本紹介資料は、ASNE が発行した「Copper in the Rotor for Lighter, Longer Lasting Motors」という論文に基づいています。


1. 概要:
- タイトル: Copper in the Rotor for Lighter, Longer Lasting Motors (より軽量で長寿命なモーターのための回転子内銅)
- 著者: C. Stark, J. G. Cowie, D. T. Peters, and E. F. Brush, Jr.
- 出版年: 2005
- 出版ジャーナル/学会: ASNE SAN DIEGO SECTION, FLEET MAINTENANCE SYMPOSIUM 2005
- キーワード: (論文にはキーワードが明示的にリストされていませんが、内容に基づくと、関連キーワードは次のようになります: 銅回転子、ダイカスト、モーター効率、モーター重量、金型寿命、ニッケル基合金、熱疲労、ヒートチェック)
2. 要約:
本論文は、モーター回転子においてアルミニウムの代わりにダイカスト銅を使用することの利点をレビューします。このモーター技術の進歩は、モーター業界で長年求められてきましたが、銅の高い融点による金型寿命の短さのために、圧⼒ダイカストによる製造の試みは失敗に終わっていました。製造上の問題を解決するために開発されたニッケル基合金高温金型技術について簡単にレビューします。本プログラム以前に行われた開発作業と、その作業から派生した商用モーターは、回転子に導電率の高い銅を使用することで達成できる電気エネルギー効率の向上に焦点を当てていました。代表的な産業用モーターの性能特性を示します。回転子内の銅に対応するために、突入電流と始動トルクを制御するための導体バー形状の変更について説明します。モーターメーカーのモデリングによると、回転子に銅を使用すると、同じ効率でアルミニウム回転子モーターよりも軽量なモーターを構築できます。15 Hp (11 kW) モーターについて計算された重量削減の例を示します。ここに示されているデータは、銅回転子を備えたモーターがより低温で動作することを示しています。業界の経験によると、低温動作はメンテナンスコストの削減、信頼性の向上、モーター寿命の延長につながります。
3. 研究概要:
研究テーマの背景:
国防コミュニティは、より軽量、低コスト、環境に優しく、信頼性の高い材料を必要としています。C-BCT (Copper-Based Casting Technology) プログラムは、防衛システムにおけるより軽量で効率的なコンポーネントのための銅基合金アプリケーションの開発を目的としており、特に電気モーター用のダイカスト銅回転子に焦点を当てています。
以前の研究の状況:
以前の研究では、銅回転子の利点 (高効率、低動作温度) が確認されていましたが、銅の融点が高いため金型寿命が短く、製造が困難でした。以前の研究は主に効率の向上に焦点を当てていました。
研究目的:
この研究は、アルミニウム製の対応製品と比較して、電気エネルギー効率の向上または大幅な重量上の利点を備えたダイカスト銅回転子モーターを設計、製造、およびテストすることを目的としています。また、金型寿命の問題にも対処します。
コア研究:
コア研究は 2 つの段階で構成されます。(1) 高温金型材料と最適な動作条件を調査することにより、銅圧⼒ダイカストにおける金型寿命の問題に対処すること、(2) ダイカスト銅回転子を備えたモーターの性能をアルミニウム回転子モーターと比較評価すること。
4. 研究方法論
研究デザイン:
この研究には、材料科学的調査 (金型材料)、熱モデリング、および実験的テスト (モーターの動力計テスト) の組み合わせが含まれていました。
データ収集と分析方法:
- 金型材料研究: 候補となる高温金型材料の調査、金型熱プロファイルの 3D 熱モデリング、溶融銅を用いた金型材料の実験的テスト。
- モーター性能テスト: ダイカスト銅回転子を備えたモーターに対して動力計効率テスト (IEEE 仕様 112、テスト方法 B、および IEC 34-2 テスト方法) を実施し、アルミニウム回転子モーターと比較しました。損失分離分析が実行されました。
研究テーマと範囲:
この研究は、銅ダイカスト用金型材料、金型加熱技術、モーター性能テスト (効率、トルク、温度上昇、すべり、力率)、および銅回転子用のモーター設計最適化を対象としていました。範囲には、60 Hz および 400 Hz モーターが含まれていました。
5. 主要な結果:
主要な結果:
- 金型材料: 高温 (600-650°C) で動作するニッケル基合金 (INCONEL 合金 617、625、および Haynes 合金 230) は、銅ダイカストにおける金型寿命の延長に有望であることを示しました。実用的な金型加熱および絶縁設計が開発されました。
- モーター性能 (15 Hp モーター): 銅回転子は、回転子抵抗損失 (I²R) の 40% 削減、総損失の 14% 削減、効率の 1.2% ポイントの向上、および温度上昇の約 5°C の低下を示しました。
- モーター性能(SEW Eurodrive): 銅回転子モーターは、アルミニウムの外部モーター寸法基準を維持しながら、より高い効率を持っています。
- モーターの重量とコスト: モデリングの結果、フレームサイズの縮小が可能な場合、銅回転子モーターは、同じ効率でアルミニウム回転子モーターよりも軽量 (18-20%) かつ安価 (14-18%) に製造できることが示されました。



