Development and Testing the Properties of Hybrid Composite Using Aluminium 6061 with TiC and Graphene
本技術概要は、Nishanth Pasupathy氏による学術論文「DEVELOPMENT AND TESTING THE PROPERTIES OF HYBRID COMPOSITE USING ALUMINIUM 6061 WITH TiC AND GRAPHENE」(Major Papers、University of Windsor、2021年)に基づいています。
![Figure 2 Classification of metal matrix processing [11].](https://castman.co.kr/wp-content/uploads/image-3786.webp)
キーワード
- 主要キーワード: アルミニウム複合材
- 副次キーワード: Al6061, TiC (チタンカーバイド), グラフェン, 攪拌鋳造法, 機械的特性, 硬度, 微細構造解析
エグゼクティブサマリー
- 課題: 標準的なアルミニウム合金(Al6061)は、より高い硬度や耐摩耗性が求められる用途では性能に限界があり、特にナノ粒子のような強化材を母材中に均一に分散させることが困難でした。
- 手法: マイクロサイズの炭化チタン(TiC)とナノサイズのグラフェンを強化材として用い、2段階攪拌鋳造法によりAl6061ベースのハイブリッド複合材を製造し、攪拌速度と時間の影響を評価しました。
- 重要なブレークスルー: 攪拌速度を500rpm、攪拌時間を20分に最適化することで、強化粒子の均一な分散が達成され、ロックウェル硬度(HRB)が母材と比較して最大で約45%向上しました。
- 結論: 攪拌鋳造プロセスのパラメータを最適化することは、要求の厳しい産業用途向けに、優れた硬度を持つ高性能なAl6061-TiC-グラフェンハイブリッド複合材を製造する上で極めて重要です。
課題:なぜこの研究がダイカスト専門家にとって重要なのか
自動車や航空宇宙産業では、軽量でありながら高い強度を持つ材料が常に求められています。アルミニウム合金はその代表格ですが、単体(モノリシック)のAl6061では、耐摩耗性や強度に限界がありました。この課題を克服するため、セラミックスなどの硬い粒子を混ぜ込んだアルミニウム基複合材(AMMC)が開発されています。
しかし、製造プロセスには大きな壁が存在します。特に、ナノメートルサイズのグラフェンのような微細な強化材を、溶融したアルミニウムの中に均一に分散させることは非常に困難です。粒子が凝集して塊になったり、鋳造欠陥(ポロシティ)が発生したりすると、材料の性能は期待通りに向上せず、むしろ低下することさえあります。本研究は、この「均一な分散」という製造上の核心的な課題に正面から取り組み、信頼性の高い高性能複合材を実現するための具体的な手法を明らかにすることを目的としています。
アプローチ:研究手法の解明
本研究では、従来の攪拌鋳造法の欠点を克服するため、「2段階攪拌鋳造法」という先進的なアプローチを採用しました。これにより、強化材の濡れ性を向上させ、凝集を抑制することを目指しました。
材料とプロセス: - 母材: 自動車産業などで広く使用されているAl6061-T6合金。 - 強化材: マイクロサイズの炭化チタン(TiC)を4wt%、ナノサイズのグラフェンを0.3wt%添加。 - 製造法(2段階攪拌鋳造): 1. Al6061を750℃で完全に溶解させた後、半凝固状態の600℃まで冷却。 2. この半凝固スラリーに、予熱したTiCとグラフェンを投入し、1回目の攪拌を行う。これにより、強化材と母材の濡れ性が向上。 3. 再び750℃の液体状態まで昇温し、2回目の攪拌を行うことで、ボイド(空隙)を除去し、分散をさらに促進。 4. 予熱した鋳型に鋳込み、凝固させる。
評価変数: このプロセスにおいて、最終的な材料特性を決定づける重要な変数として「攪拌速度」と「攪拌時間」に着目。以下の4つの条件下でサンプルを作製し、比較評価を行いました。 - サンプルA: 400 rpm / 10分 - サンプルB: 400 rpm / 20分 - サンプルC: 500 rpm / 10分 - サンプルD: 500 rpm / 20分
これらのサンプルに対し、走査型電子顕微鏡(SEM)による微細構造解析と、ロックウェル硬さ試験(HRBスケール)による機械的特性評価を実施しました。
ブレークスルー:主要な研究結果とデータ
本研究により、攪拌パラメータが複合材の品質に決定的な影響を与えることが、微細構造と機械的特性の両面から明確に示されました。
発見1:攪拌条件の最適化による微細構造の劇的な改善
