本稿は、「7th. Int. Conf. on Thermal, Mechanical and Multiphysics Simulation and Experiments in Micro-Electronics and Micro-Systems, EuroSimE 2006」に掲載された論文「Thermal Management of Bright LEDs for Automotive Applications」に基づいています。

1. 概要:
- タイトル: Thermal Management of Bright LEDs for Automotive Applications
- 著者: Yan Lai, Nicolás Cordero
- 発行年: 2006
- 学術誌/学会: 7th. Int. Conf. on Thermal, Mechanical and Multiphysics Simulation and Experiments in Micro-Electronics and Micro-Systems, EuroSimE 2006
- キーワード: 論文に記載なし
2. 要旨:
高輝度白色発光ダイオード(LED)は、屋外照明、タスク照明、装飾照明、さらには航空機や自動車の照明(自動車のヘッドライトを含む)など、多くの照明用途で非常に有望であることが示されています。本稿の目的は、自動車用途におけるこのようなLEDの冷却ソリューションを調査することです。本研究では、デバイスから基板、システムレベルまでの熱設計が実施され、最適な熱性能を見つけるための最適化作業が行われました。自然対流と強制対流の両方が検討され、この特定の用途における各ケースについて結論が導き出されています。
3. 緒言:
GaNベースの材料技術の進歩に伴い、高輝度白色LED技術は過去数年間で飛躍的に発展しました。小型パッケージサイズ、スタイリングの柔軟性、白熱光源に対する優れた性能により、LEDはブレーキランプ、方向指示器、テールランプなど、今日の多くの自動車外装に広く使用されており、一部のコンセプトカーでは前方照明としても登場しています。しかし、現在、ヘッドライト用途に特化したLEDはありません。
現在、LEDは生産車両向けには高コストなソリューションであり、十分なルーメン出力を提供していません。法的要件では、ヘッドランプにはランプあたり750 lmが必要とされています。しかし、現在の平均的な高輝度LEDの出力はわずか40 lm/Wであるため、基準を満たすためにはより多くのLEDとより高い駆動電力が必要となります。
光出力の要求が高まるにつれて、LEDの駆動電力は継続的に増加します。LEDパッケージの熱管理は、これらのデバイスの効率、性能、信頼性に大きな影響を与えるため、ますます重要になっています。
ダイオード接合部温度の上昇の結果、LED効率の低下と発光波長のシフトが生じます。したがって、高効率と比較的固定された波長を達成するためには、LEDを最大動作温度(すなわち125°C未満)よりも十分に低く保つための熱ソリューションが望まれます。これを達成するために、熱ソリューションは包括的であり、デバイス、パッケージ、基板、システムレベルのすべてのレベルで熱問題に対処する必要があります。この用途では、市販のベアダイ高輝度LEDが使用されます。適切な熱管理ソリューションの探索をサポートするために、すべてのレベルで計算流体力学(CFD)を使用した熱シミュレーションが実施されました。
4. 研究の概要:
研究トピックの背景:
LEDからの光出力増加の要求は、より高い駆動電力につながり、その効率、性能、信頼性のために効果的な熱管理が不可欠となります。LED接合部温度の上昇は、効率の低下と発光波長のシフトをもたらします。自動車用途、特にヘッドライトでは、最適で安定した性能を確保するために、LED接合部温度を最大動作限界(例:125°C未満)よりも十分に低く維持することが重要です。
従来の研究の状況:
本論文では、LEDは自動車の外装照明に一般的であるが、ヘッドライト用途に特化したLEDはまだ標準ではないと指摘しています。現在のLEDは高価であり、ヘッドランプにはランプあたり750 lmが必要とされる生産車両には十分なルーメン出力を提供していません。現在の高輝度LEDが約40 lm/Wを出力することを考えると、必要な照明を達成するには、より多くのLEDをより高い電力レベルで動作させる必要があり、それによって高度な熱管理戦略の重要な必要性が強調されます。
研究の目的:
本稿の主な目的は、自動車用途、特にヘッドライトに使用される高輝度LEDの最適な冷却ソリューションを調査し、特定することです。この研究には、デバイスレベルから基板およびシステムレベルまでの包括的な熱設計プロセスと、可能な限り最高の熱性能を達成するための最適化作業が含まれます。この研究では、自然対流と強制対流の両方の冷却方法を検討しています。
研究の核心:
研究の核心は、15個のCree XBright900 LEDで構成されるシステムの熱設計と最適化でした。各LEDは最大2.5Wの熱を発生させることができ、5枚の基板にそれぞれ3個のLEDが配置されました。研究の主な側面は次のとおりです。
- LEDパッケージング: LEDからパッケージ底部への低熱抵抗経路(2°C/W未満と計算)を確保するために、AlN(k=200 W/mK)を使用したLEDの個別パッケージング。
- 絶縁金属基板(IMS)の最適化: AlNパッケージはIMSに取り付けられました。IMS構造は、さまざまな材料と層の厚さを評価することによって最適化されました。最終設計は、70 µmの銅回路層、75 µmの誘電体層(k=2.2 W/mKのセラミック/ポリマー製)、および1 mmのアルミニウムコア基板で構成されました(Table 1に詳述)。
- ヒートシンクの最適化: アルミニウムヒートシンクは、自然対流冷却用に設計および最適化されました。これには、CFDソフトウェア(FloTherm)を使用した反復プロセスが含まれ、表面積、フィン数、フィン厚、フィン高さ、ベース厚などの最適なパラメータを決定し、製造上および用途上の制約を考慮しました。
