5 Cs of Investment Casting Foundries in Rajkot Cluster – An Industrial Survey
この技術概要は、A.V. Sata氏およびN.R. Maheta氏によって執筆され、ARCHIVES of FOUNDRY ENGINEERING(2021年)に掲載された学術論文「5 Cs of Investment Casting Foundries in Rajkot Cluster – An Industrial Survey」に基づいています。
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キーワード
- 主要キーワード: インベストメント鋳造
- 副次キーワード: ラージコートクラスター, 鋳造所調査, 生産能力, 品質管理, 鋳造欠陥, ベンチマーキング
エグゼクティブサマリー
- 課題: インド最大の産業クラスターであるラージコートのインベストメント鋳造所は、グローバル市場で競争し、バリューチェーンを向上させるために、自らの能力と課題を体系的に理解する必要がありました。
- 手法: ラージコートクラスターに存在する175のインベストメント鋳造所のうち約25%(42社)を対象に、5つのC(生産能力、能力、専門性、懸念事項、課題)に焦点を当てた詳細なアンケート調査が実施されました。
- 主要なブレークスルー: この調査により、クラスターの明確なベンチマークが確立されました。平均設備稼働率は71%、平均総合不良率は4%であり、主な鋳造欠陥は収縮巣であり、不良が最も発生する工程はシェル製作であることが特定されました。
- 結論: ラージコートの鋳造所が競争力を高めるためには、余剰生産能力を航空宇宙や医療などの高付加価値製品の生産に活用し、シミュレーションやデータ分析などの先端技術を導入し、シェル製作工程の管理を強化することが不可欠です。
課題:なぜこの研究が鋳造専門家にとって重要なのか
インベストメント鋳造は、航空宇宙から自動車、医療分野に至るまで、複雑で高精度な部品を製造するための基幹技術です。インドは世界のトップ5に入る生産国であり、その中でもラージコート市は国内のインベストメント鋳造所の約30%が集積する最大のクラスターです。しかし、多くの鋳造所がポンプ、バルブ、自動車部品といった比較的低付加価値の分野に集中しているのが現状です。
グローバルな競争が激化する中で、この巨大な産業クラスターが次のレベルへ成長するためには、個々の鋳造所の経験則だけでなく、クラスター全体としての生産能力、技術レベル、品質上の課題、そして将来の成長機会を客観的に把握する必要がありました。本研究は、この不可欠な「自己診断」を実施し、業界全体の改善とベンチマーキングのための具体的なデータを提供することを目的としています。
アプローチ:調査方法の解明
本研究では、ラージコートクラスターの実態を明らかにするため、体系的な産業調査が実施されました。
手法: 調査は、クラスター内に存在する175のインベストメント鋳造所のうち42社(約25%)を対象に、2019年から2020年にかけて行われました。調査員が各鋳造所の経営陣と直接面談し、事前に設計されたアンケートに回答を記入する形式が取られました。アンケートは以下の「5つのC」を網羅するように構成されています。
- 生産能力 (Capacity): 生産量(トン/年)、設備稼働率、国内販売と輸出の比率。
- 能力 (Capability): 取り扱い可能な金属の種類、鋳造品の重量範囲、最小肉厚、顧客の業種。
- 専門性 (Competency): ワックス、セラミック、機械試験、冶金試験、非破壊検査などの社内試験設備の保有状況。
- 懸念事項 (Concerns): 3Dモデリング、鋳造シミュレーション、IoTなどの最新技術の導入状況と認識。
- 課題 (Challenges): 主要な鋳造欠陥の種類、発生頻度、工程別の不良率。
この包括的なアプローチにより、クラスターの現状に関する定量的かつ定性的な貴重なデータが収集されました。
ブレークスルー:主要な発見とデータ
この調査から、ラージコートクラスターのインベストメント鋳造業界に関するいくつかの重要な洞察が得られました。
発見1:生産能力と稼働率の実態
調査対象となった鋳造所の平均設備能力は年間855トンでしたが、平均稼働率は71%に留まっていました(図4、図5参照)。これは、生産能力の約29%が未活用であることを示しており、新規市場への進出や高付加価値製品へのシフトに向けた潜在的な余力があることを示唆しています。また、輸出比率は重量ベースで1%から90%と企業によって大きなばらつきがあり、グローバル市場への対応力に差があることが明らかになりました。
発見2:不良率と欠陥の根本原因の特定
クラスター全体の平均総合不良率は4%でしたが、その範囲は0.3%から14%と非常に広く、品質管理レベルに大きな差があることが判明しました(図9参照)。工程別に見ると、不良が最も多く発生しているのは「シェル製作」工程でした。また、欠陥の種類としては「内部欠陥」が全体の49%を占め、その中でも「収縮巣」が25%と最も大きな原因であることが特定されました(図10a、10b参照)。これらのデータは、品質改善の取り組みをどこに集中させるべきかを明確に示しています。