走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果(Figure 21)は、攪拌条件の違いが粒子の分散状態に直接影響することを示しています。 - 低速攪拌(400 rpm)の限界: サンプルAおよびBでは、TiC粒子が均一に分散せず、複数の粒子が凝集した「クラスター」が観察されました。また、粒子が母材から剥離する「デボンディング」も見られ、これは材料の強度低下に直結します。 - 高速攪拌(500 rpm)の効果: 攪拌速度を500 rpmに上げることで、粒子の分散状態は著しく改善されました。特に、攪拌時間を20分に延長したサンプルDでは、TiC粒子が非常に均一に分散しており、凝集はほとんど見られませんでした。 これにより、強化材がその性能を最大限に発揮できる理想的な微細構造が実現されました。
発見2:微細構造の改善に伴う硬度の大幅な向上
微細構造の改善は、機械的特性、特に硬度の向上に直接的に寄与しました。Figure 22およびTable 9に示される通り、ロックウェル硬さ(HRB)は粒子の分散性が向上するにつれて顕著に増加しました。 - 母材の硬度: Al6061-T6単体の平均硬度は55.73 HRBでした。 - 複合材の硬度: - サンプルA (400rpm, 10min): 73.67 HRB - サンプルB (400rpm, 20min): 77.63 HRB - サンプルC (500rpm, 10min): 78.97 HRB - サンプルD (500rpm, 20min): 80.73 HRB - 結論: 最適な条件下で作製されたサンプルDは、母材と比較して約45%も硬度が向上しており、TiCとグラフェンによる強化効果が最大限に引き出されていることが実証されました。
研究開発および製造現場への実用的な示唆
- プロセスエンジニア向け: この研究は、2段階攪拌鋳造法において攪拌速度と時間をそれぞれ500rpm、20分に設定することが、Al6061母材中へのTiC/グラフェン強化材の均一分散に有効であることを示唆しています。これにより、製造プロセスの標準化と品質安定化に貢献できます。
- 品質管理チーム向け: 論文中のSEM画像(Figure 21)と硬度データ(Table 9)は、微細構造(粒子の分散状態、凝集、欠陥)と機械的特性(硬度)の間に明確な相関関係があることを示しています。これは、複合材の品質を評価するための新しい検査基準を策定する上で有益な情報となります。
- 設計・材料エンジニア向け: 本研究の成果は、標準的なAl6061よりも大幅に高い硬度を持つ複合材の製造法を実証しています。これにより、耐摩耗性や剛性が要求される部品において、重量を増やすことなく性能を向上させることが可能となり、材料選定の新たな選択肢を提供します。
論文詳細
DEVELOPMENT AND TESTING THE PROPERTIES OF HYBRID COMPOSITE USING ALUMINIUM 6061 WITH TiC AND GRAPHENE
1. 概要:
- 論文名: DEVELOPMENT AND TESTING THE PROPERTIES OF HYBRID COMPOSITE USING ALUMINIUM 6061 WITH TiC AND GRAPHENE
- 著者: Nishanth Pasupathy
- 発表年: 2021
- 発表機関/学会: Major Papers, University of Windsor
- キーワード: Aluminum Metal Matrix Composite (AMMC), Hybrid Composite, Al6061, Titanium Carbide (TiC), Graphene, Two-step stir casting, Hardness, Microstructure
2. 要旨:
アルミニウムはその有利な特性により産業界で広く利用されている金属であるが、その使用にはいくつかの制限がある。これは強化材を用いた複合材を開発することで解決可能である。そのため、アルミニウム基複合材(AMMC)は、その機械的挙動と良好な熱伝導性に関して産業分野でより多くの認識を得ている。本研究では、TiCおよびグラフェン粒子で強化されたアルミニウム基MMCを2段階攪拌鋳造法により成功裏に開発した。2段階攪拌鋳造法は、気孔率の増加や凝集を引き起こし、粒子の不均一な分布をもたらす従来の攪拌鋳造法の欠点を克服するために導入された。攪拌速度と攪拌時間は、最終的に製造される複合材の微細構造と機械的特性に重要な役割を果たす。本研究では、重量比95.7%のAl6061を4%のTiCと0.3%のグラフェンで強化し、攪拌速度400および500 rpm、攪拌時間10および20分の条件下で製造した。これを評価するため、純アルミニウムおよび異なる攪拌条件で強化された複合材の硬度などの機械的特性を分析し、開発されたハイブリッド複合材の特性向上を証明した。さらに、SEM分析を行い、母材中での粒子の均一な分布を検証した。
3. 序論:
複合材料は、異なる物理的・化学的特性を持つ2つ以上の材料の組み合わせであり、個々の構成要素よりも優れた特性と性能を提供する。金属基複合材(MMC)は、金属と他の金属または非金属(セラミックスや有機化合物など)の組み合わせで構成される。本研究で注目するアルミニウム基複合材(AMMC)は、高い引張強度、軽量性、良好な硬度といった望ましい特性を持つため、自動車、航空宇宙、電子機器などの分野で重要性が増している。しかし、AMMCの製造における重要な課題は、強化材を母材中に均一に分散させ、一貫した微細構造を得ることである。特にナノサイズの強化材は凝集しやすく、均一な分散が困難である。本研究の目的は、マイクロサイズのTiCとナノサイズのグラフェン粒子を用いてアルミニウム基ハイブリッド複合材を製造し、攪拌速度と時間を変えることで粒子の均一な分布を達成し、それによって機械的特性がどの程度向上するかを調査することである。
4. 研究の概要:
研究トピックの背景:
本研究は、Al6061合金を母材とし、炭化チタン(TiC)とグラフェンを強化材として用いたハイブリッド・アルミニウム基複合材(AMMC)の開発と特性評価に関するものである。Al6061はその軽量性と加工性の良さから広く利用されているが、耐摩耗性や強度には限界がある。TiCは高硬度、グラフェンは高強度・高熱伝導性を持つため、これらを強化材として添加することで、母材の機械的特性を向上させることが期待される。
先行研究の状況:
これまでの研究で、様々なセラミックス粒子(SiC, Al2O3など)を強化したAMMCが攪拌鋳造法によって製造されてきた。しかし、従来の攪拌鋳造法では、強化材の濡れ性の低さからくる粒子の凝集や、攪拌中に空気を巻き込むことによる気孔(ポロシティ)の発生が問題点として指摘されてきた。これらの欠点を克服するため、近年では2段階攪拌鋳造法が提案されている。この方法は、母材が半凝固状態の時に強化材を添加することで濡れ性を改善し、その後の再溶解・攪拌で気孔を低減するものである。
研究の目的:
本研究の目的は以下の通りである。 1. Al6061/TiC/グラフェン ハイブリッドAMMCを製造する。 2. 2段階攪拌鋳造法におけるプロセスパラメータ(攪拌速度、攪拌時間)を最適化し、強化粒子の均一性を評価する。 3. 開発した複合材の微細構造を分析する。 4. 製造されたAMMCの機械的特性(特に硬度)を調査する。
研究の核心:
本研究の核心は、2段階攪拌鋳造法における攪拌速度(400 rpm, 500 rpm)と攪拌時間(合計10分, 20分)という2つの主要なプロセスパラメータが、Al6061/4%TiC/0.3%グラフェン複合材の微細構造(粒子分散性)と機械的特性(ロックウェル硬度)に与える影響を系統的に調査した点にある。これにより、高性能なハイブリッド複合材を安定して製造するための最適なプロセス条件を特定することを目指した。
5. 研究方法
研究デザイン:
本研究は、モノリシックなAl6061-T6合金を対照群とし、異なるプロセスパラメータ(攪拌速度2水準×攪拌時間2水準)で製造された4種類のハイブリッド複合材サンプルを比較する実験的デザインを採用した。
データ収集・分析方法:
- 材料: 母材としてAl6061-T6、強化材としてマイクロサイズ(~1-3 μm)のTiC粒子(4 wt%)とナノサイズ(~5-10 nm)のグラフェン粒子(0.3 wt%)を使用した。
- 製造プロセス: 2段階攪拌鋳造法を用いた。Al6061を750°Cで溶解後、600°Cの半凝固状態に冷却し、800°Cに予熱した強化材を添加して攪拌。その後、再度750°Cに昇温して攪拌し、鋳造した。
- 微細構造分析: JEOL JSM 6360 走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、各サンプルの表面を観察し、強化粒子の分散状態、凝集、界面剥離、ボイドなどの有無を評価した。
- 硬度測定: FIE RASNE-3型ロックウェル硬さ試験機を使用し、ASTM E18規格に準拠してロックウェルBスケール(HRB)で各サンプルの硬度を測定した。各サンプルについて3つの異なる箇所で測定し、その平均値を算出した。
研究対象と範囲:
本研究の対象は、Al6061を母材とし、TiCとグラフェンで強化したハイブリッド複合材である。研究範囲は、固定された組成(Al6061/4%TiC/0.3%Graphene)において、攪拌速度と攪拌時間という2つの製造パラメータが微細構造と硬度に与える影響の評価に限定される。
6. 主要な結果:
主要な結果:
- SEMによる微細構造解析の結果、攪拌速度500 rpm、攪拌時間20分で製造されたサンプルDが、最も均一なTiC粒子の分散を示した。
- 攪拌速度が400 rpmのサンプルAおよびBでは、粒子の凝集と母材からの剥離(デボンディング)が観察された。
- 攪拌速度500 rpm、攪拌時間10分のサンプルCは、満足のいく分散を示したが、一部に粒子のクラスタリングが見られた。