- 冷却方法の評価:
- 自然対流: 最適化されたIMSとヒートシンクを使用して、開放空気中および密閉されたヘッドライトエンクロージャ内で性能をシミュレーションしました。
- 強制対流(空気): これは簡単に検討されましたが、スペース、信頼性、コスト、および高流量ファンの必要性に関連する制約のため、実現不可能として却下されました。
- 液体冷却: 受動的および能動的な液体冷却ソリューションが代替案として調査されました。受動的液体冷却は、用途の幾何学的制約のため不適切であることがわかりました。遠隔熱交換器に接続された水冷コールドプレートを利用する能動的液体冷却がシミュレーションされ、分析されました。
5. 研究方法論
研究デザイン:
本研究では、LEDダイ(デバイスレベル)からパッケージ、絶縁金属基板(IMS基板)、そしてヒートシンクとその動作環境(例:ヘッドライトエンクロージャ)を含むシステムレベルまでの熱管理問題に対処する、多段階の熱設計戦略を採用しました。反復的な最適化手法は、特にヒートシンクの設計プロセスにおいて中心的であり、相反する設計パラメータ(例:熱性能対重量、サイズ、製造可能性)のバランスをとることを目的としました。この研究は、Cree XBright900 LEDを使用するシステムに焦点を当て、5枚の基板に15個のLEDを分散させた構成(基板あたり3個のLED)で行われました。
データ収集と分析方法:
熱性能は、商用の計算流体力学(CFD)ソフトウェアであるFloTherm [3]を使用して分析および最適化されました。方法論には以下が含まれます。
- LEDパッケージの熱抵抗の計算。
- 熱抵抗を最小化するために、さまざまな材料と層の厚さを比較することによるIMS最適化のためのパラメトリックスタディの実施。
- 自然対流下でのLED接合部温度を最小化することを目標に、フィン数、フィン厚、フィン高さ、ベースプレート寸法などのヒートシンク設計パラメータを最適化するための反復シミュレーションの実行。
- さまざまな冷却戦略(開放空気中およびエンクロージャ内の自然対流、能動的液体冷却)の熱性能のシミュレーションと比較。
研究トピックと範囲:
本研究は、自動車のヘッドライト用途向けの高輝度白色LED、特にCree XBright900モデルの熱管理に焦点を当てました。研究の範囲は次のとおりです。
- 効率的な放熱のための窒化アルミニウム(AlN)を使用した個別LEDパッケージの設計。
- LEDパッケージ実装用の絶縁金属基板(IMS)基板の設計と最適化。
- 自然対流冷却に合わせたアルミニウムヒートシンクの設計と最適化。
- さまざまな環境(開放空気中対ヘッドライトエンクロージャ内への配置)におけるシステムの熱性能評価。
- 強制空冷の簡単な検討、および受動的液体冷却システムと能動的液体冷却システムのより詳細な分析を含む、代替冷却ソリューションの調査。
- テスト対象のシステムは15個のLEDで構成され、各LEDは最大2.5Wの熱を発生させることができ、主な熱管理目標はLED接合部温度を125°C未満に維持することでした。
6. 主な結果:
主な結果:
- IMSの最適化: 70 µmの銅回路層、熱伝導率(k)2.2 W/mKの75 µmセラミック/ポリマー誘電体層、および厚さ1 mmのアルミニウム基板からなる、最適化された絶縁金属基板(IMS)構造が決定されました。Table 1に詳述されているこの構成は、熱拡散を強化し、全体の熱抵抗を低減するように設計されました。
- 自然対流用ヒートシンクの最適化:
- CFDシミュレーションを用いた反復的な最適化プロセスにより、アルミニウムヒートシンクの最適なフィン数(Figure 3)、フィン厚(Figure 4)、フィン高さ(Figure 5)、およびベースプレート面積(Figure 6)が定義されました。
- 最適化されたヒートシンクに3つのLED(各3Wを放熱)を搭載したIMS基板を、開放空気中での自然対流条件下でシミュレーションした結果、温度プロファイルは60~100°Cの範囲を示しました(Figure 7)。
- エンクロージャ内自然対流の限界: 最適化されたヒートシンクを備えたLEDアセンブリをヘッドライトエンクロージャ内に配置した場合、自然対流ではLED接合部温度を望ましい125°C未満に維持するには不十分でした。シミュレーションによると、限られた空間内での空気の再循環により、接合部温度はこの限界を超え、200°Cにも達する可能性が示されました(Figure 8)。
- 強制空冷の評価: 強制空冷も検討されましたが、ヘッドライト内のスペース制限、ファンの信頼性に関する懸念、コスト、および組み立ての複雑さといった実用的な制約により、実現可能なソリューションではないと判断されました。
- 受動的液体冷却の評価: 受動的液体冷却は、この特定の用途には不適切であることがわかりました。効果的な受動対流に必要な向き(ヒートシンクの下に熱源)は、LEDからの光出力を妨げます。さらに、水の伝導(熱伝導率0.6 W/mK)のみに依存することは、熱負荷に対して不十分でした。
- 能動的液体冷却の性能: IMS基板の下に取り付けられ、遠隔の熱交換器に接続された水冷コールドプレートを利用した能動的液体冷却(Figure 9)は、熱性能の大幅な向上を示しました。このシステムでの計算されたLED接合部温度は110°Cであり(Figure 10)、エンクロージャ内での自然対流と比較して90°Cの改善を表しています。
- 特定されたトレードオフ: この研究は、熱的に最適なソリューションを達成することと、製造の実現可能性、重量制限、利用可能なスペースなどの実用的なアプリケーションの制約を遵守することとの間に固有のトレードオフがあることを強調しました。能動的液体冷却は優れた熱性能を提供しましたが、ポンプの漏れのリスク、ポンプの信頼性に関する懸念、追加の電力消費、液体の蒸発、ドライアウトや詰まりの可能性、および追加のメンテナンスの必要性など、潜在的な欠点ももたらしました。
