ピストン鋳造欠陥の根本原因を解明:密度指数がAl-Si合金の品質を左右する理由

Evaluation of the Technological Properties of the Al-Si Eutectic Alloy Based on Density Index Test

この技術概要は、[M. Starczewski, A.J. Dolata, M. Dyzia]による学術論文「Evaluation of the Technological Properties of the Al-Si Eutectic Alloy Based on Density Index Test」に基づいています。同論文は[ARCHIVES of FOUNDRY ENGINEERING] ([2025])に掲載されたものです。

Fig. 1. View of the AlSi12CuNiMg combustion engine piston
made by PMC
Fig. 1. View of the AlSi12CuNiMg combustion engine piston made by PMC

キーワード

  • 主要キーワード: 密度指数
  • 副次キーワード: Al-Si合金, ピストン, 凝固, 湯流れ性, 鋳造欠陥, AlSi12CuNiMg

エグゼクティブサマリー

  • 課題: Al-Si合金製ピストン鋳造において、原因不明の欠陥率の増加により、生産性と品質が著しく低下していました。
  • 手法: 欠陥率の高い溶湯と低い溶湯の2種類のAlSi12CuNiMg合金を用い、熱分析、湯流れ性試験、密度指数試験の3つの手法で技術的特性を比較評価しました。
  • 重要な発見: 鋳造欠陥の増加は、湯流れ性の問題ではなく、過度に低い密度指数が原因である可能性が示唆されました。これは、特に溶湯を保持した後に収縮巣の発生を助長していました。
  • 結論: 複雑な形状を持つAl-Si合金鋳造において、欠陥を防止するためには、単にガス含有量を最小化するだけでなく、密度指数を最適なレベルで監視・管理することが極めて重要です。

課題:なぜこの研究がHPDC専門家にとって重要なのか

自動車産業では、GHG(温室効果ガス)排出基準の厳格化に伴い、軽量なアルミニウム-シリコン(Al-Si)合金の需要が絶えず増加しています。しかし、ピストンのような複雑で高品質な部品の製造現場では、鋳造欠陥による不良品の発生が一般的な問題となっています。特に、化学成分が規格内であっても、ロットによって欠陥率が大きく変動することがあり、その根本原因の特定は困難を極めます。

この研究は、ポーランドのZłotecki Sp. z o.o.社のエンジンピストン製造ラインで実際に発生した、欠陥率が5%から30-40%へと急増した問題に取り組んでいます。従来の化学成分分析だけでは品質を予測できないという課題に対し、より深い技術的特性の評価を通じて、鋳造品質に影響を与える真の要因を明らかにすることを目的としています。これは、生産廃棄物を削減し、持続可能な開発目標を達成しようとするすべての鋳造工場にとって、極めて重要な知見を提供します。

アプローチ:方法論の解明

本研究では、鋳造欠陥率の増加の原因を特定するため、工業生産で使用されている2種類のAlSi12CuNiMg合金(共晶に近いシリコン含有量約12%)を対象に、体系的な比較試験を実施しました。

  • 材料:
    • 溶湯(I): 鋳造欠陥率が30-40%と高い材料。
    • 溶湯(II): 進行中の生産で使用され、欠陥率が5%と低い標準的な材料。
  • 試験プロセス: サンプルは、各溶湯について以下の3つの時点で採取されました。
    1. 溶解後
    2. アルゴンガスによる精錬処理後
    3. 精錬後、1.5時間保持した後(実際のピストン鋳造プロセスでの最大保持時間を模擬)

手法1: 熱分析 (TA) 標準的なクイックカップセラミックるつぼとK型熱電対を使用し、合金の凝固挙動を評価しました。これにより、凝固開始温度(tpk)と終了温度(tkk)を特定しました。

手法2: 湯流れ性試験 (FT) Metal Health® Systemスタンドを使用し、合金の鋳型充填能力を評価しました。断面積の異なる5本のアームを持つ試験鋳物を製作し、流れたロッドの全長を湯流れ性の指標としました。

