この紹介論文は、Pergamonが発行した「ダイカストAZ91Dのミクロ組織が腐食に及ぼす影響」という論文の研究内容です。

1. 概要:
- タイトル: ダイカストAZ91Dのミクロ組織が腐食に及ぼす影響 (Influence of microstructure on the corrosion of diecast AZ91D)
- 著者: Guangling Song, Andrej Atrens, Matthew Dargusch
- 出版年: 1999年
- 掲載ジャーナル/学会: Corrosion Science
- キーワード: マグネシウム合金; AZ91D; ダイカスト; 腐食; ミクロ組織
2. 概要 (Abstract)
ダイカストAZ91Dの腐食をミクロ組織と関連付けて研究しました。ダイカストAZ91Dの挙動をより完全に理解し、比較するために、徐冷凝固させた高純度AZ91、Mg-2%Al、Mg-9%Al、低純度マグネシウム、高純度マグネシウムを用いて腐食研究とミクロ組織検査を実施しました。腐食は、1N NaCl、pH 11の条件下で、(1)腐食形態の観察、(2)電気化学的分極曲線の測定、(3)水素発生速度とマグネシウム溶解速度の同時測定によって研究されました。ダイカストAZ91Dの表層(スキン)は、内部よりも優れた耐食性を示しました。これは、(1)β相の体積分率が高いこと、(2)より微細なα粒子周囲でのより連続的なβ相分布、(3)ダイカスト内部よりも表層の気孔率が低いこと、の組み合わせに起因します。この研究は、合金のミクロ組織に対する鋳造方法の影響を通じて、鋳造方法が腐食性能に影響を与えうることを示しました。© 1999 Elsevier Science Ltd. All rights reserved.
3. 研究背景:
研究テーマの背景:
鋳造、特にダイカストは、マグネシウム合金部品を製造する一般的な方法です。マグネシウム合金ダイカストは、非耐荷重用途や自動車の構造部品に使用されています。AZ91合金は広く使用されているマグネシウム鋳造合金であり、高純度グレードは耐食性に優れています。
先行研究の現状:
AZ91は、α粒子とα粒子境界に沿ったβ相(Mg17Al12)からなる2相ミクロ組織[1]を持っています。詳細なミクロ組織は、鋳造方法と熱処理によって決定され、鋳造の種類や領域によって異なります。構成相の化学組成と分布が腐食挙動の主な原因であると考えられていますが、詳細には研究されていません。
研究の必要性:
ダイカストAZ91の腐食挙動の原因を調査することが重要であり、構成相の化学組成と分布が腐食挙動に及ぼす影響に関する詳細な研究が不足しています。
4. 研究目的と研究課題:
研究目的:
AZ91ダイカストのミクロ組織が腐食性能に及ぼす影響を明らかにすることです。
主要な研究:
ダイカストAZ91Dのミクロ組織と腐食挙動の関係を、徐冷凝固させた高純度AZ91およびその他のMg-Al合金と比較して調査します。
5. 研究方法
- 研究デザイン: 比較実験研究。
- データ収集方法:
- XRD、SEM、光学顕微鏡を用いたミクロ組織検査。
- 1N NaCl、pH 11の条件下での腐食研究:
- 腐食形態の観察。
- 電気化学的分極曲線の測定。
- 気体収集および誘導結合プラズマ発光分光分析(ICPAES)を用いた水素発生速度とマグネシウム溶解速度の同時測定。
- 分析方法:
- 異なるサンプルと領域間の腐食形態と速度の比較。
- 分極曲線の分析。
- ミクロ組織の特徴(結晶粒径、β相分布、気孔率)と腐食挙動の相関分析。
- 研究材料:
- ダイカストAZ91D、徐冷凝固させた高純度AZ91(H.P.AZ91)、Mg-2%Al、Mg-9%Al、低純度マグネシウム、高純度マグネシウム。
- 異なる表面方向を持つサンプルを準備(AZ91DS: 断面; AZ91DL: 平坦な表面)。(Fig. 1)
- 化学組成はICPAESで決定 (Table 1)。
6. 主要な研究結果:
主要な研究結果と提示されたデータ分析:
- ダイカストAZ91Dの表層は、内部よりも優れた耐食性を示しました。
- 腐食速度(水素発生とMg溶解)は、印加電流密度によって変化しました (Fig. 10, Fig. 11)。
- 分極曲線は、アルミニウム含有量と純度が異なる合金間の違いを示しました (Fig. 12)。
- 負性差効果(NDE)が観察され、腐食抵抗と相関していました。

perpendicular to the tensile direction of the tensile sample[ "B# AZ80DS\ edge area[ The surface is
perpendicular to the tensile direction of the tensile sample[ "C# AZ80DL\ central area[ The surface is
parallel to the tensile direction of the tensile sample.