R&Dおよび製造オペレーションへの実践的な示唆
本研究の結果は、現場のエンジニアから経営層まで、さまざまな役割の専門家にとって具体的なアクションにつながるヒントを提供します。
- プロセスエンジニアへ: シェル製作工程が不良の最大の原因であることから、スラリーの粘度管理、ディッピング工程の標準化、シェルの焼成温度と時間の最適化が、不良率を削減するための最優先課題である可能性を示唆しています。
- 品質管理チームへ: 論文の図10bと表2のデータは、収縮巣が主要な内部欠陥であることを示しており、方案設計の妥当性検証や非破壊検査基準の見直しに活用できます。平均不良率4%というベンチマークは、自社の品質レベルを客観的に評価するための指標となります。
- 設計・開発エンジニアへ: 29%の未活用生産能力は、航空宇宙や医療といった、より厳格な品質基準が求められる高付加価値市場への参入機会を示唆しています。これには、論文で指摘されている鋳造シミュレーション技術(懸念事項の項目で40%以上が使用)を積極的に活用し、設計段階での品質作り込みを強化することが不可欠です。
論文詳細
5 Cs of Investment Casting Foundries in Rajkot Cluster – An Industrial Survey
1. 概要:
- タイトル: 5 Cs of Investment Casting Foundries in Rajkot Cluster – An Industrial Survey
- 著者: A.V. Sata, N.R. Maheta
- 発行年: 2021
- 掲載誌/学会: ARCHIVES of FOUNDRY ENGINEERING, Volume 21, Issue 3/2021
- キーワード: Investment casting, Rajkot cluster, Capacity, Capability, Competency, Concerns, Challenges
2. 抄録:
インベストメント鋳造は、高い寸法公差と優れた表面仕上げを持つ、比較的薄肉で多様な工業部品を製造するための非常によく知られた製造プロセスである。インベストメント鋳造プロセスは、方案製作、シェル製作、脱蝋、シェル焼成、溶解、鋳込みといったサブプロセスから構成される。これらのサブプロセスは通常、熱処理、仕上げ、鋳物の試験・測定が続く。インベストメント鋳造品は、航空宇宙、自動車、生物医学、化学、防衛など、多くの産業分野で利用されている。世界のインベストメント鋳造の市場規模は全体で約121.5億米ドルであり、年率2.8%で成長している。インドは世界のトップ5に入るインベストメント鋳造生産国の一つであり、世界市場の約4%(鋳物価値ベース)を生産している。ラージコート(著者の本拠地)はインドにおけるインベストメント鋳造の最大級のクラスターの一つであり、約175のインベストメント鋳造所があり、これはインドのインベストメント鋳造所のほぼ30%に相当する。 ラージコートクラスターに位置するインベストメント鋳造所の5つのC(生産能力、能力、専門性、懸念事項、課題)に関するより良い洞察を得るため、2019年から2020年にかけて、同クラスターのインベストメント鋳造所の約25%を対象とした産業調査が実施された。この調査のために特定の質問票が設計され、ラージコートクラスターのインベストメント鋳造所の5つのCに対応し、その入力は対面調査中に記録された。この産業調査は、ラージコートクラスターの鋳造所の5つのCに関するより良い洞察を提供する結果となった。また、インベストメント鋳造生産者が能力と品質問題を特定し、それぞれの鋳造所のベンチマーキングにつながる助けともなるだろう。
3. 序論:
典型的なインベストメント鋳造プロセスの全体的な歩みは、宝飾品や神像製作から始まったと考えられており、古代にまで遡ることができる。その後、インベストメント鋳造プロセスは徐々に成熟し、その用途は自動車、航空宇宙、生物医学、化学、防衛、海洋、工作機械など、多くの産業分野で利用される工業用鋳物の製造にまで拡大した。インベストメント鋳造の用途は、初期には銅、金、銀などの非鉄合金のみの鋳造に限られていたが、現在ではアルミニウム、コバルト、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタンなど多くの商業用合金にも拡大している。
4. 研究の概要:
研究トピックの背景:
本研究は、世界の主要なインベストメント鋳造生産国の一つであるインド、特にその最大の産業集積地であるラージコートクラスターに焦点を当てている。このクラスターはインドのインベストメント鋳造所の約30%を占め、主に一般工学および自動車分野向けの鋳物を生産している。
先行研究の状況:
本稿では、世界のインベストメント鋳造市場に関する統計データ[1, 2]を引用し、インドおよびラージコートクラスターの位置づけを明らかにしている。しかし、この特定のクラスターにおける生産能力、技術レベル、品質課題などを体系的に調査した先行研究は示されておらず、本研究がこの分野における知識のギャップを埋めるものであることを示唆している。
研究の目的:
