電気自動車(EV)製造の鍵を握る:高品質アルミニウムアーク溶接の実現方法
本技術概要は、学術論文「Aluminum Arc Welding Technology to Improve Quality and Productivity of Electric Vehicles」(著者:Woohyeon Ju, Taewan Kim, Yoochan Kim、発行:Journal of Welding and Joining、2022年)に基づいています。


キーワード
- 主要キーワード: アルミニウムアーク溶接
- 副次キーワード: 電気自動車, EVバッテリー, 軽量化, 溶接欠陥, MIG溶接, TIG溶接, 品質保証
エグゼクティブサマリー
- 課題: 電気自動車(EV)の重量増加を相殺するためのアルミニウム部品の需要は高いですが、アルミニウムのアーク溶接は気孔や亀裂が発生しやすく、技術的な困難が伴います。
- 手法: 本稿では、アルミニウム材料の基本的な特性から、電気自動車のシャシーやプラットフォームといった部品に適用される最先端のアーク溶接技術の特性までを調査・分析します。
- 重要なブレークスルー: 溶接速度、電流、電圧などの主要な溶接条件を精密に制御し、スパッターフリー点火(SFI)やシンクロパルスといった先進的なプロセスを適用することで、溶接欠陥を大幅に削減し、品質を確保できることが示されました。
- 結論: EVのシャシーやバッテリープラットフォームにおけるアルミニウム部品の高品質かつ高生産性な製造には、適切な溶接プロセスの選択と徹底した管理が不可欠です。
課題:なぜこの研究がダイカスト専門家にとって重要なのか
近年、カーボンニュートラル政策を背景に電気自動車(EV)へのシフトが加速しています。しかし、EVは重いバッテリーを搭載するため、車体全体の軽量化が至上命題となります。その解決策として、代表的な軽量素材であるアルミニウムがシャシーやバッテリープラットフォームに広く採用され始めています。
しかし、アルミニウムの溶接には特有の難しさがあります。アルミニウム表面の酸化皮膜(Al₂O₃)は融点が約2050℃と非常に高く、母材の融点(約660℃)との大きな差が溶融不良を引き起こします。さらに、溶融アルミニウムは水素を大量に固溶し、凝固時に急激に放出するため、溶接部に気孔(ポロシティ)が発生しやすくなります。これらの課題は、EVの安全性と耐久性に直結する部品の品質を確保する上で大きな障壁となっていました。
アプローチ:研究方法の解明
本研究では、高品質なアルミニウム溶接を実現するための包括的なアプローチを体系的にまとめています。
手法1:アルミニウム材料の特性評価 まず、アルミニウムの基本的な物理的特性(表1参照)や結晶構造を鉄と比較し、その違いを明確にしました。さらに、展伸材と鋳造材に大別されるアルミニウム合金の種類(表2、3、4参照)や、強度や耐食性に影響を与える合金元素(Cu, Mn, Mg, Siなど)の役割について詳細に解説しています。
手法2:溶接プロセスの分析 アルミニウム溶接の標準的な作業手順(図1参照)を提示し、材料準備から溶接後の処理、品質検査までの各段階の重要性を強調しています。特に、亀裂防止と強度確保に不可欠な溶接ワイヤの適切な選定(表6参照)や、気孔や高温割れといった代表的な溶接欠陥の発生メカニズムと防止策について深く掘り下げています。
手法3:最新溶接技術と装置のレビュー MIG、TIG、パルスMIGといった主要なアーク溶接方法の原理と特徴を解説。さらに、溶接トーチ(図3参照)、ワイヤ送給装置、ワイヤ駆動ロール(図4参照)といった装置構成要素の管理ポイントを具体的に示しています。また、スパッターフリー点火(SFI)やシンクロパルスといった、デジタル制御による最新の品質保証プロセスについてもその有効性を論じています。
ブレークスルー:主要な研究結果とデータ
本稿は、プロセス制御を徹底することで、従来困難とされてきたアルミニウム溶接の品質を飛躍的に向上させられることを明らかにしました。
発見1:プロセス制御による欠陥防止
アルミニウム溶接における最大の欠陥である気孔の主な原因は水素です。図2が示すように、アルミニウムは液体状態では水素を多く溶かし込みますが、固体になるとその溶解度が急激に低下します。このため、凝固時に行き場を失った水素が気泡となり、内部に閉じ込められてしまいます。この研究では、母材、溶接ワイヤ、シールドガス中の水分を徹底的に管理することが、気孔欠陥を防ぐ上で最も重要であることを再確認しました。また、高温割れは、適切な溶接ワイヤの選定と低入熱での溶接、そして適切なビード形状の形成によって防止できると結論付けています。
