この紹介論文は、Copper Development Association Inc.が発行した["The die-cast copper motor rotor – a new copper market opportunity"]論文の研究内容をまとめたものです。

1. 概要:
- タイトル: The die-cast copper motor rotor – a new copper market opportunity (ダイカスト銅モーターローター – 新しい銅市場の機会)
- 著者: D. T. Peters, J. G. Cowie, E. F. Brush, Jr.
- 発行年: 提供されたテキストには明記されていません。
- 発行ジャーナル/学会: 明確には明記されていませんが、著者はCopper Development Association Inc.と関連があります。
- キーワード: ダイカスト銅(die-cast copper), モーターローター(motor rotor), かご形巻線(squirrel cage), 金型寿命(die life), 熱疲労(thermal fatigue), ニッケル基合金(nickel-base alloy), モーター効率(motor efficiency), エネルギー損失低減(energy loss reduction).
2. 要旨
誘導電動機の製造業者は、ローターのかご形巻線(squirrel cage)のダイカストアルミニウムを銅に置き換えることで、モーター損失を大幅に削減し、電気エネルギー効率を向上させることができることを長い間知っていました。アルミニウムはダイカストが容易ですが、銅は融点が高いためダイカストがはるかに難しく、早期の金型故障につながります。この研究は、金型寿命の問題に取り組んでいます。高温金型材料の候補が調査されました。周期的な熱および応力勾配のコンピューターシミュレーションにより、「ヒートチェック(heat checking)」破壊メカニズムに関する洞察が得られました。約625℃に予熱および作動されるニッケル基合金金型システムが開発されました。ダイカスト銅モーターローターは、モーター損失が15〜20%減少し、動作温度が低下したモーターテスト結果を示しています。
3. 研究背景:
研究テーマの背景:
- 誘導電動機は、通常、ローターのかご形巻線にダイカストアルミニウムを使用しています。
- アルミニウムを銅に置き換えることで、モーター損失を大幅に削減し、効率を向上させることができます。
- 銅の高い融点は、ダイカストを困難にし、早期の金型故障を引き起こします。
以前の研究の現状:
- 銅モーターローター開発に関する簡単な報告がCopper 99 (1)で発表されました。
- タングステン合金(Anviloy)が銅のダイカストに適していることがわかりました。
- 特定のニッケル基合金が有望であることが示されました。
- 熱およびひずみ勾配を最小限に抑えるために、高い金型予熱および動作温度が導入されました。
研究の必要性:
- 既存の銅ローター(大型または特殊用途モーター用)の製造方法は、コストがかかり、速度が遅く、大量生産には適していません。
- 銅のダイカストが望ましいですが、銅の高い融点による金型寿命が短いことが課題です。
- 効率が向上し、動作温度が低下したモーターを提供するために、銅のダイカスト問題を解決する必要性があります。
4. 研究目的と研究課題:
研究目的:
- 電気用銅のダイカストにおける金型寿命の問題に対処すること。
- ダイカスト銅モーターローターを大量生産するための金型システムとプロセスを開発すること。
主要な研究:
- 高温金型材料の調査。
- コンピューターシミュレーションによる「ヒートチェック」破壊メカニズムの理解。
- 金型インサート加熱および絶縁システムの開発。
- ダイカスト銅ローターを使用したモーター性能評価。
5. 研究方法
- 研究デザイン: 実験および計算。
- データ収集:
- 高温金型材料候補の調査。
- 金型の周期的な熱および応力勾配のコンピューターシミュレーション(3-D)。
- H-13鋼、TZM、Anviloy、およびニッケル基合金(INCONEL 617, 625, 718, 754, 601)を使用した金型材料評価テスト。
- 銅テスト部品およびモーターローターの圧⼒ダイカスト試験。
- モーター性能テスト(IEEE規格112、テスト方法BおよびIEC 34-2法による動力計効率テスト)。
- 分析:
- 金型インサートの温度プロファイルと応力分布の分析。
- ヒートチェック、亀裂、および浸食に基づく金型材料の性能評価。
- 銅およびアルミニウムローター間のモーター効率と損失の比較。
- ダイカスト銅ローターの金属学的検査。
- 研究範囲: 銅モーターローター用金型材料および鋳造プロセスの開発とテスト、モーター性能評価。
6. 主要な研究結果:
主要な研究結果と提示されたデータ分析:
- コンピューターシミュレーションは、高い金型予熱と動作温度を使用することで熱疲労破壊を最小限に抑える方法に関する洞察を提供しました。
- 約625℃で予熱および作動されるニッケル基合金(INCONEL合金617および625)金型システムは、従来作動される金型鋼と比較して金型寿命を大幅に延長しました。