本研究の主目的は、ラージコートクラスターに位置するインベストメント鋳造所の「5つのC」、すなわち生産能力(Capacity)、能力(Capability)、専門性(Competency)、懸念事項(Concerns)、課題(Challenges)に関する詳細な洞察を得ることである。これにより、クラスターの現状を客観的に評価し、業界のベンチマークを確立することを目指す。
研究の核心:
研究の核心は、2019年から2020年にかけて実施された産業調査である。ラージコートクラスターのインベストメント鋳造所42社(全体の約25%)を対象に、5つのCを評価するために設計された構造化された質問票を用いた対面調査が行われた。収集されたデータは、クラスターの強み、弱み、そして改善機会を特定するために分析された。
5. 研究方法
研究デザイン:
記述的調査研究デザインを採用。ラージコートクラスターのインベストメント鋳造所の現状を体系的に記述・分析することを目的とする。
データ収集・分析方法:
データ収集は、事前に設計された5部構成の質問票を用いた対面インタビューによって行われた。各鋳造所の経営陣または指名された担当者から直接情報を収集した。収集されたデータは、最小値、最大値、平均値などの記述統計を用いて分析され、図表を用いて視覚化された。
研究対象と範囲:
研究対象は、インドのグジャラート州ラージコート市に所在するインベストメント鋳造所に限定される。調査対象は42社であり、クラスター全体の約4分の1を代表するサンプルと見なされている。
6. 主要な結果:
主要な結果:
- 生産能力: 平均設備能力は855トン/年。平均設備稼働率は71%。
- 能力: 鋳造可能な製品サイズは0.005kgから350kg、肉厚は2mmから600mmの範囲に対応。
- 専門性: 全ての社内試験設備(ワックス、セラミック、機械、冶金、非破壊)を保有しているのは調査対象の20%のみ。機械試験(86%)と冶金試験(76%)の保有率は高いが、ワックス(50%)やセラミック(33%)の原材料試験の保有率は比較的低い。
- 懸念事項: 調査対象の全鋳造所が、品質保証のために特定のOEMガイドラインまたは公表された規格(例:IATF 16949, AS9100)を採用している。40%以上が3Dモデリングと鋳造シミュレーションパッケージを使用している。
- 課題: 平均総合不良率は4%(範囲:0.3%~14%)。不良が最も多く発生する工程はシェル製作工程である。欠陥の種類では内部欠陥が49%を占め、その中で最も多いのが収縮巣(25%)、次いでシェル介在物(20%)であった。
Figure Name List:
- Fig.1. Journey of Investment Casting Process – Ancient to Contemporary [3]
- Fig. 2. Overall sales of investment casting foundries in different countries (in million USD) [2]
- Fig. 3. Distribution of overall sales for investment castings (in percentage of sales) [2]
- Fig. 4. Installed capacity (tonnage per year) of foundries in Rajkot cluster
- Fig. 5. Capacity utilization (tonnage per year) of foundries in Rajkot cluster
- Fig. 6. Casting exports by weight and value (in percentage of total sales)
- Fig. 7. Casting weight, wall thickness and lead time
- Fig. 8. Shell thickness and shell baking temperature
- Fig. 9. Overall Rejection (in percentage of total production)
- Fig. 10 (a), (b) and (c): Major Defects (in percentage of overall rejection), Internal Defects (in percentage of major defects), External defects (in percentage of major defects)
![Fig. 3. Distribution of overall sales for investment castings (in percentage of sales)[2]](https://castman.co.kr/wp-content/uploads/image-3519.webp)


7. 結論:
この調査は、生産能力の約4分の1が未活用であることを明確に示している。これは一部、製造業全体の一般的な傾向に起因する可能性があるが、特に航空宇宙、防衛、生物医学といった新規市場を開拓する可能性も示唆している。しかし、これらの市場は厳格な品質基準とサプライチェーンの信頼性を要求する。これまで低付加価値セグメント(自動車、ポンプ、バルブ)に注力してきたインドのインベストメント鋳造所は、バリューチェーンを向上させる必要がある。これは、情報技術、特にプロセスデータ分析やインダストリアルIoTに支えられた、科学的かつ体系的な品質保証アプローチを開発することによって達成できる。その方法論とツールは、一般のエンジニアが工業鋳造所で容易に導入できるものでなければならない。