発見2:先進的な溶接プロセスによる優れた品質の実現
最新のデジタル制御溶接機は、欠陥を抑制するための画期的な機能を提供します。 - スパッターフリー点火(SFI): 図6は、従来の溶接法とSFIの着火時の比較を示しています。SFIは、ワイヤが母材に接触した瞬間に電流を印加し、ワイヤを逆行させることで、スパッター(溶滴の飛散)を発生させずにアークを開始します。これにより、溶接始端部の品質が向上し、コンタクトチップの寿命も延びます。 - シンクロパルス: 図7に示すように、このプロセスはパルス電流とワイヤ送給速度を同期させます。これにより、母材への入熱を最小限に抑えながら、均一で美しい波模様のビードを形成できます。低入熱は、溶接金属周辺の水素発生量を減少させるため、気孔の抑制にも繋がります。
研究開発および製造現場への実践的示唆
- プロセスエンジニア向け: 本研究は、溶接速度、電流、電圧(セクション5.1)の調整や、適切な予熱(セクション5.4.3)の実施が、融合不良や気孔といった欠陥を大幅に削減する上で有効であることを示唆しています。
- 品質管理チーム向け: シールドガスの混合比に関するデータ(表7)や、溶接部の形状(図9)に関する考察は、溶接部の溶け込みや外観を検査し、疲労性能を保証するための新しい品質基準を策定する上で有益な情報となります。
- 設計エンジニア向け: ダブルバットジョイント(両面突合せ継手、図9)に関する知見は、EVバッテリーケース(図10)のような重要部品において、溶接のアクセス性と信頼性を考慮した継手設計が、部品全体の完全性を向上させることを示唆しており、初期設計段階での貴重な検討事項となります。
論文詳細
Aluminum Arc Welding Technology to Improve Quality and Productivity of Electric Vehicles
1. 概要:
- 論文名: Aluminum Arc Welding Technology to Improve Quality and Productivity of Electric Vehicles
- 著者: Woohyeon Ju, Taewan Kim, and Yoochan Kim
- 発行年: 2022
- 掲載誌/学会: Journal of Welding and Joining
- キーワード: Aluminum welding, MIG, TIG, Quality
2. 抄録:
自動車産業では、近年のカーボンニュートラル政策により、自動車の軽量化を目的としたアルミニウムボディの使用が増加している。電気自動車市場における激しい競争のため、バッテリーとモーターの技術を確保する必要がある。特に、バッテリーの主要部品は銅とアルミニウム材料で作られており、バッテリープラットフォームも軽量化のためにアルミニウム材料で作られている。アルミニウム材料への高い需要にもかかわらず、アルミニウムのアーク溶接は気孔や亀裂が生じやすいため、困難なプロセスとして知られている。したがって、本稿は、一般的なアルミニウム材料の溶接特性と、電気自動車に適用されるアーク溶接技術を調査することを目的とする。
3. 序論:
地球温暖化と気候変動に対応するため、環境に優しい自動車の供給が近年活発に増加している。内燃機関を搭載した現行車に代わる最も有望な車種は、充電式バッテリーを備えた電気自動車(EV)である。欧州議会が2035年以降の欧州での内燃機関車の販売禁止を決定したことで、EVの開発と生産は自動車産業における重要な課題となっている。EVは、エンジンとトランスミッションで構成される従来の内燃機関とは異なり、新しいパワートレインの核としてモーターとバッテリーを備えている。バッテリーの主要部品は銅とアルミニウム材料で作られているため、これらの金属の溶接・接合技術が不可欠である。さらに、バッテリー重量の増加を補うために様々な車両軽量化戦略が求められており、バッテリーとモーターを搭載するシャシーには新しい軽量プラットフォーム設計が必要とされ、アルミニウムがその代表的な材料として注目されている。本技術論文は、アルミニウム溶接に関する一般的な情報を、基本的な材料特性からEV部品に適用可能な溶接ノウハウまで要約することを目的とする。
4. 研究の要約:
研究トピックの背景:
電気自動車(EV)の普及とカーボンニュートラル政策の推進は、自動車の軽量化を加速させている。特に、バッテリー重量を相殺するため、シャシーやバッテリープラットフォームにアルミニウム材料の適用が拡大している。
従来研究の状況:
アルミニウムのアーク溶接は、その材料特性(高い熱伝導率、表面の強固な酸化皮膜、水素の高い溶解度など)から、気孔や亀裂といった溶接欠陥が発生しやすく、高品質な接合を実現することが困難であると広く認識されている。
