本紹介内容は、Archives of Metallurgy and Materialsで発行された「Estimation of Cooling Rates in Suction Casting and Copper-Mould Casting Processes」の研究内容です。

1. 概要:
- タイトル: 吸引鋳造および銅鋳型鋳造プロセスにおける冷却速度の推定 (Estimation of Cooling Rates in Suction Casting and Copper-Mould Casting Processes)
- 著者: T. Kozieł
- 出版年: 2015
- 出版ジャーナル/学会: Archives of Metallurgy and Materials
- キーワード: 吸引鋳造、銅鋳型鋳造、冷却速度、セル状凝固、共晶凝固 (suction casting, copper mould casting, cooling rate, cellular solidification; eutectic solidification)
2. 要約 / 序論
吸引鋳造および銅鋳型鋳造におけるFe-25wt%NiおよびAl-33wt%Cu合金の冷却速度を測定しました。ø2、ø3、ø5 mmのロッドを作製しました。冷却速度は、セル状およびラメラ間隔に基づいて推定されました。円筒状共晶合金の温度プロファイルは、微細構造検査だけでは決定できないことがわかりました。共晶凝固時の凹状凝固前線は、ロッド中心に向かうほどラメラ間隔を減少させました。Fe-25wt%Niのセル状間隔に基づく最小軸方向冷却速度は、ø2およびø3 mmロッドの場合約200 K/s、ø5 mm吸引鋳造ロッドの場合30 K/sでした。銅鋳型鋳造は、わずかに低い値を示しました。
3. 研究背景:
研究テーマの背景:
鋳造中の結晶化を抑制するために必要な臨界冷却速度(Rc)は、合金組成に大きく依存します。吸引鋳造や銅鋳型鋳造などの急速凝固技術は、Rc以上の冷却速度を達成することにより、バルク金属ガラス(BMG)を製造するために重要です。
既存研究の現状:
- 初期の金属ガラス(例: Au-Si)は、非常に高い冷却速度(106〜107 K/s)が必要でした[1]。
- BMGは、より低い冷却速度でガラス形成能(GFA)を向上させることによって開発されました。Pd-Cu-Ni-P系は、1 K/s未満の臨界冷却速度を持っています[2,3]。
- Rcを直接測定することは困難です。熱分析に基づいたさまざまなパラメータが、相対GFAを推測するために使用されます[9]。
- 微細構造の特徴を用いて冷却速度を推定する既存の方法は、Fe-25Ni[14]およびAl-33Cu[12]合金間で矛盾を示していました。
研究の必要性:
微細構造の特徴を用いた冷却速度推定における既存の矛盾を解決する必要があります。この研究は、微細構造に基づく冷却速度決定の適用可能性を調査し、特に吸引鋳造と銅鋳型鋳造を比較し、共晶合金を使用することの限界を強調します。
4. 研究目的と研究課題:
研究目的:
Fe-25wt%NiおよびAl-33wt%Cu合金の吸引鋳造および銅鋳型鋳造中の微細構造を調査することにより、冷却速度を推定します。2つの鋳造方法で得られた冷却速度を比較します。共晶微細構造が冷却速度の推定に適しているか確認します。
主要な研究課題:
- 吸引鋳造および銅鋳型鋳造で製造されたFe-25wt%NiおよびAl-33wt%Cuロッドの表面および軸方向冷却速度はどれくらいですか?
- これらの冷却速度は、2つの鋳造方法間でどのように比較されますか?
- 共晶合金サンプルの微細構造検査により、円筒状サンプルの冷却速度を決定できますか?
5. 研究方法
研究デザイン:
2つの鋳造方法(吸引鋳造と銅鋳型鋳造)と2つの合金系(Fe-25wt%NiとAl-33wt%Cu)を比較する実験的研究です。微細構造解析は、冷却速度を推測するための主要な方法でした。
データ収集方法:
- サンプル準備: Fe-25wt%NiおよびAl-33wt%Cu合金インゴットは、アーク溶解によって合成されました。直径ø2、ø3、ø5 mm、長さ55 mmのロッドは、吸引鋳造(Arc Melter AM, Edmund Bühler GmbH)および銅鋳型鋳造(Melt Spinner HV, Edmund Bühler GmbH)を使用して作製されました。
- 微細構造解析: 微細断面を研削、研磨、エッチングしました。光学顕微鏡(Leica DM LM)および走査型電子顕微鏡(FEI Nova NanoSEM 450, Al-33Cuの場合)を使用して、微細構造の特徴(Fe-25Niのセル状間隔、Al-33Cuのラメラ間隔)を観察および測定しました。測定は、図1に示すように、3つの軸位置(x=5 mm、x=27.5 mm、x=50 mm)でロッド表面付近と中心で行われました。
分析方法:
- Fe-25Niの冷却速度推定: 冷却速度(ε)は、次の関係を用いて推定されました: ε = (B6 / λ)n、ここでλはデンドライトアーム間隔、B6 = 60 µm(K/s)n、n = 0.32[14, 15]。
- Al-33Cuの冷却速度推定: 冷却速度(ε)は、次の関係を用いて推定されました: v = K / λ2(ここでvは凝固前線速度、K = 27.5 · 10-12 cm3s-1、λはラメラ間隔)[12]およびε = (Δhf / cp) · (2v / R)(ここでΔhfは潜熱、cpは比熱、Rは円筒半径)[12]。
研究対象と範囲:
吸引鋳造および銅鋳型鋳造を用いて2、3、5 mm直径のロッドに鋳造されたFe-25wt%NiおよびAl-33wt%Cu合金。
6. 主要な研究結果:
主要な研究結果:
- Fe-25Ni: セル状形態が観察され、放射状の熱流束を示しています。表面冷却速度は1000 K/sより高かったです。軸方向冷却速度は、ø2およびø3 mm吸引鋳造ロッドの場合約200 K/s、ø5 mmロッドの場合約30 K/sでした。銅鋳型鋳造は、わずかに低い軸方向冷却速度を示しました。
- Al-33Cu: ラメラ共晶形態が観察されました。予想に反して、ラメラ間隔はロッド軸で表面に比べて小さく、これはより高い軸方向冷却速度を示しています。
提示されたデータ分析:
- 表1: 吸引鋳造されたFe-25Niロッドのさまざまな直径と位置におけるセル状間隔測定を提供します。