手法3: 密度指数 (DI) 試験 MK社製の3VT基本真空鋳造装置を使用し、溶湯のガス含有レベルを評価しました。大気圧下(988 mbar)と減圧下(80 mbar)で凝固させたサンプルの密度差から密度指数を算出しました。この指標は、ガス気孔の発生傾向を直接的に示します。

重要な発見:主要な調査結果とデータ

本研究から得られた最も重要な発見は、鋳造欠陥の根本原因が、一般的に考えられている湯流れ性ではなく、溶湯のガス含有レベル、特に「密度指数」にあることを突き止めた点です。

発見1:密度指数が欠陥率の鍵を握る

密度指数(DI)の測定結果は、2つの溶湯間で顕著な違いを示しました。精錬処理後、両溶湯のDIは約0.4%という低い値に達しました。しかし、1.5時間保持した後、その挙動は大きく異なりました。

  • 溶湯(I)(高欠陥率): DIは0.57%へとわずかに増加するに留まりました。
  • 溶湯(II)(低欠陥率): DIは1.58%へと急激に増加しました。

これは、溶湯(II)が水素を再吸収しやすい傾向があることを示唆しています。論文の結論では、溶湯(I)の過度に低いDI値が、ガス気孔ではなく、鋳型壁近傍での収縮巣の形成を助長し、欠陥率の増加につながった可能性があると指摘しています。これは、単に脱ガスを徹底するだけでは不十分であり、「最適な」ガス準位が存在することを示唆する重要な発見です。

図17に示されるように、保持後の溶湯(I)と溶湯(II)の密度指数には約3倍の差が見られました。

発見2:湯流れ性は欠陥の直接的な原因ではなかった

湯流れ性試験では、特に肉厚が薄いチャネル(2mm、3mm)で両溶湯間に差異が見られましたが、論文では、これがピストン鋳造の欠陥の主因ではないと結論付けています。実際に製造されるピストンの肉厚は5mmを超えており、試験で観察された湯流れ性の差は、実際の製品品質に直接的な影響を与えるレベルではありませんでした。この結果は、欠陥原因を調査する際に、複数の要因を総合的に評価し、実際の製品仕様と関連付けて判断することの重要性を示しています。

研究開発および操業への実践的な示唆

  • プロセスエンジニア向け: この研究は、脱ガスを最大限に行うことが必ずしも最適解ではない可能性を示唆しています。過度に低い密度指数は収縮巣を誘発する恐れがあるため、目標とする「最適な密度指数」を設定し、場合によっては二次的なガス処理(例えばアルゴンと水素の混合ガスを使用)によって能動的にDI値を制御するプロセス開発が有効かもしれません。
  • 品質管理チーム向け: 化学成分分析や湯流れ性試験だけでは、鋳造品質を保証するには不十分です。論文の図17が示すように、密度指数試験は、鋳造前に気孔関連の欠陥リスクを予測するための、強力な工程内管理ツールとなり得ます。定期的なDI測定を品質管理基準に組み込むことを検討すべきです。
  • 設計エンジニア向け: この研究結果は、肉厚が大きく変化する鋳物設計が、不適切な密度指数レベルによって引き起こされる欠陥に対して特に脆弱であることを示しています。凝固時の体積収縮を考慮し、適切な押湯設計や方案を検討する際に、目標とする溶湯の密度指数を考慮に入れることが、初期設計段階での品質向上に繋がります。

論文詳細


Evaluation of the Technological Properties of the Al-Si Eutectic Alloy Based on Density Index Test

1. 概要:

  • タイトル: Evaluation of the Technological Properties of the Al-Si Eutectic Alloy Based on Density Index Test
  • 著者: M. Starczewski, A.J. Dolata, M. Dyzia
  • 発行年: 2025
  • 掲載誌/学会: ARCHIVES of FOUNDRY ENGINEERING
  • キーワード: Al-Si alloys, Piston, Solidification, Fluidity, Density index