- 高い動作温度を維持するために、金型インサート加熱および絶縁システム(図3)が開発されました。
- ダイカスト銅ローターは、モーター損失が15〜20%減少し、動作温度が低下しました。
- ローター抵抗損失が40%減少しました(表I)。
- 漂遊負荷損失が23%減少しました(表I)。
- 風損および摩擦損失が37%減少しました(表I)。
- モーター全体の効率が少なくとも1.2%ポイント増加しました(表II)。
- モーターの温度上昇が4.5℃減少しました(表II)。
- 金属学的検査により、銅導体棒と鉄心積層間の相互作用は最小限であることが確認されました。



図表名リスト:
- 図1 - 6つの機械加工されたインサートで構成される金型材料テスト金型。
- 図2 - 1200℃の銅で充填した瞬間のテスト鋳物に「ペイント」されたH-13金型表面を示す熱モデリング出力。
- 図3 - この研究の過程で開発された金型材料テスト設定における電気抵抗ヒーターと断熱材の配置を示す概略図。
- 図4 – ダイカスト銅ローターの断面写真
7. 結論:
主要な調査結果の要約:
- 600〜650℃で動作するINCONEL合金617および625は、銅ローター生産における長い金型寿命のための有望な金型材料です。
- 熱疲労を最小限に抑えて金型寿命を延ばすには、高い金型動作温度が重要です。
- ダイカスト銅ローターは、モーター効率を大幅に向上させ、損失を低減します。
- 銅ローターのダイカストプロセスは実用的で再現性があります。
- この研究は、モーターローター用の銅ダイカストの課題を解決し、大量生産のための実行可能な方法を実証しました。
- この調査結果は、モーター効率の向上、エネルギー消費の削減、モーター寿命の延長に重要な意味を持ちます。
- 実用的な金型加熱および絶縁システムの開発は、重要な貢献です。
- この研究は、銅の大きな新規市場の可能性を裏付けています。
8. 参考文献:
- [1] D.T. Peters and J.G. Cowie, “The Copper Motor Rotor and Plastic Injection Molds – New Developments Relying on Copper's Conductivity”, Copper 99- Cobre 99, G.A. Eltringham, N.L. Piret and M. Sahoo, Eds., The Minerals, Metals & Materials Society, 1999, 313-325.
- [2] U.S. Department of Energy, DOE/CS-0147, “Classification and Evaluation of Electric Motors and Pumps”, February 1980.
- [3] E.A. Herman, J.F. Wallace, A.A. Machonis, Copper Alloy Pressure Die Casting, International Copper Research Association, New York, 1975, p.52.
- [4] D.T. Peters, J.G. Cowie, E.F. Brush, Jr. and S.P. Midson, “Use of High Temperature Die Materials and Hot Dies for High Pressure Die casting Pure Copper and Copper Alloys",
- S. Lie, and C. Di Pietro, “Copper Die-cast Rotor Efficiency Improvement and Economic Consideration”, IEEE Trans. Energy Conservation, Vol. 10, No. 3, 1995, 419-424.
- M. Poloujadoff, J.C. Mippo, and M. Nurdin, “Some Economical Comparisons
Between Aluminum and Copper Squirrel Cages”, IEEE Trans. Energy
Conservation, Vol. 10, No. 3, 1995, 415-418. - Private communication with manufacturer.
9. 著作権:
- This material is a paper by "[D.T. Peters, J.G. Cowie, E.F. Brush, Jr.]": Based on "[The die-cast copper motor rotor – a new copper market opportunity]".
- Source of paper: [DOI URL - Note: The DOI URL is not provided in the original document]
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