この紹介論文は、「Defence Science and Technology Group」によって発行された「A High Performance Active Antenna for the High Frequency Band」を基に作成されています。

1. 概要:
- タイトル:A High Performance Active Antenna for the High Frequency Band
- 著者:Wayne Martinsen
- 発行年:2018年8月
- ジャーナル/学会:Defence Science and Technology Group
- キーワード:アンテナ設計、高周波、歪み、雷
2. 抄録:
本論文では、低周波(LF)から高周波(HF)まで動作するアクティブアンテナの設計を提示し、相互変調歪みの主な原因を特定し、その発生を最小限に抑えるための推奨事項を提供します。アンテナ内部のノイズ源とその総出力ノイズへの影響を詳細に分析し、雷保護についても議論します。この設計は、垂直Eフィールド強度の測定、一般的な監視、HF信号の地理的位置特定に適した小型のモジュラー型受信専用アンテナです。
3. 序論:
論文「A High Performance Active Antenna for the High Frequency Band」は、全方向監視、HFサイトノイズ測定、方向探知アレイに使用される広帯域垂直モノポールアンテナの設計を扱います。これらのアンテナは通常、DC抵抗が低いためノイズが少ないですが、アクティブアンテナは特にAM放送局からの強いRF信号による相互変調歪みに影響を受けやすいです。本研究は、歪みとノイズを最小限に抑え、効果的な雷保護を確保することでアンテナ性能を最適化することを目指します。
4. 研究の要約:
研究トピックの背景:
アクティブアンテナは広帯域をカバーできるためHFアプリケーションで重要ですが、強い信号による相互変調歪みや内部ノイズにより感度が制限されることがあります。アンテナゲイン、電子ゲイン、ノイズ性能のバランスが求められ、特に高いRF干渉環境では重要です。雷保護は、LFからHF帯で誘導される電圧からアンテナを保護するために不可欠です。
従来の研究の状況:
従来の設計では、U310 JFETがアクティブアンテナの性能により頻繁に使用されており、「Low-Noise JFETs-Superior Performance to Bipolars」[Ref. 1]で言及されています。文献では、高出力AM放送局からの相互変調歪みの課題や低ノイズ部品の必要性が強調されており、「Designing with Field-Effect Transistors」[Ref. 2]で議論されています。しかし、ノイズと歪みの両方を最適化し、強力な雷保護を統合した研究は限られています。
研究の目的:
本研究は、相互変調歪みを最小化し、内部ノイズを低減し、効果的な雷保護を備えた高性能HFアクティブアンテナを設計することを目指します。Eフィールド測定や信号の地理的位置特定のための小型でモジュラー型のソリューションを提供し、信号反射を軽減しシステム性能を向上させるために広帯域50オーム出力インピーダンスを優先します。
研究の核心:
本研究は、受信専用アクティブアンテナの設計に焦点を当て、U310 JFETを使用した入力段、出力バッファ段、雷保護メカニズムを詳細に説明します。JFETのトランスコンダクタンス変動による相互変調歪みの原因を分析し、歪み製品を低減する方法を提案します。ノイズ源を定量化し、さまざまな環境で性能を最適化するための設置推奨事項を提供します。
5. 研究方法論
研究デザイン:
本研究は、アンテナロッドから出力バッファ段までアクティブアンテナを体系的に設計・テストするアプローチを採用しました。歪みを最小限に抑えるためにコモンドレインJFET構成を使用し、広帯域50オームインピーダンスのためにプッシュプル出力バッファを組み込みます。外部電磁界を遮断するためにスクリーンルームでテストし、実環境での検証のためにアンテナテストサイトで評価しました。
データ収集および分析方法:
周波数応答、出力インターセプトポイント、アンテナファクター、ノイズフィギュアを測定してデータを収集し、Figure 4.1(a)および(b)に示された設定を使用しました。ノイズおよび歪み製品は、+30 dBテスト増幅器を使用したスペクトラムアナライザで測定され、Figure 3.9およびFigure 4.3に示されています。ノイズ(方程式3.5、3.19、3.20)およびアンテナファクター(方程式4.2)の計算は、EXCELスプレッドシートで分析されました。
研究トピックと範囲:
本研究は、LFからHF周波数帯(10 kHz〜100 MHz)を対象とし、アンテナ設計、相互変調歪み、ノイズ分析、雷保護に焦点を当てます。U310 JFETの性能、出力バッファ設計、不要な共振を抑制するための設置方法を扱います。Eフィールド測定、監視、HF信号の地理的位置特定の応用分野を含みます。
6. 主な結果:
主な結果:
- アンテナはHF帯で-6.4 dBの順方向ゲインを達成し、Figure 4.2に示されています。アンテナファクターは12.8 dBで測定されました(Figure 4.8)。