2. 要旨:

アルミニウム-シリコン合金は、軽量かつ比較的高強度であることなど多くの利点から、産業界で広く使用されている。これらの軽工学材料の消費量は、特に自動車産業において、新たな温室効果ガス(GHG)排出基準により、絶えず増加している。 鋳造業における持続可能な開発戦略は、生産プロセス中に発生する廃棄物や汚染の量を削減することに関連している。ひいては、生産不足や廃棄物の数を減らすためには、高品質なAl-Si鋳物の生産が必要であり、そのためには溶湯の品質に影響を与える技術的パラメータ(純度レベルやガス化度など)の適切な選択と監視が求められる。 AlSi12CuNiMg(AlSi12)合金の技術的特性を評価するために実施された研究の主な目的は、Złotecki Sp. z o.o.社の生産プロセスにおけるピストン鋳物の欠陥率増加の原因を特定することであった。試験は、2つの異なる供給元から入手した、ピストン鋳造に使用される共晶に近いシリコン含有量(約12%)を持つ2種類のAl-Si合金を用いて実施された。 試験されたAlSi12合金の技術的特性を評価するために、熱分析、湯流れ性試験、ガス化度測定のための密度指数という3つの測定方法が用いられた。 結果の分析に基づき、過度に低い密度指数レベルが、内燃機関やコンプレッサー用のピストンの生産において観察された鋳造欠陥率の増加の原因である可能性があり、特に肉厚が大きく変化する鋳物においてその傾向が顕著であると結論付けられた。

3. 序論:

アルミニウム-シリコン(Al-Si)合金は、軽量性、良好な強度対重量比、高い耐食性、良好な延性、高い電気・熱伝導性により、鋳造現場で広く使用されている。リサイクル性もAl-Si合金の大きな特徴の一つであり、その製品は最も頻繁にリサイクルされている。さらに、Al-Si合金製の鋳物は機械加工が容易であり、最終製品のコストが比較的低くなる。この観点から、航空宇宙、防衛、機械、自動車産業で多くの異なる用途が見出されている。 Al-Si合金製の金型鋳物は、エンジンブロック、シリンダーライナー、カムシャフト、ホイール、エアコンプレッサーや内燃機関用のさまざまな種類のピストンなど、幅広い製品の製造に使用されている。

4. 研究の概要:

研究トピックの背景:

本研究は、自動車産業で広く使用されるAl-Si共晶合金(AlSi12CuNiMg)の鋳造プロセスにおける品質管理に焦点を当てている。特に、ピストンのような複雑な形状を持つ高品質部品の生産において、鋳造欠陥が大きな問題となっており、その原因究明が持続可能な生産とコスト削減のために不可欠である。

従来の研究の状況:

従来、鋳造欠陥は、収縮巣やガス気孔に起因するとされ、その発生は溶湯中の水素量、化学組成、凝固条件などに依存すると考えられてきた。また、Dispinarらの研究では、気孔の発生と合金中の酸化物介在物の存在との相関関係が示されている。しかし、化学組成が規格を満たしていても欠陥率が変動する現象については、十分に解明されていなかった。

研究の目的:

本研究の主目的は、Złotecki Sp. z o.o.社のピストン製造ラインで観察された鋳造欠陥率の急激な増加の根本原因を特定することである。そのために、欠陥率が異なる2つの供給元からのAl-Si合金の技術的特性(凝固挙動、湯流れ性、ガス含有レベル)を体系的に評価し、欠陥発生との相関関係を明らかにすることを目指した。

中心的な研究:

研究の中心は、欠陥率の高い合金(溶湯I)と低い合金(溶湯II)の比較分析である。両合金に対し、①溶解後、②精錬後、③1.5時間保持後、の3つの時点でサンプルを採取し、熱分析(TA)、湯流れ性試験(FT)、密度指数(DI)試験を実施した。これにより、各技術的特性がプロセス中にどのように変化し、2つの合金間でどのような違いがあるかを詳細に調査した。

