誘導電動機ローターの銅導体ダイカストのための材料と改良

本紹介論文は、[DIE CASTING ENGINEER]誌に掲載された["Materials & Modifications to Die Cast the Copper Conductors of the Induction Motor Rotor"]論文の研究内容です。

Fig. 1 – Exploded view of typical induction motor. The die cast aluminum end ring with cast fan blades is visible on the rotor. The mulitple conductor bars connecting the end rings are contained within the iron laminations.
Fig. 1 – Exploded view of typical induction motor. The die cast aluminum end ring with cast fan blades is visible on the rotor. The mulitple conductor bars connecting the end rings are contained within the iron laminations.

1. 概要:

  • タイトル: Materials & Modifications to Die Cast the Copper Conductors of the Induction Motor Rotor (誘導電動機ローターの銅導体ダイカストのための材料と改良)
  • 著者: John G. Cowie, Edwin F. Brush, Jr., Dale T. Peters, Stephen P. Midson
  • 出版年: 2001年9月
  • 掲載ジャーナル/学会: DIE CASTING ENGINEER
  • キーワード: (論文には明示的に記載されていませんが、内容に基づくと、関連キーワードは次のようになります: 銅ダイカスト、誘導電動機ローター、金型材料、高温合金、モーター効率、熱疲労)

2. 要旨

材料に関する記事は、一般的にアルミニウム、亜鉛、マグネシウムベースのダイカスト合金に焦点を当てています。このレポートは、比較的融点の高い金属である純銅の圧⼒ダイカストを扱っている点で異なります。⾼融点⾦属および合⾦の場合、⾦型寿命が短いことが、コスト効率の良いダイカスト操業を達成するための制限要因となります。銅含有ローターによる、より効率的な誘導電動機を主な⽬的としたこの研究では、⾦型またはダイ材料の問題に取り組む必要がありました。この研究では、⾦型材料の特性とダイセットの熱環境の改善に関する⼀般化を通じて、コスト効率の良い⾦型寿命を達成しました。ローター構造における鋳造銅の特性と、モーター試験における鋳造銅ローターの性能も報告されています。

3. 研究背景:

研究テーマの背景:

ダイカストは、大量生産に適した低コストの製造プロセスであり、一般的にアルミニウム、亜鉛、マグネシウム合金に使用されます。誘導電動機ローターは、通常、導体棒と短絡リングで構成される「かご形(squirrel cage)」構造で構成されます。従来、アルミニウムは、高い電気伝導性とダイカストの容易さから使用されてきました (図1、2)。

以前の研究状況:

モーターメーカーは、ローターの導体構造においてアルミニウムを銅に置き換えると、モーター効率が大幅に向上することを⾧年認識していました。一部の特殊用途および大型モーターは、製作された銅ローターを使用していますが、これはコストがかかり、時間のかかるプロセスです。国際銅研究協会(International Copper Research Association)の研究によると、タングステンとモリブデンが銅ダイカスト用の潜在的な金型材料として確認されました。

研究の必要性:

1〜125 Hpの範囲のモーター効率を1%向上させると、年間200億kWhrを節約できます。しかし、銅の融点(アルミニウムの場合は660°Cに対し1083°C)が⾼いため、アルミニウムダイカストに使⽤される従来の⼯具鋼⾦型は銅には適していません。ダイカスト銅ローターを経済的に⽣産するには、耐久性があり、コスト効率の良い⾦型材料が必要です。

4. 研究目的と研究課題:

研究目的:

十分な金型寿命を達成するために、適切な金型材料とプロセス修正を特定することに焦点を当て、銅誘導電動機ローター製造のための費用対効果の高いダイカストプロセスを開発すること。

主要な研究:

  • 銅ダイカスト用の候補金型材料の特定と評価。
  • 最適なダイ動作温度と熱管理戦略の決定。
  • ダイカスト銅の品質と特性の評価。
  • モーター試験におけるダイカスト銅ローターの性能評価。

5. 研究方法

この研究は、次のような多角的なアプローチを含んでいます。

  • 協力: モーターメーカー、ダイカスト装置メーカー、研究機関(CDA/ICA、Trex Enterprises)を含む企業コンソーシアム。
  • 資金提供: 国際銅協会(International Copper Association)、空調冷凍技術研究所(Air Conditioning and Refrigeration Technical Institute)、米国エネルギー省(DOE)および産業技術局(OIT)。
  • 材料の選択: 高温強度、熱特性、耐酸化性に基づいて、候補となる金型材料を選択しました。試験された材料は次のとおりです。
    • H-13 工具鋼 (ベースライン)
    • モリブデンベース合金 (TZM)
    • タングステン合金 (Anviloy 1200)
    • ニッケルベース合金 (INCONEL 合金 601, 617, 625, 718 および MA 754)
  • テスト金型設計: モーターローター金型の1つのゲートでの条件をシミュレートするために、テスト金型を設計しました (図3、4)。この金型は、2ポンドの平らな半円形の鋳物を製造しました。
  • 溶解と鋳造: 高純度銅は、750トンの水平リアルタイムコンピュータ制御ダイカスト機を使用して誘導溶解および鋳造されました。
  • 熱モデリング: ダイ設計と材料選択の指針とするために、ダイカスト金型への熱伝達のコンピュータ解析を実施しました。
  • 試験と評価:
    • ダイ材料は、テスト金型で同時に試験されました。
    • ダイ温度は、電気抵抗ヒーターを使用して制御し、熱電対で監視しました。
    • 鋳造銅の品質は、微細構造解析、化学分析、電気伝導度測定によって評価されました。
    • モーター性能は、動力計試験ベンチを使用してモーターメーカーによって評価されました。