- 3次および2次出力インターセプトポイント(OPIp3およびOPIp2)はそれぞれ+39.6 dBmおよび+79.5 dBmで測定されました(Figures 4.6、4.7)。
- 計算された超過ノイズは15.5 MHzで6.01 dBであり(Figure 3.11)、測定された6.5 dBとほぼ一致します(Figure 3.10)。
- 3 kHz帯域幅に対するアンテナのノイズフィギュアとスプリアスフリーダイナミックレンジ(SFDR)は、商用HFレシーバーと競争力のある性能を示します(Figure 4.10)。
- 雷保護は、シルバーマイカコンデンサとガス放電管を使用して、誘導電圧に対する堅牢性を確保します(Section 2.2.7)。
- RF電流チョークを含む設置推奨事項は、6.5 MHz以下の不要な電流を抑制します(Figures 2.27、2.28)。
図の名称リスト:


- Figure 2.3: U310 JFETのI_Dに対するトランスコンダクタンスの変動
- Figure 2.4: JFET測定のためのテスト設定と等価モデル
- Figure 2.5: 2つの負荷抵抗による電圧ゲインの変動
- Figure 2.6: g_ds範囲におけるr_ds抵抗の変動
- Figure 2.8: アクティブアンテナの入力回路
- Figure 2.9: 出力バッファ回路
- Figure 2.10: 出力端子での測定されたリターンロス
- Figure 2.11: 出力バッファ回路のテスト設定
- Figure 2.12: 出力バッファ回路の周波数応答
- Figure 2.13: RGS EK890レシーバの測定された入力インピーダンス
- Figure 2.14: 1.8オームインピーダンスの出力バッファ回路
- Figure 2.15: 50オームレシーバ入力での位相およびマグニチュード応答
- Figure 2.16: 21オームレシーバ入力での位相およびマグニチュード応答
- Figure 2.17: 50オーム出力バッファでの位相およびマグニチュード応答
- Figure 2.18: アクティブアンテナの最終回路
- Figure 2.19: アクティブアンテナのポイントツーポイント配線
- Figure 2.20: 埋め込み型BNCコネクタを示すビュー
- Figure 2.21: ロッド付きで組み立てられたアンテナ
- Figure 2.22: 特定のマスト高さのための推奨設置
- Figure 2.23: 推奨されるグラウンドラジアルの長さ
- Figure 2.24: アクティブアンテナのための推奨設置
- Figure 2.25: 電流チョークの構造詳細
- Figure 2.26: 小型金属ボックスに収納されたRF電流チョーク
- Figure 2.27: RF電流チョークなしのアクティブアンテナ応答
- Figure 2.28: 同軸電流チョーク付きのアクティブアンテナ応答
- Figure 2.29: 10 kHzから6 MHzまでのアクティブアンテナ応答
- Figure 2.30: 38 MHzでの最大応答
- Figure 3.1: アクティブアンテナの3つのノイズ源
- Figure 3.2: 7 uHインダクタ付き入力回路
- Figure 3.3: 簡略化された入力回路とコルピッツ発振器
- Figure 3.4: 12.26 MHzでのアンテナノイズフロアの測定ピーク
- Figure 3.6: 簡略化されたバッファ増幅器出力回路
- Figure 3.7: バッファの有効入力抵抗によって生成されるノイズ
- Figure 3.8: バッファ入力に現れるFETによって生成されるノイズ
- Figure 3.9: -88.0 dBmで計算された内部生成ノイズ
- Figure 3.10: -87.5 dBmで測定された内部生成ノイズ
- Figure 3.11: 6.01 dBの計算された超過ノイズ
- Figure 4.1: アクティブアンテナへの接続の2つの可能な方法
- Figure 4.2: -6.4 dBの順方向ゲインを示すアクティブアンテナ出力
- Figure 4.3: 2トーンテスト信号のテスト設定
- Figure 4.4: 8 MHzおよび11 MHzの2トーンテスト
- Figure 4.5: 相互変調製品のための2トーンテスト設定
- Figure 4.6: 5 MHzでの3次トーン
- Figure 4.7: 3 MHzでの2次トーン
- Figure 4.8: 測定されたアンテナファクター
- Figure 4.9: 計算されたアンテナノイズフィギュア
- Figure 4.10: 計算された3次および2次SFDR
- Figure 4.11: 同等な大きさの2つのEフィールドの計算された強度
7. 結論:
本論文は、JFETの選択と出力バッファ構成を通じて相互変調歪みを最小化する高性能HFアクティブアンテナ設計を成功裏に提示します。低いノイズフィギュアと堅牢な雷保護を達成し、Eフィールド測定、監視、HF信号の地理的位置特定に適しています。モジュラー型で小型の設計と設置推奨事項により、さまざまな環境での実際の展開が保証されます。
8. 参考文献:
- [1] "Low-Noise JFETs-Superior Performance to Bipolars" (10-Mar-97), Siliconix application note AN108.