5. 研究方法論

研究設計:

本研究は、工業生産現場で発生した問題を解決するための比較実験研究として設計された。欠陥率が明確に異なる2種類の市販AlSi12CuNiMg合金を対象とし、制御された条件下で溶解、精錬、保持を行い、複数の技術的特性を測定・比較した。

データ収集・分析方法:

  • 熱分析(TA): K型熱電対を備えたQuick CupセラミックるつぼとHBM Octopusデータロガーを使用し、10Hzの周波数で温度データを記録した。
  • 湯流れ性試験(FT): Metal Health® Systemスタンドを使用し、温度300°Cに制御された金型に鋳込み、鋳造されたロッドの長さを測定した。
  • 密度指数(DI): MK社製の3VT真空鋳造装置を使用し、大気圧下と減圧下(80 mbar)で凝固させたサンプルの密度を静水圧天秤(MK 3000)で測定し、所定の式(1)に基づいてDIを算出した。
  • データ分析: 収集されたデータはCatman 3.0ソフトウェアおよびExcelスプレッドシートを用いて処理・分析された。

研究対象と範囲:

研究対象は、PN-EN 1676:2020-09規格に準拠したAlSi12CuNiMg合金である。評価された技術的特性は、凝固特性、湯流れ性、および密度指数によって評価されるガス含有レベルである。研究範囲は、実験室規模での合金の準備から特性評価までとし、工業生産における欠陥発生との関連性を考察することに限定される。

6. 主要な結果:

主要な結果:

  • 熱分析: 凝固開始温度(tpk)は両合金でほぼ同じ(約566°C)であったが、凝固終了温度(tkk)は溶湯(I)が493°C、溶湯(II)が約501°Cとわずかな差が見られた。
  • 湯流れ性: 湯流れ性には若干の差が観察されたが、実際のピストン鋳物の肉厚(5mm以上)を考慮すると、観察された欠陥の原因とは考えにくいと結論付けられた。
  • 密度指数(DI): 最も顕著な差が観察された。精錬後のDI値は両合金ともに約0.4%と低かった。しかし、1.5時間保持した後、欠陥率の高い溶湯(I)のDIは0.57%に微増したのに対し、欠陥率の低い溶湯(II)のDIは1.58%へと大幅に増加した。この結果は、溶湯(I)の過度に低いDIレベルが、収縮巣に関連する欠陥の増加に寄与した可能性を示唆している。

Figure Name List:

  • Fig. 1. View of the AlSi12CuNiMg combustion engine piston made by PMC
  • Fig. 2. Casting defects revealed after machining in important piston parts: combustion chamber (a), piston head (b), piston pin hole (c), piston skirt (d) [unpublished own research]
  • Fig. 3. Microstructure of the representative AlSil2CuNiMg piston obtained by PMC: (a) the dendritic structure (light grey) and eutectic Si particles (dark grey) are shown along with identified porosities (black) and (b) magnesium (Mg) oxide inclusion cluster [unpublished own research]
  • Fig. 4. Filter mesh position: (a) casting mould, (b) casting
  • Fig. 5. Casting furnaces used in the study
  • Fig. 6. Gas refining device (a) and gas flow rotor (b)
  • Fig. 7. Stand used for ST (a) and quick cup after test (b).
  • Fig. 8. Metal Health® System stand used for FT
  • Fig. 9. Casting of a fluidity sample (a), drawing of the cross-section of the bars (b)
  • Fig. 10. Stand used for DI
  • Fig.11. Hydrostatic balance MK 300
  • Fig. 12. Solidification: Melt (I) i Melt (II), after melting
  • Fig. 13. Fluidity index
  • Fig. 14. Fluidity characteristic (AM – after melting, AR - after refining, AH - after holding)
  • Fig. 15. Macrostructure of samples prepared in atmosphere
  • Fig. 16. Macrostructure of samples prepared in 80 mbar vacuum
  • Fig. 17. Density index results
Fig. 2. Casting defects revealed after machining in important piston parts: combustion chamber (a), piston head (b), piston pin hole (c), piston skirt (d) [unpublished own research]
Fig. 2. Casting defects revealed after machining in important piston parts: combustion chamber (a), piston head (b), piston pin hole (c), piston skirt (d) [unpublished own research]
Fig. 3. Microstructure of the representative AlSi12CuNiMg piston obtained by PMC: (a) the dendritic structure (light grey) and eutectic Si particles (dark grey) are shown along with identified porosities (black) and (b) magnesium (Mg) oxide inclusion cluster [unpublished own research]
Fig. 3. Microstructure of the representative AlSi12CuNiMg piston obtained by PMC: (a) the dendritic structure (light grey) and eutectic Si particles (dark grey) are shown along with identified porosities (black) and (b) magnesium (Mg) oxide inclusion cluster [unpublished own research]
Fig. 4. Filter mesh position: (a) casting mould, (b) casting
Fig. 4. Filter mesh position: (a) casting mould, (b) casting
Fig. 14. Fluidity characteristic (AM – after melting, AR – after refining, AH – after holding)
Fig. 14. Fluidity characteristic (AM – after melting, AR – after refining, AH – after holding)
Fig. 16. Macrostructure of samples prepared in 80 mbar vacuum
Fig. 16. Macrostructure of samples prepared in 80 mbar vacuum