- 表2: 銅鋳型鋳造されたFe-25Niロッドのセル状間隔測定を提供します。
- 図4: 吸引鋳造と銅鋳型鋳造を比較して、Fe-25Niの推定表面(a)および軸方向(b)冷却速度を示します。
- Al-33Cu合金の層間間隔は、共融系における凝固前線の凹面形状のため、予想される冷却速度の傾向と直接的に関連していませんでした。




図リスト:
- Fig. 1. A suction-cast ø3×55 mm Fe-25Ni rod
- Fig. 2. Cross-sectional microstructure of the suction cast ø3 mm Fe-25Ni alloy at x=5 mm: a) near the rod surface, b) in the rod axis (light microscopy, 1000x)
- Fig. 3. Cross-sectional microstructure of the copper-mould cast ø3 mm Fe-25Ni alloy at x=5 mm: a) near the rod surface, b) in the rod axis (light microscopy, 1000x)
- Fig. 4. Estimated a) superficial and b) axial cooling rates based on observed cellular spacing in Fe-25Ni alloy
- Fig. 5. Microstructures of ø3 mm Al-33Cu rod suction-cast at x = 27.5 mm: a) close to the rod surface, b) in the rod axis (SEM, 30000x). Inset shows a schematic illustration of lamellar elimination caused by a concave perturbation of the eutectic front [17]
- Fig. 6. Estimated superficial and axial cooling rates in Al-33wt%Cu (ø3×55 mm) suction cast alloy
7. 結論:
主要な結果の要約:
- Fe-25Niでは、表面冷却速度は軸方向冷却速度よりも大幅に高く、支配的な放射状熱伝達を確認します。
- 吸引鋳造は、一般的にFe-25Niにおいて銅鋳型鋳造よりもわずかに高い冷却速度をもたらしました。
- 共晶合金(Al-33Cuなど)は、ラメラ間隔に対する凹面凝固前線の影響により、円筒状サンプルの冷却速度または温度プロファイルを推定するのに適していません。
研究の学術的意義:
この研究は、鋳造プロセスにおける冷却速度を推測するために共晶微細構造を使用することの限界を強調しています。以前の研究で観察された矛盾を明確にし、円筒状サンプルにおける冷却速度の変化に関するより正確な理解を提供します。
実際的な意味:
- BMG合成のためには、サンプル全体の最小冷却速度を理解することが重要です。この研究は、必要な冷却速度を達成する方法に関する洞察を提供します。
- この結果は、微細構造に基づいて冷却速度を推定する際に、合金系と分析方法を慎重に選択する必要があることを強調しています。
研究の限界と今後の研究分野:
- 冷却速度の推定に使用された方程式は、実際の鋳造プロセスとは異なる一方向凝固実験から導き出されました。
- この研究では、2つの合金系のみを検討しました。今後の研究では、他の合金組成を調査することができます。
- 金型と金属の界面抵抗の影響は定量化されていません。
8. 参考文献:
- [1] W. Klement, R.H. Willens, P. Duwez, Non-crystalline structure in solidified gold-silicon alloys, Nature 187, 869-870 (1960).
- [2] A. Nishiyama, A. Inoue, Stability and nucleation behavior of glass-forming Pd-Cu-Ni-P alloy with a critical cooling rate of 0.067 K/s, Intermetallics 10, 1141-1147 (2002).
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- [4] J. Gondro, J. Zbroszczyk, W. Ciurzyńska, J. Olszewski, M. Nabiałek, K. Sobczyk, J. Świerczek, A. Łukiewska, Structure and Soft Magnetic Properties of Bulk Amporphous Fe0.61Co0.10Zr0.025W0.02Hf0.025Ti0.02B0.20)96Y4 Alloy, Arch. Metall. Mater. 55, 85-90 (2010).
- [5] M. Nabiałek, J. Zbroszczyk, W. Ciurzyńska, J. Olszewski, S. Lesz, P. Brągiel, J. Gondro, K. Sobczyk, A. Łukiewska, A. Świerczek, Microstructure, Some Magnetic and Mechanical Properties of Amorphous Fe60Co10Zr2.5Hf2.519W2Y2B21 Plates, Arch. Metall. Mater. 55, 195-203 (2010).
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9. 著作権:
- この資料は、「T. Kozieł」の論文「Estimation of Cooling Rates in Suction Casting and Copper-Mould Casting Processes」に基づいています。
- 論文出典: DOI: 10.1515/amm-2015-0204
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