図表名リスト:
- Fig. 1. 引張試験片から採取したAZ91DLおよびAZ91DSサンプルの位置を示す概略図。
- Fig. 2. エッチング前のダイカストAZ91Dの光学顕微鏡写真。
- Fig. 3. ダイカストAZ91D合金の異なる部分をエッチングした後の光学ミクロ組織。
- Fig. 4. ダイカストAZ91D合金の光学ミクロ組織。
- Fig. 5. ダイカストAZ91Dの後方散乱SEM像。
- Fig. 6. H.P.AZ91の後方散乱SEM像。
- Fig. 7. pH 11の1N NaCl中におけるH.P.AZ91の代表的な位置A、B、C、Dでのミクロ腐食形態。
- Fig. 8. pH 11の1N NaCl中におけるAZ91Dの代表的な位置A、B、C、Dでのミクロ腐食形態。
- Fig. 9. 1N NaCl(pH=11)に数分間半分浸漬した後のダイカストAZ91DSの2つの異なる腐食形態の代表的な顕微鏡写真。
- Fig. 10. さまざまな印加電流密度におけるマグネシウム合金の水素発生速度。
- Fig. 11. さまざまな印加電流密度におけるマグネシウム合金の金属溶解速度。
- Fig. 12. 1N NaCl(pH = 11)中におけるマグネシウム合金の分極曲線。
- Fig. 13. ほぼ連続的なβ相が表層上にある合金の腐食中の表面組成変化を示す概略図。
- Fig. 14. β相と一次または共晶αとの間のガルバニック効果によって引き起こされる腐食を示す概略図。
7. 結論:
主要な結果の要約:
- ダイカストAZ91Dの腐食挙動は、組成、気孔率、結晶粒径、β相分布を含むミクロ組織によって決まります。
- 急速な凝固は、より小さな結晶粒径、より多くのβ相、より微細に分散したβ相をもたらします。
- 鋳造方法は、ミクロ組織の制御を通じて腐食性能に大きな影響を与え、より高い凝固速度が潜在的な利点をもたらします。
- ダイカストAZ91Dの表層は、β相分率が高く、β相がより連続的で、α粒子がより微細で、気孔率が低いため、内部よりもはるかに優れた(ほぼ10倍)耐食性を示します。
- β相は、ミクロ組織に応じて、バリアまたはガルバニックカソードとして機能することができます。
- α相の腐食挙動は、アルミニウム含有量と局所電流密度に依存します。
- ダイカストAZ91Dは、負性差効果(NDE)を示しました。
- 陽極分極曲線はターフェル挙動を示しませんでしたが、陰極分極曲線はターフェル挙動を示しました。
ダイカストAZ91D合金のミクロ組織は凝固速度に大きく影響され、それが耐食性に影響を与えます。
この研究は、ダイカストAZ91Dにおけるミクロ組織と腐食の関係についての詳細な理解を提供し、凝固制御の重要性を強調しています。
この研究結果は、ダイカストの元の表面はより保護的であるため、機械加工すべきではないことを示唆しています。
8. 参考文献:
- [1] C. Suman, The effects of direct aging on mechanical properties and corrosion resistance of diecast magnesium alloys AZ91D and AM60B, SAE Transactions 99 (5) (1990) 849.
- [2] W.P. Sequeira, G.L. Dunlop, M.T. Murray, Effect of section thickness and microstructure on the mechanical properties of high pressure die cast magnesium alloy AZ91D, in: G.W. Lorimer (Ed.), Proceedings of the Third International Magnesium Conference, The Institute of Materials, Manchester, UK, 1996, p. 63.
- [3] G.L. Maker, J. Kruger, International Materials Reviews 38 (3) (1993) 138.
- [4] J.D. Ganawalt, C.E. Nelson, J.A. Peloubet, Corrosion studies of magnesium and its alloys, Trans. Am. Inst. Mining Met. Eng. 147 (1942) 273.
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- [13] G. Song, A. Atrens, D. St John, X. Wu, J. Nairn, Anodic dissolution of magnesium in chloride and sulphate solutions, Corrosion Science 39 (10–11) (1997) 1981.
- [14] G. Song, A. Atrens, D. St John, J. Nairn, Y. Li, Corrosion Science 39 (5) (1997) 855.
- [15] J. Campbell, Castings, Butterworth Heinemann, 1991.
9. 著作権:
- この資料は、「Guangling Song, Andrej Atrens, Matthew Dargusch」による論文「ダイカストAZ91Dのミクロ組織が腐食に及ぼす影響」に基づいています。
- 論文出典: DOI: 10.1016/S0010-938X(98)00121-8
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