- サンプルCおよびDでは、微小なボイド(空隙)の存在が確認された。
- ロックウェル硬度は、粒子の分散性が向上するにつれて増加した。モノリシックAl6061-T6の硬度が55.73 HRBであったのに対し、複合材サンプルの硬度は73.67 HRB(サンプルA)から80.73 HRB(サンプルD)の範囲であった。
- 最も高い硬度を示したサンプルDは、母材合金と比較して顕著な特性向上を達成した。
Figure Name List:


- Figure 1 Classification of composites.
- Figure 2 Classification of metal matrix processing [11].
- Figure 3 North America Metal Matrix Composites Market, By End-Use, 2014 – 2024 (USD MILLION) [12].
- Figure 4 Metal Matrix Composite reinforcement types.
- Figure 5 Particle reinforcement [29]
- Figure 6 Fibre reinforcement [29]
- Figure 7 Sheet reinforcement [29]
- Figure 8 Continuous reinforcement [29]
- Figure 9 Steps involved in conventional stir casting process.
- Figure 10 Stir casting process [42]
- Figure 11 Schematic diagram of squeeze casting process [50]
- Figure 12 Rockwell hardness digital machine [54]
- Figure 13 Scanning Electron Microscope [58].
- Figure 14 Overview of steps involved in Two step stir casting process.
- Figure 15 Stir casting machine
- Figure 16 Time temperature curve
- Figure 17 Specimen before and after machining.
- Figure 18 Rockwell hardness indentation [60].
- Figure 19 (a) Rockwell hardness testing machine (b) Specimen under testing.
- Figure 20 Specimen after wire cut.
- Figure 21 Shows the SEM images of (a) sample A (b) sample B (c) sample C (d) sample D
- Figure 22 Rockwell hardness (HRB)
7. 結論:
本研究では、2段階攪拌鋳造法を用いてハイブリッドAMMCを製造し、プロセスパラメータの最適化を行った。SEMによる微細構造解析から、サンプルD(500 rpm、20分)が他のサンプルと比較して最も均一な粒子分散を示した。一方、サンプルA、B、Cでは不均一な分散やデボンディングが観察された。ロックウェル硬さ試験の結果、サンプルDがモノリシックAl6061および他の複合材サンプルよりも最大の硬度増加を示した。硬度は22.4%から30.9%の範囲で増加した。これらの結果は、硬質の強化材の添加と適切な攪拌パラメータが特性向上に寄与したことを証明している。両方の分析から、サンプルDが最良の結果を示した。したがって、攪拌速度と攪拌時間を増加させることが、複合材の機械的および微細構造的特性を向上させ、粒子の均一な分散を促進すると結論付けられる。今後の課題として、TEMによるナノ粒子の観察、さらなるパラメータ最適化によるボイドの低減、摩耗率や引張強度の評価が挙げられる。
8. 参考文献:
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- [9] S. Aktaş and E. A. Diler, "A review on the effects of micro-nano particle size and volume fraction on microstructure and mechanical properties of metal matrix composites manufactured via mechanical alloying," Int. Adv. Res. Eng. J., vol. 2, no. 1, pp. 68–74, 2018.