図の名称リスト:
- Figure 1. Insulated Metal Substrate assembly. (a) AlN cup with wire-bonded LED, (b) Circuit layer, (c) Dielectric layer and (d) Aluminium substrate.
- Figure 2. Simulated IMS Board with three LEDS mounted on a vertical Heat Sink.
- Figure 3. LED Junction Temperature vs. Fin Number
- Figure 4. LED Junction Temperature vs. Fin Thickness
- Figure 5. LED Junction Temperature vs. Fin Height
- Figure 6. LED Junction Temperature vs. Base Plate Area
- Figure 7. Cross Section Temperature Profiles in Natural Convection for assembly in Figure 2. (a) Top view and (b) Side view. Temperature range shown is 60 to 100°C.
- Figure 8. Optimised Heat Sink inside a headlight enclosure (Tj = 200°C). Temperature range shown is 25 to 180°C.
- Figure 9. Active Liquid Cooling. The IMS board is mounted on a liquid-cooled cold plate which is connected with hoses to a heat exchanger.
- Figure 10. Temperature Profile of Active Liquid Cooling (Figure 9). Temperature range shown is 35 to 95°C. The flow velocity range is 0 to 4.5 m/s.
7. 結論:
本稿は、新しい自動車用ヘッドライト用途に特化してカスタマイズされたLEDの最適な冷却ソリューションを選択するための体系的な手順の概要を示しています。この研究では、自然対流冷却は、調査対象の高出力LEDシステムにおいて、特に密閉された場合には、LED接合部温度を最大許容レベル以下に維持するには不十分であることがわかりました。空気による強制対流冷却も、自動車環境内のスペースと信頼性の制約により、実行不可能であると判断されました。シミュレーション結果は、自動車用途における高輝度LEDの熱管理において、液体冷却が冷却能力を大幅に向上させることができることを示しています(自然対流による接合部温度約200°Cから液体冷却では110°Cへ)。しかし、本稿は、ポンプの漏れ、ポンプの信頼性の問題、追加の電力消費、液体の蒸発、ドライアウトや詰まりのリスク、および液体冷却に必要な追加のメンテナンスなど、液体冷却に関連するいくつかの大きな欠点も認めています。著者らは、将来、特定の光出力に対してより少ない駆動電力で済む、さらに高輝度な白色LEDが開発されれば、より単純な空冷ソリューションが再び適切になる可能性があると示唆しています。
8. 参考文献:
- [1] Pearson, T., Mounier, E., Eloy, J.C., Jourdan, D., "Solid-state lighting in the automobile: concept, market timing and performance," LEDs Magazine, pp. 25-27, Apr. 2005.
- [2] Stratford, J and Musters, A, “Insulated metal printed circuits – a user-friendly revolution in power design," Electronics Cooling, vol. 10, pp. 30-34, Nov. 2004.
- [3] Flomerics Ltd., FloThermTM 6.1 Instruction Manual, 2005.
- [4] Karimpourian, B. and Mahmoudi, J., “Some important considerations in heatsink design," Proc. of the 6th EuroSimE Conference, pp 406-413 (2005)
- [5] Azar, K., “Cooling technology options, part 1," Electronics Cooling, vol. 9, Aug. 2003
- [6] Azar, K., "Cooling technology options, part 2," Electronics Cooling, vol. 9, Nov. 2003
9. 著作権:
- 本資料は、「Yan Lai, Nicolás Cordero」氏による論文です。「Thermal Management of Bright LEDs for Automotive Applications」に基づいています。
- 論文の出典: https://doi.org/10.1109/ESIME.2006.1643953
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