Standard efficiency Al motor (blue); Cu high effficiency motor (red).

図表リスト:
- 図 1. 金型材料試験における電気抵抗ヒーターと断熱材の配置の概略図であり、現在モーターメーカーによって商業的に採用されています。
- 図 2. 4 つの SEW モーターの 60 Hz での損失分布、アルミニウム回転子の低効率標準ラインと比較した銅回転子バージョン。
- 図 3. 4 つの SEW モーターサイズの単位入力電力あたりの漂遊負荷損失。
- 図 4. 60 Hz での出力電力に対する効率の依存性。
- 図 5. 1.1kW モーター (左) および 5.5kW モーター (右) のトルク-速度および電流-速度曲線。標準効率 Al モーター (青); Cu 高効率モーター (赤)。
- 図 6. アルミニウム導体バー (左) と銅バー (右)。
6. 結論:
主要な結果の要約:
ダイカスト銅回転子は、モーター効率を大幅に向上させ、動作温度を低下させ、モーター寿命を延ばす可能性があります。加熱されたニッケル基合金金型システムは、金型寿命を大幅に向上させます。銅回転子モーターは、同等のアルミニウム回転子モーターよりも軽量で安価に製造できます。
研究の限界:
15 Hp モーターのテストでは、銅用に最適化されていない、アルミニウム用に設計された積層が使用されました。15 Hp モーターのテストではトルクが低下したため、さらなる設計調整が必要でした。生産実行における長期的な金型寿命は、さらなる検証が必要です。
7. 今後のフォローアップ研究:
フォローアップ研究の方向性:
- トルク特性を改善するための銅用回転子スロット設計のさらなる最適化。
- 金型寿命を検証するための長期生産実行。
- より広範囲のモーターサイズおよびタイプにおける銅回転子の適用の調査。
さらなる探求分野:
- 動作温度の低下によるモーター寿命の正確な増加の定量化。
- 最適化されたモーター設計によるさらなる重量とコスト削減の可能性の探求。
8. 参考文献:
- Brush, E.F., jr., D.T. Peters, J.G. Cowie, M. Doppelbauer, and R. Kimmich, “Recent Advances in Development of the Die-cast Copper Rotor Motor,” Proceedings of the International Conference on Electric Machines, Crakow, Poland, 2004.
- Cowie, J.G., D.T. Peters and D.T. Brender, “Die-cast Copper rotors for Improved Motor Performance," IEEE Pulp and Paper Conference. Charleston, SC, 2003.
- Kirtley, J.L., Jr., “Designing Squirrel Cage Rotor Slots with High Conductivity,” Proceedings of the International Conference on Electric Machines, Crakow, Poland, 2004.
- Peters, D.T, J.G. Cowie, E.F. Brush, Jr. and S.P. Midson, “Advances in Pressure Die Casting of Electrical Grade Copper," Amer. Foundry Society Congress Paper No. 02-002, Kansas City, Mo., 2002.
- Peters, D.T., J.G. Cowie, E.F. Brush, Jr. and S.P. Midson, "Use of High Temperature Die Materials and Hot Dies for High Pressure Die Casting Pure Copper and Copper Alloys," Trans. of the North Amer. Die Casting Assoc. Die Casting Congress, Rosemont, II. 2002.
9. 著作権:
- 本資料は、「C. Stark, J. G. Cowie, D. T. Peters, and E. F. Brush, Jr.」による論文です。「Copper in the Rotor for Lighter, Longer Lasting Motors」に基づいています。
- 論文の出典: [提供されたテキストには DOI URL は含まれていません]
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