6. 主要な研究結果:

主要な研究結果と提示されたデータ分析:

  • H-13 工具鋼: 熱亀裂と割れにより急速に劣化しましたが、使用できなくなる前に750回以上の鋳造を生産しました。
  • TZM および Anviloy: 長時間(900ショット以上)の運転後、最小限の熱亀裂を示しましたが、Anviloy は鋭い半径でわずかな亀裂を示しました。TZM は、酸化により表面劣化を起こしました。
  • ニッケルベース合金: INCONEL 合金 617 および 625 が最も優れた性能を示し、625〜650°C の動作温度で最小限の亀裂を示しました。INCONEL 合金 754 は、延性が低いため早期に亀裂が発生しました。
  • 最適なダイ温度: 熱疲労を最小限に抑えてダイ寿命を延ばすには、ダイを高温(TZM/Anviloy の場合は 550°C 以上、ニッケルベース合金の場合は 625°C)で動作させることが重要でした。
  • 鋳造銅の品質: ダイカスト銅は、最小限の気孔率と高い電気伝導率(平均 98% IACS 以上)を備えた健全な微細構造を示しました。
  • ローターダイカスト試験: 修正されたプロセスを使用して、銅モーターローターが正常にダイカストされました。機械パラメータは、ローターの品質に驚くほど小さな影響しか及ぼさないことがわかりました。
  • モーター性能: 銅ローターは、アルミニウムローターと比較してモーター効率が大幅に向上しました。全体的なモーター損失は 14〜23% 減少し、ローター損失は約 40% 減少しました。
Fig. 2 – The aluminum “squirrel cage” of a small motor rotor.
The iron laminations have been removed by dissolution in
nitric acid.
Fig. 2 – The aluminum “squirrel cage” of a small motor rotor. The iron laminations have been removed by dissolution in nitric acid.
Table 1 – Nominal compositions of candidate mold alloys (wt%).
Table 1 – Nominal compositions of candidate mold alloys (wt%).
Fig. 3 – Test casting used to evaluate and compare candidate mold materials. A two pound copper biscuit is above the gate area and runner bar.
Fig. 3 – Test casting used to evaluate and compare candidate mold materials. A two pound copper biscuit is above the gate area and runner bar.
Fig. 6 – Top: Moving half TZM and Anviloy die inserts after
940 shots. TZM is in the bottom (left) position and Anviloy in
the middle and upper positions. Electrical resistance heaters
and thermocouple leads are visible on the lower edge of the
mounting plate. Bottom: Close-up of Anviloy die inserts after
500 shoots.
Fig. 6 – Top: Moving half TZM and Anviloy die inserts after 940 shots. TZM is in the bottom (left) position and Anviloy in the middle and upper positions. Electrical resistance heaters and thermocouple leads are visible on the lower edge of the mounting plate. Bottom: Close-up of Anviloy die inserts after 500 shoots.
Fig. 9 – Cross-section of rotor showing copper filling the slot openings by the pressure.
Fig. 9 – Cross-section of rotor showing copper filling the slot openings by the pressure.

図表名リスト:

  • Fig. I - 典型的な誘導電動機の分解図。
  • Fig. 2 - 小型モーターローターのアルミニウム製「かご形(squirrel cage)」。
  • Fig. 3 - 候補となる金型材料を評価および比較するために使用されたテスト鋳造。
  • Fig. 4 - テスト鋳造用のダイインサートの詳細。
  • Fig. 5 - H-13 工具鋼ダイセットで製造された鋳造品のゲート領域から採取したダイカスト銅試験片の微細構造。
  • Fig. 6 - 上: 940 ショット後の移動側 TZM および Anviloy ダイインサート。
  • Fig. 7 - 750 トン機械の中央プラテン部分から排出されようとしているダイカスト銅ローター。
  • Fig. 8 - 閉じた位置にあるローター鋳造用ツーリングを備えた水平型高圧ダイカストマシン。
  • Fig. 9 - 圧力によってスロット開口部を埋める銅を示すローターの断面。

7. 結論:

主要な調査結果の要約:

  • 600〜650°C で動作する INCONEL 合金 601、617、および 625 は、銅モーターローターのダイカスト用の有望な金型材料です。
  • 熱疲労を低減してダイ寿命を延ばすには、高温でダイを動作させることが不可欠です。
  • ダイカスト銅ローターは、高純度と導電率で製造できます。
  • 銅ローターのダイカストプロセスは堅牢であり、広範囲の機械パラメータが許容されます。
  • 銅ローターは、アルミニウムローターと比較してモーター効率を大幅に向上させます。

{研究結果の要約。研究の学術的意義、研究の実用的な意味}
この研究は、銅誘導電動機ローターのダイカストの実現可能性を示しており、モーター効率を大幅に向上させる道を提供します。適切な金型材料とプロセスパラメータの特定は、この技術の商業的実現可能性にとって非常に重要です。実際的な意味としては、電気モーターの大幅な省エネと運用コストの削減が含まれます。

8. 参考文献:

  • [参考文献]
    (提供されたドキュメントには、専用の参考文献セクションが含まれていません。参考文献は、国際銅協会(International Copper Research Association)、米国エネルギー省(U.S. Department of Energy)、IEC 34-2 および IEEE Std. I12 Method B などの特定の出版物など、テキスト内で暗示されています。)

9. 著作権:

  • 本資料は、"John G. Cowie, Edwin F. Brush, Jr., Dale T. Peters, Stephen P. Midson"による["Materials & Modifications to Die Cast the Copper Conductors of the Induction Motor Rotor"]論文に基づいています。
  • 論文出典: www.diecasting.org/dce (DOI URL は提供されておらず、ウェブサイトのみ)

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