この紹介記事は、[AIP Publishing]によって発行された論文「"Developing a patient individualized flexible silicone implant using SLS and vacuum die casting"」の研究内容を紹介するものです。

1. 概要:
- タイトル: Developing a patient individualized flexible silicone implant using SLS and vacuum die casting
- 著者: Martin Launhardt, Nina Ebel, Markus Kondruweit, Michael Weyand, Tilmann Volk, Dietmar Drummer
- 発行年: 2019年
- 発行ジャーナル/学会: AIP Conference Proceedings
- キーワード: SLS, Vacuum Die Casting, Silicone Implant, Heart Support, Patient Individualized, Flexible Implant
2. 概要 / はじめに
心不全は進行性で医学的に複雑な疾患であり、最終的には心臓移植が必要となります。しかし、内部のフレキシブルな心臓サポートデバイスは、ドナー臓器が入手可能になるまで患者の心臓をサポートしたり、移植が不要になる程度まで心機能を改善したりする可能性があります。技術的には、これは、圧縮力が心臓のみに影響を与え、周囲の臓器には影響を与えないように、患者個別化された形状、フレキシブルな構造、および補強材を必要とします。選択的レーザー焼結法(SLS)は、高価な金型を必要とせずに複雑な熱可塑性部品を製造できます。しかし、利用可能な材料のポートフォリオは非常に狭く、医療用途に使用できるシリコーンゴムタイプの材料はまだ提供されていません。したがって、本研究では、患者個別化されたフレキシブルシリコーンインプラントの製造にSLS真空ダイカストの適用可能性を分析します。SLS真空ダイカストを用いたシリコーン試料の成形および離型に関する基礎研究、ならびにフレキシブルな補強構造を組み込む可能性についても調査します。まず、簡略化された機械的試験により、製造プロセスの実現可能性と、患者個別化された形状を用いた最適化の可能性を示します。最初の機能的なシリコーン心臓サポート構造が製造に成功し、医学的なin-vitro試験に使用できます。
心不全は現在、ドイツで最も一般的な疾患の1つであり、罹患患者数は年々増加し続けています ¹。薬物療法の改善にもかかわらず、心臓移植は末期慢性心不全の第一選択肢です ²,³。しかし、この治療選択肢は、ドナー心臓の数が限られているため、すべての患者に利用できるわけではありません ⁴。したがって、ドナー心臓の待機期間を繋ぐか、心臓移植を完全に回避することを目標に、新たな道が模索されています。心臓サポートシステムは、1980年代から慢性心不全患者に対する心臓移植の代替手段となっています ⁵。一般的に適用される心臓サポートシステムは、血液と直接接触するため、血栓形成や感染症のリスクを伴います。したがって、心臓の周囲に配置され、血液と直接接触することなく、心臓の収縮と弛緩期を機械的に外部からサポートする心臓圧迫マッサージを提供する新しいシステムが研究されています ⁵⁻¹⁰。しかし、これらのシステムはまだ臨床応用されておらず、患者個別化された製造はできません。これは、心臓の表面に位置し、心筋に血液を供給する冠状血管の障害につながる可能性があります。
3. 研究背景:
研究トピックの背景:
心不全は、進行性で医学的に複雑な疾患であり、しばしば心臓移植が必要となります。ドナー臓器の入手可能性の制約から、特に慢性心不全に対する代替治療戦略の探求が必要となっています。従来の心臓サポートシステムは、血液と直接接触するため、血栓形成や感染症などの固有のリスクを伴います。したがって、血液と直接的な相互作用なしに心臓を機械的に補助する体外式心臓サポートシステムが研究されています。この分野における重要な課題は、心臓の表面にある冠状血管の潜在的な障害を防ぐために、患者個別化された心臓サポート構造を開発することです。
既存研究の現状:
心臓サポートシステムは、1980年代から心臓移植の代替手段として研究されてきました ⁵。しかし、現在の体外式心臓サポートシステムは、まだ臨床応用されておらず、患者特異的なカスタマイズが欠如しています。この個別化の欠如は、合併症、特に冠状血管の狭窄の可能性につながる可能性があります。
研究の必要性:
本研究は、冠状動脈血流を損なうことなく効果的な心臓補助を提供できる、患者個別化されたフレキシブルな心臓サポート構造の必要性によって推進されています。このようなカスタマイズされたインプラントを製造できる製造方法の開発は、体外式心臓サポートシステムの臨床応用を進める上で非常に重要です。
4. 研究目的と研究課題:
研究目的:
主な研究目的は、機能的な心臓サポートシステムに使用できる患者個別化されたフレキシブルな心臓サポート構造のための実現可能な製造方法を調査し、検証することです。具体的には、患者特異的なフレキシブルシリコーンインプラントの製造にSLSで生成された真空ダイカストを利用することの適用可能性を評価することを目的としています。
主な研究課題:
本研究では、以下の主要な側面に取り組むことに焦点を当てています。
- 患者個別化された心臓サポート構造を作成するための2つの異なる製造ルートの探求。
- SLSで製造された真空ダイカストを使用したシリコーンの成形および離型特性に関する基礎研究。
- シリコーンインプラント設計へのフレキシブルな補強構造の統合に関する調査。
- 提案された製造プロセスの実現可能性を評価し、患者特異的な形状の最適化の機会を特定するための機械的試験。
- 医学的なin-vitro評価のための最初のシリコーン心臓サポート構造プロトタイプの製造と機能評価。