7. 結論:

得られた結果は、合金の化学組成のわずかな変化でさえ、その技術的特性や鋳物の気孔率に影響を与えうることを示している。試験された2つの合金は、組成がPN-EN 1676:2020-09規格に準拠していたにもかかわらず、再溶解状態および精錬後1.5時間730°Cで保持した後の両方で異なる特性を示した。 湯流れ特性で観察された差異は、肉厚3mmおよび2mmのチャネル(図9b R4およびR5)でのキャビティ充填に見られたが、溶湯(I)から作られたピストン鋳物で観察された欠陥は、合金の湯流れ性とは関連がないと結論付けられる。実際、製造されたピストンでは、鋳物の肉厚は5mmを超えている。 ピストン鋳造プロセス前の合金の特性を評価するためには、密度指数(DI)の決定が、ガス気孔の形成に影響を与える脱ガス度を評価するための適切な方法である。本研究は、溶解後の状態で、試験された合金がその密度指数に著しい差を示したことを実証している。アルゴンによるガス精錬後、両合金の密度指数は約0.4%に減少した。しかし、1.5時間の焼なまし後、合金間の差異が再び現れた。溶湯(I)合金の密度指数は精錬後0.40%であり、焼なまし後に0.57%に増加した。 文献データ[23, 24]によると、低いH2濃度、ひいては低い密度指数では、合金の凝固中に鋳型壁に隣接する領域で収縮巣に関連する空隙が形成される可能性がある。したがって、溶湯(I)合金の比較的低い密度指数が、鋳造シリーズにおける欠陥数の増加に寄与した可能性がある。これらの欠陥は、ガス気孔ではなく収縮巣に関連していた。 今後の研究では、安定かつ所定の値を持つ合金を準備するプロセスを開発することにより、最適な密度指数(DI)レベルを決定することに焦点を当てる。適切な密度指数値を達成することは、二次的な合金ガス処理を通じて行われる可能性が高い。第一段階では、ガス精錬によって合金から水素を除去し、低い初期密度指数レベルを得る。続いて、同じ精錬装置を使用して、低濃度のアルゴンと水素の混合物を合金に導入する。ガス混合物のパラメータとプロセス条件、および最適な値(DI)は実験的に決定される。

8. 参考文献:

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専門家Q&A:あなたの疑問にお答えします

Q1: なぜこの研究では2つの異なる供給元からの合金が選ばれたのですか?