- [List continues as in the original paper]
専門家Q&A:よくある質問への回答
Q1: なぜ従来の1段階攪拌鋳造法ではなく、2段階攪拌鋳造法が選ばれたのですか?
A1: 2段階攪拌鋳造法は、従来の1段階法が抱える2つの主要な課題、すなわち「強化材の濡れ性の低さ」と「粒子の凝集」を克服するために採用されました。論文で詳述されているように、まず母材を半凝固状態(液体と固体が共存するスラリー状)で攪拌することで、強化材が溶湯に馴染みやすくなり(濡れ性向上)、凝集が抑制されます。その後の再溶解と2回目の攪拌により、プロセス中に巻き込まれたガスを除去し、より均一な分散を促進できるため、高品質な複合材の製造に適しています。
Q2: 最良の結果を示したサンプルDにも微小なボイド(空隙)が見られましたが、その原因と対策は何ですか?
A2: 論文では、これらのボイドの原因として、攪拌プロセス中のガスの巻き込み、または凝固時の弾性変形が考えられると指摘しています。これは複合材の特性に悪影響を与える可能性があります。対策として、論文の結論部では、攪拌条件のさらなる最適化(例えば、不活性ガス雰囲気下での攪拌など)や、鋳造後の適切な機械加工によって、これらのボイドをさらに低減できる可能性を示唆しています。
Q3: この種のプロセスでは一般的に濡れ性向上剤としてマグネシウム(Mg)が使用されますが、この研究で採用されなかったのはなぜですか?
A3: 論文の3.2節で述べられている通り、マグネシウムは優れた濡れ性向上剤である一方で、高温で酸化しやすいという特性があります。本研究のプロセスでは、強化材の予熱温度が800℃、母材の溶解温度が750℃と高温域で行われるため、マグネシウムを添加すると酸化が進行し、意図しない酸化物を形成するリスクがありました。そのため、プロセスの安定性を優先し、マグネシウムは添加されませんでした。
Q4: SEM分析ではナノサイズのグラフェン粒子が観察できなかったとありますが、これは何を意味し、今後の研究にどう繋がりますか?
A4: SEMの分解能では、5~10nmという極めて微細なグラフェン粒子を個別に識別・評価することが困難であったことを意味します。グラフェンが複合材の特性向上にどう寄与しているかを正確に理解するためには、その分散状態を直接観察することが不可欠です。そのため、論文の結論部では今後の研究として、より高分解能な透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた分析が必要であると提言しています。
Q5: 最も性能が良かった複合材(サンプルD)の硬度は、母材のAl6061と比較してどの程度向上しましたか?
A5: データに基づくと、母材であるAl6061-T6の平均ロックウェル硬度が55.73 HRBであったのに対し、最適な攪拌条件(500 rpm、20分)で製造されたサンプルDの硬度は80.73 HRBでした。これは、母材と比較して約45%の硬度向上に相当します。この結果は、TiCとグラフェンの添加、およびそれらを均一に分散させる製造プロセスの有効性を明確に示しています。
結論:より高い品質と生産性への道筋
本研究は、標準的なアルミニウム複合材の性能を飛躍的に向上させるための、具体的かつ実践的な道筋を示しました。強化材の不均一な分散という長年の課題に対し、「2段階攪拌鋳造法」のプロセスパラメータ、特に攪拌速度と時間を最適化することで、微細構造を制御し、結果として硬度を大幅に向上させることに成功しました。このブレークスルーは、より高い耐摩耗性と強度を求める部品開発において、新たな可能性を拓くものです。
CASTMANでは、こうした最新の業界研究を応用し、お客様の生産性と品質の向上を支援することに尽力しています。本稿で議論された課題がお客様の事業目標と合致する場合、これらの原理を実際の部品製造にどのように適用できるか、ぜひ当社のエンジニアリングチームにご相談ください。
著作権情報
このコンテンツは、Nishanth Pasupathy氏による論文「DEVELOPMENT AND TESTING THE PROPERTIES OF HYBRID COMPOSITE USING ALUMINIUM 6061 WITH TiC AND GRAPHENE」に基づく要約および分析です。
出典: https://scholar.uwindsor.ca/major-papers/159
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