5. 研究方法
研究デザイン:
本研究では、シリコーン心臓インプラントを作成するための2つの異なる製造方法(カップAとカップB)を評価するために実験的デザインを採用しています。この研究は、プロトタイプ製作とその後の機械的および体積性能試験を通じて、各方法の実現可能性を評価することに焦点を当てています。
データ収集方法:
データ収集方法には以下が含まれます。
- 視覚的観察: 「FIGURE 3. Cup A during contraction without a heart shows a three folded silicone membrane shape(心臓なしで収縮中のカップAは3つ折りシリコーン膜形状を示す)」に示されているように、空気圧作動中の膜の収縮挙動の定性評価。
- 光学式変位測定: 「FIGURE 4. Expansion test on cup B(カップBの膨張試験)」に示されているように、光学的方法を用いたカップの膨張の定量的評価。
- 体積変位測定: 水で満たされたバルーンダミー心臓と圧力装置を使用して、心臓に向かう体積変位と外向きの体積変位の定量化。「FIGURE 5. Volumetric displacement of cup B towards the outside divided into width and height(カップBの外側への体積変位を幅と高さに分割して示す)」および「FIGURE 6. Volumetric displacement of cup A and B towards the heart(カップAおよびBの心臓への体積変位)」に示されている体積変位データは、各設計の内向きの圧力方向と外向きの膨張を最小限に抑える効果を判断するために分析されました。
分析方法:
分析には、さまざまな補強構成(円形ヘリックス、楕円形ヘリックス、およびヘリックスなし)を含むカップAおよびカップBバリアントの体積変位および膨張特性の比較評価が含まれていました。「FIGURE 5. Volumetric displacement of cup B towards the outside divided into width and height」および「FIGURE 6. Volumetric displacement of cup A and B towards the heart」に示されている体積変位データを分析して、内向きの圧力方向と外向きの膨張を最小限に抑える各設計の効果を判断しました。
研究対象と範囲:
研究対象は、プロトタイプシリコーン心臓サポート構造、具体的にはカップAおよびカップB設計でした。研究の範囲は、これらのプロトタイプの製造可能性評価と基本的な機能試験に限定されていました。プロトタイプは、将来の小動物in-vivo試験での潜在的な応用のための最初の反復として設計されました。
6. 主な研究成果:
主な研究成果:
本研究では、いくつかの重要な知見が得られました。
- 「SLS vacuum die casts with SLS lost core dip coating(SLS真空ダイカストとSLSロストコアディップコーティングの組み合わせ)」は、「complex silicone parts(複雑なシリコーン部品)」の製造に使用できます。
- 「defined SLS parameters(定義されたSLSパラメータ)」を使用すると、「lost cores and investment castings(ロストコアとインベストメント鋳造)」を「complex geometries(複雑な形状)」を実現するために製造できることが実証されました。
- 「SLS reinforcement structure(SLS補強構造)」をシリコーンに「fully integrate(完全に統合)」することが可能であることが証明されました。
- 「SLS structure(SLS構造)」の統合は、「flexible structure(フレキシブルな構造)」を提供し、同時に「expansion towards the heart(心臓への膨張)」を誘導します。
- 「internal helix reinforcement(内部ヘリックス補強)」を備えた「cup B(カップB)」は、「volumetric displacement on the outside(外側への体積変位)」が最も少なく、「adjacent organs(隣接臓器)」に影響を与えないことが示されました。
- さらに、「this cup(このカップ)」は、「volumetric displacement on the inside of the cup(カップの内側への体積変位)」が最も高く、「efficiently(効率的に)」動作します。
- 円形プロファイルヘリックスを備えたカップBは、心臓への体積変位が最も高く、カップAは体積変位が最も低いことを示しました。
提示されたデータの分析:
- FIGURE 3: 心臓モデルなしの空気圧作動中のカップAおよびカップBの収縮挙動を示しています。カップAは「three folded silicone membrane shape(3つ折りシリコーン膜形状)」を示し、カップBは4つ折り構成を示しています。
- FIGURE 4: カップBバリアントの膨張試験結果を示しています。補強されたカップ(円形および楕円形ヘリックス)は、幅方向の膨張は最小限ですが、高さ方向にはある程度の膨張を示しています。補強なしのカップは、幅方向の膨張が最大で17%にもなり、隣接臓器に影響を与える可能性があります。
- FIGURE 5 & 6: カップBの外側への体積変位と、カップAおよびBの心臓への体積変位をそれぞれ定量化しています。円形ヘリックス補強を備えたカップBは、心臓への体積変位が最も高く、外向きの変位が最も少ないことを示しています。カップAは、全体的に体積変位が最も低いことを示しています。データは、カップBの内部SLS補強がエネルギーを効果的に内向きに誘導し、効率を高めていることを示唆しています。