A1: この研究は、実際の連続生産ラインで発生した問題に対処するために行われました。一方の供給元からの合金(溶湯I)を使用した際に欠陥率が30-40%に急増し、もう一方の合金(溶湯II)では欠陥率が5%に留まっていたためです。この2つの合金を比較することで、化学組成以外のどの技術的特性が欠陥率の差を生み出しているのかを特定することが目的でした。

Q2: 論文では湯流れ性は問題ではないと結論付けていますが、なぜ湯流れ性試験を実施したのですか?

A2: 湯流れ性は合金の重要な技術的特性の一つであり、総合的な評価を行うためには不可欠な試験でした。欠陥の原因として考えられるすべての要因を体系的に調査するプロセスの一環として実施されました。湯流れ性が原因ではないことを明確にすることで、他の要因、すなわち密度指数に焦点を絞り、真の原因を特定することが可能になりました。

Q3: 精錬後、両溶湯の密度指数はほぼ同じ約0.4%でした。なぜその後の挙動が大きく異なったのですか?

A3: 論文によれば、1.5時間の保持期間中に、溶湯(II)は水素を再吸収する顕著な傾向を示し、密度指数が1.58%まで上昇しました。一方、溶湯(I)は0.57%への微増に留まりました。この挙動の違いは、合金に含まれる微量元素や清浄度の違いなど、合金固有の性質に起因する可能性があります。この再ガス化の傾向の違いが、最終的な鋳造品質に影響を与えたと考えられます。

Q4: なぜ「低い」密度指数が欠陥を引き起こすのですか?

A4: 論文は、文献[23, 24]を引用し、そのメカニズムを説明しています。溶湯中の水素濃度が低い場合(すなわち密度指数が低い場合)、凝固時の体積収縮を補償するためのガス圧が不足します。その結果、ガス気孔ではなく、特に鋳型壁近傍の凝固が遅れる部分で、真空に近い状態の空隙、つまり収縮巣が形成されやすくなります。本研究で観察された欠陥は、この収縮巣に起因するものと推測されています。

Q5: この研究で提案されている実用的な次のステップは何ですか?

A5: 次のステップは、単に可能な限り低い密度指数を目指すのではなく、「最適な」密度指数レベルを特定することです。具体的には、まずガス精錬によって溶湯を徹底的に脱ガスし、低い初期密度指数を達成します。その後、同じ精錬装置を用いて、アルゴンと水素の混合ガスを制御しながら導入し、安定した所定の密度指数値に調整するプロセスの開発が提案されています。

Q6: 研究で使用された具体的な精錬プロセスについて教えてください。

A6: 溶解プロセス中、るつぼごとに50gの粒状精錬剤Ecosal AL 113.Mが添加されました。その後、URO-200 XR装置とXDR OX 140.70ローター(Foseco製)を用いてガス精錬が適用されました。精錬ガスにはアルゴン5.0が使用され、流量は10 dm³/min、ローターの回転数は350 rpmでした。合計の精錬時間は10分間でした。

結論:より高い品質と生産性への道を開く

本研究は、Al-Si合金製ピストンの鋳造における複雑な品質問題を解決するための重要な洞察を提供しました。根本的な問題は、湯流れ性や化学組成の逸脱ではなく、密度指数によって示される溶湯のガス含有レベルの管理にあったことが明らかになりました。特に、過度に低い密度指数が収縮巣を誘発し、欠陥率を増加させる可能性があるという発見は、従来の「脱ガスは徹底的に行うべき」という常識に一石を投じるものです。

この知見は、研究開発および生産現場において、より高度なプロセス管理の必要性を示唆しています。密度指数を重要な工程管理パラメータとして導入し、目標値を設定・維持することで、欠陥を未然に防ぎ、生産性と品質を飛躍的に向上させることが可能です。

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このコンテンツは、[M. Starczewski, A.J. Dolata, M. Dyzia]による論文「Evaluation of the Technological Properties of the Al-Si Eutectic Alloy Based on Density Index Test」に基づく要約および分析です。

出典: https://doi.org/10.24425/afe.2025.155349

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