研究の目的:
本研究の目的は、アルミニウム材料の溶接に関する一般的な特性を体系的に整理し、特に電気自動車(EV)の部品製造に適用されるアーク溶接技術について、その品質と生産性を向上させるための具体的な手法と知見を提供することにある。
研究の核心:
本研究は、アルミニウムの材料科学的特性から始まり、合金の分類、溶接欠陥の発生メカニズムと防止策、各種アーク溶接装置の構成と管理方法、そして品質を確保するための溶接条件の最適化や歪み防止技術に至るまで、アルミニウムアーク溶接に関する包括的なレビューを行っている。最終的に、これらの技術がEVのバッテリーシステムなどの実用的な部品にどのように適用されているかを示している。
5. 研究方法
研究デザイン:
本研究は、アルミニウムのアーク溶接技術に関する既存の学術論文、技術報告書、業界標準、およびメーカーの技術資料を包括的にレビューし、統合・要約する技術総説(テクニカルレビュー)として設計されている。
データ収集と分析方法:
アルミニウムの物理的特性、合金の分類、溶接ワイヤの選定ガイド、シールドガスの特性などに関するデータを文献から収集し、表や図を用いて体系的に整理・提示している。また、溶接欠陥のメカニズムや最新の溶接プロセスの原理を解説し、それらの有効性を定性的に分析している。
研究のトピックと範囲:
本研究の範囲は以下の通りである。 - アルミニウムの基本特性と合金の分類 - アルミニウム溶接に特有の課題(酸化皮膜、気孔、亀裂) - アーク溶接装置(MIG, TIG)の構成と管理 - 溶接品質を確保するための主要条件(溶接速度、電流、電圧など) - SFIやシンクロパルスなどの先進的な溶接プロセス - 溶接歪みの防止技術 - 電気自動車(EV)部品への応用事例
6. 主要な結果:
主要な結果:
- アルミニウム溶接における主な課題は、母材(融点約660℃)と表面酸化皮膜(融点約2050℃)の融点差、高い熱伝導率、そして凝固時の水素ガス放出による気孔の発生である。
- 気孔の主な原因は水素であり、その溶解度は凝固時に液体状態から固体状態へ移行する際に急激に低下する(図2)。これを防ぐには、母材、溶接ワイヤ、作業環境から水分を徹底的に排除することが不可欠である。
- 最新のデジタル制御溶接機に搭載されているスパッターフリー点火(SFI)技術は、アーク開始時のスパッターをなくし、溶接始端部の品質を向上させる(図6)。
- シンクロパルス溶接プロセスは、パルス電流とワイヤ送給速度を同期させることで入熱を最小限に抑え、気孔の低減と高品質なビード外観を実現する(図7)。
- 継手設計も品質に大きく影響し、完全溶け込みが困難な場合、ダブルバットジョイント(両面突合せ継手)は部分溶け込み溶接と比較して優れた疲労性能を示す(図9)。
- EVのバッテリーシステム(図10)など、実際の部品製造において、これらの高度なアルミニウムアーク溶接技術が適用され、軽量化と安全性の両立に貢献している。
図の名称リスト:

- Fig. 1 Work sequence of aluminum welding
- Fig. 2 Hydrogen solubility in aluminum
- Fig. 3 Configuration of MIG torch
- Fig. 4 Configuration of wire drive roller
- Fig. 5 Current waveform at the start and end of welding
- Fig. 6 Comparison of conventional arc ignition and SFI
- Fig. 7 Waveform during synchropulse
- Fig. 8 Characteristic of cycle step
- Fig. 9 Aluminum butt joint specimen dimension. left side: butt joint, Right side: double butt joint
- Fig. 10 Battery system structure of electric vehicle (E-GMP, Hyundai-Kia Motor Company)
7. 結論:
将来、内燃機関に取って代わるEVに適用可能なアルミニウム材料について、アーク溶接技術の基礎をレビューした。アルミニウムは軽量材料であるが、融点が低く熱伝達が速いため、アーク溶接に関しては特別な注意が必要である。幸いなことに、開発されてきた様々なアーク溶接制御方法を用いて溶接品質を確保することができる。このような技術を用いてEVのアルミニウム部品へのソリューションを効果的に適用することが期待される。