図の名前リスト:
- FIGURE 1. Schematic of the cup designs A, (left) and B, (right) (カップ設計A(左)およびB(右)の概略図)
- FIGURE 2. Schematic of the manufacturing of a complex silicone structure using SLS lost cores and dip coating process (SLSロストコアとディップコーティングプロセスを用いた複雑なシリコーン構造の製造概略図)
- FIGURE 3. Cup A during contraction without a heart shows a three folded silicone membrane shape (心臓なしで収縮中のカップAは3つ折りシリコーン膜形状を示す)
- FIGURE 4. Expansion test on cup B (カップBの膨張試験)
- FIGURE 5. Volumetric displacement of cup B towards the outside divided into width and height (カップBの外側への体積変位を幅と高さに分割して示す)
- FIGURE 6. Volumetric displacement of cup A and B towards the heart (カップAおよびBの心臓への体積変位)
7. 結論:
主な知見の要約:
本研究では、「SLS vacuum die casts with SLS lost core dip coating(SLS真空ダイカストとSLSロストコアディップコーティング)」の組み合わせが、機械式心臓サポートシステムに不可欠な複雑なシリコーン部品の製造に利用できることを実証しました。この研究では、「defined SLS parameters(定義されたSLSパラメータ)」を使用することで、「lost cores and investment castings(ロストコアとインベストメント鋳造)」を「complex geometries(複雑な形状)」を実現するために「manufactured(製造)」できることを確認しました。さらに、研究では、「SLS reinforcement structure(SLS補強構造)」の「integration into the silicone(シリコーンへの統合)」が成功したことが証明され、構造的な柔軟性を提供しながら、膨張力を効果的に心臓に向けることができました。特に、「internal helix reinforcement(内部ヘリックス補強)」を備えた「cup B(カップB)」は、「volumetric displacement on the outside(外側への体積変位)」が最も「least(少ない)」く、「highest volumetric displacement on the inside of the cup(カップの内側への体積変位)」を示すことが注目され、効率的で標的を絞った心臓サポートを示唆しています。
研究の学術的意義:
本研究は、複雑な患者特異的なシリコーンインプラントを作成するためのアディティブマニュファクチャリング(SLS)と従来の技術(真空ダイカスト、ディップコーティング)の相乗的な応用を実証することにより、医療機器製造の分野に貢献しています。カスタマイズされた心臓サポートデバイスを開発するための実行可能な製造経路を提供し、心不全の治療を前進させる可能性があります。
実際的な意義:
開発された製造プロセスとプロトタイプ設計は、患者個別化された心臓サポートシステムの開発に実際的な意義があります。機能的なシリコーン心臓サポート構造の製造に成功したことは、前臨床in-vitro試験と、小動物モデルでの潜在的なin-vivo評価への道を開き、将来の臨床応用への道を開きます。
研究の限界と今後の研究分野:
本研究では、「in future research the dynamic long time strength of the material and component needs to be tested(今後の研究では、材料とコンポーネントの動的な長期強度を試験する必要がある)」ことを認めています。今後の研究では、シリコーンインプラントの長期耐久性と機械的性能の評価に焦点を当てる必要があります。生体適合性と生物学的環境における機能的有効性を評価するために、in-vitroおよびin-vivo試験が必要です。さらに、「customized cup shapes(カスタマイズされたカップ形状)」の影響のさらなる調査と、これらの心臓サポートシステムの性能と患者特異性を向上させるための補強構造の最適化が求められます。
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- E. T. Roche, M. A. Horvath, and I. Wamala, et al., “Soft robotic sleeve supports heart function," Science
9. 著作権:
- この資料は、「Martin Launhardt, Nina Ebel, Markus Kondruweit, Michael Weyand, Tilmann Volk, Dietmar Drummer」の論文:「Developing a patient individualized flexible silicone implant using SLS and vacuum die casting」に基づいています。
- 論文ソース: https://doi.org/10.1063/1.5084908
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