- [2] Applications Engineering Staff, Siliconix, Inc. (1990), revised by Ed Oxner, "Designing with Field-Effect Transistors", Mcgraw-Hill, Inc., ISBN: 0-07-053737-1.
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- [7] Noll, Edward M., (1975), "FET principles, experiments and projects" ISBN: 0-67221167-X
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- [10] F. R. Connor, (1973), "Noise", Edward Arnold (Publishers) Ltd., 25 Hill Street, London, W1X8RL, ISBN: 0-7131-3066-6
9. 著作権:
- 本資料は「Wayne Martinsen」の論文です。「A High Performance Active Antenna for the High Frequency Band」を基にしています。
- 論文の出典:DOI提供なし(原文でDOI未提供)。
- 本資料は上記論文に基づいて要約されており、商業目的での無断使用は禁止されています。
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論文の要約:
「Defence Science and Technology Group」によって2018年8月に発行されたWayne Martinsenの論文「A High Performance Active Antenna for the High Frequency Band」は、LFからHFアプリケーション向けの小型受信専用アクティブアンテナの設計を詳細に説明します。U310 JFETのトランスコンダクタンス変動を相互変調歪みの主な原因として特定し、コモンドレイン構成とプッシュプル出力バッファを使用して広帯域50オームインピーダンスを達成し、歪みと反射を低減します。6.01 dBの計算されたノイズフィギュア(Figure 3.11)と堅牢な雷保護により、Eフィールド測定、監視、信号の地理的位置特定に適しています。
研究に関する主要な質問と回答:
Q1. アクティブアンテナの相互変調歪みの主な原因は何ですか?
A1. 主な原因は、U310 JFETのトランスコンダクタンス(g_ds)がドレイン電流によって変動することであり、「A High Performance Active Antenna for the High Frequency Band」のセクション2.2.5およびFigure 2.3で説明されています。
Q2. アンテナはどのように広帯域50オーム出力インピーダンスを達成しますか?
A2. マッチングされたトランジスタと50オーム終端抵抗を使用したプッシュプル出力バッファ構成により、広帯域50オーム出力インピーダンスを確保します。これはセクション2.3およびFigure 2.9で説明されています。
Q3. アンテナを雷から保護するためにどのような措置が取られていますか?
A3. 220 pFのシルバーマイカコンデンサ2つ、ガス放電管、4 M7抵抗を使用して静電荷を放電することで雷保護を実現します(セクション2.2.7、Figure 2.8)。
Q4. アンテナの測定されたアンテナファクターは何であり、どのように検証されましたか?
A4. 測定されたアンテナファクターは12.8 dBで、方程式4.2を使用して計算され、Rohde & Schwarz HE010システムによるフィールド実験で検証されました(セクション4.3、Figure 4.8)。
Q5. アンテナのノイズフィギュアは商用HFレシーバーとどのように比較されますか?
A5. 15.5 MHzで6.01 dBの計算された超過ノイズは、一部のアマチュア用商用HFレシーバーと同等ですが、軍用グレードのレシーバーでは追加の増幅が必要な場合があります(セクション3.4、Figure 3.11)。
Q6. アンテナ性能を最適化するためにどのような設置方法が推奨されますか?
A6. 地上レベルの金属マット設置、金属ポールを使用した高架設置、またはグラウンドラジアルを使用した設置が推奨され、RF電流チョークを使用して6.5 MHz以下の不要な電流を抑制します(セクション2.6、Figures 2.22–2.28)。