本紹介資料は、SEI TECHNICAL REVIEWに掲載された「Features and Vehicle Application of Heat Resistant Die Cast Magnesium Alloy」論文の研究内容です。

1. 概要:
- タイトル: 耐熱ダイカストマグネシウム合金の特徴と自動車への応用
- 著者: Manabu MIZUTANI, Katsuhito YOSHIDA, Nozomu KAWABE, Seiji SAIKAWA
- 発行年: 2019年
- 発行ジャーナル/学会: SEI TECHNICAL REVIEW
- キーワード: クリープ抵抗、耐熱性、マグネシウム合金、ダイカスト、軽量化
2. 要旨 / 序論
マグネシウム(Mg)合金は、軽量化用途、特に自動車のパワートレインへの使用に適しています。しかし、AZ91やAM60などの一般的に使用される合金は、高温(150℃)でのクリープ抵抗が低いという問題があります。本論文では、従来の耐熱Mg合金の鋳造性やリサイクル性の低さなどの限界を克服した、新開発の高温クリープ抵抗Mg合金(AJX931)を紹介します。
3. 研究背景:
研究テーマの背景:
マグネシウムは最も軽い構造用金属であり、自動車部品の軽量化に魅力的な材料です。
既存研究の状況:
AZ91D, AM60, AM50などの既存合金には限界があります。
- AZ91およびAM60は、120℃以上の温度でβ相析出物(Mg17Al12)が弱くなるため、150℃でクリープ抵抗が低下します。
- 従来の耐熱合金は、Al含有量を減らし、Si, RE, Ca, Srなどの元素を添加することで高温特性を向上させています。しかし、これらの添加は、しばしば鋳造性やリサイクル性を損ないます。
研究の必要性:
軽量化、耐熱性が重要な自動車パワートレイン部品に使用するため、高温クリープ抵抗と優れた鋳造性およびリサイクル性を兼ね備えたMg合金が求められています。
4. 研究目的と研究課題:
研究目的:
従来の耐熱マグネシウム合金に関連する問題、特に鋳造性およびリサイクル性に関する問題を克服する耐熱マグネシウム合金を開発すること。
主要な研究:
- 優れた鋳造性、耐食性、リサイクル性を維持しながら、β相析出を最小限に抑える合金組成を設計する方法。
- 新開発合金の機械的特性、微細構造、耐熱性、耐食性を評価する。
- 新開発合金と既存合金との比較
5. 研究方法
研究デザイン:
実験的合金設計と比較分析。
データ収集方法:
- 650tコールドチャンバーダイカスト機を用いたサンプルダイカスト。
- 微細構造解析のための走査型電子顕微鏡(SEM)および電界放出型SEM(FE-SEM)。
- 元素分析のためのエネルギー分散型X線分光法(EDX)。
- 相識別のためのX線回折(XRD)。
- 機械的特性評価のための引張試験。
- クリープ抵抗評価のための150℃でのボルト荷重保持(BLR)試験。
- 耐食性評価のための塩水噴霧試験(JIS Z 2371)。
- 再溶解と不純物分析によるリサイクル性評価。
- 鋳造割れ評価。
分析方法:
- 微細構造的特徴の定量分析。
- 新合金(AJX931)と既存合金(AS31, AE44, MRI153M, AZ91)との機械的特性、BLR、耐食性の比較。
- 鋳造割れ傾向の評価。
- リサイクル中の介在物分析。
研究対象と範囲:
本研究は、耐熱性、鋳造性、リサイクル性を最適化するように設計された組成を有する新しいMg合金(AJX931)の開発と特性評価に焦点を当てました。範囲には、AJX931と市販の耐熱Mg合金との比較が含まれていました。
6. 主な研究結果:
主要な研究結果:
- 公称組成が約Mg-9Al-1Ca-3SrであるAJX931が開発されました。
- AJX931は、AZ91と比較して大幅に改善されたボルト荷重保持(BLR)を示し、AS31およびMRI153Mと同等またはそれ以上のBLRを示します。
- AJX931は、AS31およびMRI153Mよりも割れ形成が少なく、優れた鋳造性を示します。
- AJX931は、AS31およびAE44と比較して、優れた0.2%耐力(156 MPa)を示します。