8. 参考文献:
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専門家Q&A:あなたの疑問に答えます
Q1: なぜアルミニウム溶接では、鋼の溶接と比較して水素がこれほど重大な問題となるのですか? A1: 論文のセクション3.4.1および図2で示されているように、アルミニウムは液体状態(溶融状態)では水素を非常に多く溶解しますが、固体になるとその溶解度が劇的に低下します。この急激な変化により、凝固プロセス中に過飽和となった水素がガスとして放出され、溶接金属内に気孔として捕捉されてしまいます。鋼と比較してこの溶解度の差が著しいため、アルミニウム溶接では水素管理がより一層重要になります。
Q2: 論文で言及されているSFI(スパッターフリー点火)は、従来の着火方法と技術的にどう違うのですか? A2: セクション5.2.2および図6によると、従来のMIG溶接では、ワイヤが母材に接触して短絡し、大電流が流れることで爆発的にアークが発生するため、大量のスパッターが発生します。一方、SFI技術では、ワイヤが母材に接触した瞬間に溶接電流を印加すると同時にワイヤをわずかに逆行させます。これにより、短絡を起こさずにアークを安定して発生させることができ、スパッターのないクリーンな溶接始端部を実現します。
Q3: アルミニウム溶接に4ロール式のワイヤ送給装置を使用する主な利点は何ですか? A3: セクション4.1.3で説明されている通り、アルミニウムワイヤは非常に延性が高く柔らかいため、送給ロールの圧力で容易に変形してしまいます。これがワイヤの座屈や送給不良の原因となります。2ロール式に比べて4ロール式では、ワイヤにかかる圧力を分散させることができるため、ワイヤを変形させることなく、より安定して正確に送給することが可能になります。これは、特に長距離の送給や細いワイヤを使用する場合に大きな利点となります。
Q4: EVシャシーで一般的に使用される6000系アルミニウム合金を溶接する場合、論文ではどのような溶接ワイヤの選定を推奨していますか? A4: 論文の表6「適切な溶接棒の選定ガイド」を参照すると、母材が6060や6082といった6000系合金の場合、一般的に5356や5754、4043Aといった溶接ワイヤが推奨されています。特に5356は強度が高く、6000系合金の溶接に広く使用されます。一方、4043A(Al-Si系)は溶融性が良く、高温割れの感受性を低減する効果があるため、割れやすい継手の場合に選択されることがあります。
Q5: シンクロパルスプロセスは、どのようにして入熱と潜在的な欠陥を低減するのですか? A5: セクション5.2.3および図7で解説されているように、シンクロパルスはパルス電流とワイヤ送給速度を同期させ、高低の平均電流を周期的に切り替えるプロセスです。高送給速度時には高い平均電流のパルスアークを、低送給速度時には低い平均電流のパルスアークを発生させます。これにより、全体の平均入熱を効果的に抑制し、薄板の溶接や熱による歪みを最小限に抑えることができます。また、低入熱は溶接部周辺の水素発生を抑えるため、気孔欠陥の低減にも寄与します。
結論:より高い品質と生産性への道を開く
本稿で見てきたように、電気自動車の性能を左右する軽量化の要求は、アルミニウムアーク溶接技術の進化を不可欠なものにしています。気孔や亀裂といった長年の課題は、溶接プロセスのデジタル制御、SFIやシンクロパルスのような先進技術、そして適切な材料管理によって克服可能であることが示されました。これらの知見は、研究開発部門や製造現場のエンジニアにとって、より高品質で生産性の高いEV部品を製造するための実践的な指針となります。
CASTMANは、最新の業界研究を応用し、お客様の生産性と品質の向上を支援することに尽力しています。本稿で議論された課題が貴社の事業目標と一致する場合、ぜひ当社のエンジニアリングチームにご連絡ください。これらの原理を貴社の部品にどのように実装できるか、共に探求してまいりましょう。
著作権情報
本コンテンツは、論文「Aluminum Arc Welding Technology to Improve Quality and Productivity of Electric Vehicles」(著者:Woohyeon Ju, Taewan Kim, Yoochan Kim)に基づく要約および分析です。
出典: https://doi.org/10.5781/JWJ.2022.40.5.8
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