルシウムなどの微細な分散化合物が、前共晶αデンドライトとそれに続く共晶の「異物」(不均一)核生成サイトとして機能した可能性が高いと示唆しています。ATD熱分析で凝固開始温度(Tliq)が4℃上昇したことは、この不均一核生成効果を裏付ける強力な証拠です。これにより、より多くの場所で同時に結晶化が始まるため、結果として微細な組織が形成されます。
Q2: IN-713Cの改質において、スラグ混合物は従来のアルミン酸コバルトほどの効果がなかったのはなぜですか?
A2: 図9と図10が示すように、スラグ混合物の効果はアルミン酸コバルトよりも弱いものでした。論文の仮説モデル(図11)では、スラグ中の酸化物(Cr2O3, Fe2O3など)がコーティング中の炭素によって還元され、生成された金属原子(Cr, Fe, Cuなど)が核として機能すると考えられています。このプロセスの効率が、従来のアルミン酸コバルトからコバルト原子が放出されるメカニズムに比べて劣っていたため、効果が限定的だったと推測されます。
Q3: スラグを改質剤として使用する際の実用上の課題は何ですか?
A3: 論文では、スラグを適切に準備(粉砕、篩分け、乾燥)する必要があることが示されています。また、IN-713Cのケースでは、高温に耐えるためのバインダーとして50%以上のケイ酸ジルコニウムとコロイダルシリカが必要でした。これらの前処理コストと、原料となるスラグの化学組成のばらつきをいかに管理するかが、実際の製造ラインで安定して使用するための課題となります。
Q4: 論文の仮説モデル(図11)における銅の改質メカニズムについて、もう少し詳しく教えてください。
A4: 論文では、銅の改質効果について2つの可能性を挙げています。一つは、他の金属(Cr, Fe)と同様に、還元された銅原子が核生成サイトとして機能する可能性です。もう一つは、よりユニークなメカニズムで、鋳型と溶湯の界面で銅が即座に溶融することにより、その融解熱で局所的な温度低下(過冷却)を引き起こし、それが核生成を強力に促進するというものです。この過冷却効果が、微細構造形成に寄与したと考えられます。
Q5: この研究の今後の方向性について、著者はどのように述べていますか?
A5: 著者は、得られた結果は有望であるものの、まだ改善の余地があるとしています。今後の研究として、ニッケル合金の表面改質にはニッケルスラグを、またアルミニウム合金の改質と精錬には、リン、ナトリウム、カリウムといった有効成分をより多く含む電解スライムやプロセスダストなど、さらに広範な種類のスラグや廃棄物の使用を検討することを推奨しています。
結論:より高い品質と生産性への道を拓く
本研究は、冶金スラグという長年見過ごされてきた産業副産物が、鋳造合金の微細構造を制御し、その特性を向上させるための低コストで効果的な改質剤となり得ることを力強く示しました。特に、AlSi7Mg合金における銅スラグの有効性や、IN-713C超合金の結晶粒微細化への応用は、コスト削減と性能向上の両立を目指す製造現場にとって重要な示唆を与えます。この冶金スラグ改質というアプローチは、サステナビリティと技術革新を融合させる、未来の鋳造技術の可能性を秘めています。
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著作権情報
- 本コンテンツは、J. SITKO氏による論文「AN ATTEMPT TO USE VARIOUS METALLURGICAL SLAGS IN THE MODIFICATION PROCESSES OF CASTING ALLOYS」に基づく要約および分析です。
- ソース: https://doi.org/10.24425/amm.2021.136426
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