- AJX931は、塩水噴霧試験において良好な耐食性を示します。
- AJX931は、AE44のようなRE含有合金と比較して、リサイクルが容易になる可能性を示しています。
提示されたデータの分析:
- 表1: Mg合金の特性に対する様々な合金元素の影響をまとめています。
- 表2: 評価された合金(AJX931, AS31, AE44, MRI153M)の化学組成を示しています。
- 図2: AJX931の微細構造を示し、α-Mg初晶、析出物、共晶組織を示しています。
- 図3: FE-SEMおよびEDX分析を示し、Al2Sr, Al4Sr, およびC15-Al2CaまたはC36-(Mg, Al)2Ca化合物を同定しています。
- 図4: XRDの結果を示し、Al-SrおよびAl-Ca化合物の存在とβ相の不在を確認しています。
- 図6: AJX931のBLRを従来の耐熱合金と比較し、その優れた性能を示しています。
- 図7: 鋳造性の評価結果を示し、AS31およびMRI153Mと比較してAJX931の割れ形成が少ないことを示しています。
- 図10: 0.2%耐力を比較し、AJX931の優れた強度を強調しています。













図表リスト:
- 図1. ダイカストサンプル形状
- 図2. AJX931ダイカストの微細構造
- 図3. AJX931ダイカストのFE-SEMによるEDX分析
- 図4. AJX931ダイカストのXRD測定
- 図5. 残留軸力の測定方法
- 図6. 従来の耐熱合金と新開発合金のBLR
- 図7. ダイカストの鋳造性評価(鋳造割れ)
- 図8. ダイカスト合金の微細構造
- 図9. 引張試験片の切り出し領域と形状
- 図10. 従来の耐熱合金と新開発合金の0.2%耐力比較
- 図11. 200時間塩水噴霧試験に供した試験片の外観
- 図12. 介在物量の評価結果
- 図13. 溶融金属から鋳造したインゴットの外観
7. 結論:
主要な結果の要約:
新開発のAJX931合金は、従来の耐熱Mg合金と比較して、耐熱性、鋳造性、機械的強度、耐食性、リサイクル性の優れた組み合わせを示しています。
研究の学術的意義:
本研究は、耐熱Mg合金の新しい合金設計アプローチを示しており、鋳造性とリサイクル性を向上させるために比較的高いAl含有量を維持しながら、SrとCaの制御された添加によりβ相析出を最小限に抑えています。
実用的な意味:
AJX931は、自動車パワートレイン部品の軽量化用途に有望な候補であり、軽量化と高温での性能向上の可能性を提供します。
研究の限界と今後の研究分野:
本論文では、AJX931の溶解中のドロス形成はさらなる調査が必要であるが、AE44よりも取り扱いが容易であると述べています。今後の研究では、輸送車両部品におけるAJX931の実用化を目指し、その応用を検討していく予定です。
8. 参考文献:
- (1) S. Kamado, Y. Kojima, Materia Japan, 38 (1999) 4
- (2) S. Saikawa, Journal of Japan Institute of Light Metals, 60 (2010) 11
- (3) S. Takeda, Materia Japan, 53 (2014) 12
- (4) I. Nakatsugawa, Materia Japan, 38 (1999) 4
- (5) H. Kawabata, N. Nishino, T. Aikawa, K. Otake, Y. Genma, Journal of Japan, 60 (2010) 11
- (6) The Japan Magnesium Association web site (2013)
9. 著作権:
- 本資料は、「Features and Vehicle Application of Heat Resistant Die Cast Magnesium Alloy」に基づくMIZUTANI氏の論文です。
- 論文出典:テキストには提供されていません。(提供されたOCRテキストにDOIは含まれていません。)
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