8. 参考文献:
- [1] Market Publishers (2020). Investment Casting Market Size, Share & Trends Analysis Report By Application (Aerospace & Defense, Energy Technology), By Region (North America, Europe, APAC, Central & South America, MEA), And Segment Forecasts, 2020 – 2027, 2020. Retrieved September, 2021, from https://pdf.marketpublishers.com/grand/investment-casting-market-size-share-trends-analysis-report-by-application-by-region-n-segment-forecasts-2020-2027.pdf
- [2] Investment Casting Institute (2021). INCAST International Magazine of the Investment Casting Institute and the European Investment Casters Federation, 2021, XXXIV. Retrieved September, 2021, from https://www.investmentcasting.org/current-issue--public.html
- [3] Online Learning Resources in Casting Design and Simulation. Retrieved September, 2021, from www.efoundry.iitb.ac.in
専門家Q&A:あなたの疑問に答えます
Q1: なぜこの調査の対象としてラージコートクラスターが選ばれたのですか?
A1: ラージコートクラスターは、インド国内に存在するインベストメント鋳造所の約30%にあたる約175社が集積する、国内最大の産業クラスターだからです。したがって、このクラスターを調査することは、インドのインベストメント鋳造業界全体の傾向を把握するための非常に代表的なサンプルとなり得ます。
Q2: 調査ではシェル製作工程が不良の主な原因であると特定されていますが、この工程内のどのパラメータが特に重要だと考えられますか?
A2: 論文では、能力(Capability)の項目で、シェルの厚さ(2.5~22.5mm)と焼成温度(750~1150℃)が重要なパラメータとして挙げられています。この工程での不良率が高いということは、スラリーの組成と粘度の管理、ディッピング作業の均一性、乾燥条件、そして焼成サイクル全体の精密な制御が、品質を安定させる上で極めて重要な課題であることを示唆しています。
Q3: 平均設備稼働率が71%であることの重要性は何ですか?
A3: これは、生産能力の約4分の1(29%)が活用されていないことを意味します。これは経営上の非効率という課題であると同時に、大きな機会でもあります。結論で示唆されているように、新たな設備投資をせずとも、この余剰能力を航空宇宙や医療といった高付加価値製品の生産に振り向けることで、事業の拡大と収益性向上が可能になります。
Q4: 論文では、調査対象の20%しか「全ての」社内試験設備を保有していないと指摘されています。特に不足している設備は何で、それは何を意味しますか?
A4: データによると、ワックス試験(保有率50%)とセラミック試験(同33%)の設備が、機械試験(同86%)や非破壊検査(同69%)に比べて不足しています。これは、多くの鋳造所がワックスやセラミックといった重要な原材料の品質管理を外部に委託している可能性を示唆しています。特に高精度・高信頼性が求められる製品においては、原材料の品質ばらつきが工程全体の不安定化につながるリスク要因となり得ます。
Q5: ラージコートクラスターの製品構成(主に一般工学・自動車向け)は、英国や北米などのグローバルリーダーと比べてどう違いますか?
A5: 論文によると、インドの生産の80%が一般工学向け、14%が自動車向けです。対照的に、英国の売上の90%、北米の売上の77%は「高付加価値」鋳物(航空宇宙、防衛など)です。この事実は、インドのインベストメント鋳造業界が付加価値の面で乗り越えるべき大きなギャップが存在することを明確に示しており、今後の戦略的方向性を考える上で重要な比較データとなります。
結論:より高い品質と生産性への道を拓く
本調査は、インドのラージコートクラスターが抱える「未活用の生産能力」と「品質管理上の課題」という2つの重要な側面を浮き彫りにしました。特に、不良の最大の原因がシェル製作工程と収縮巣にあるという発見は、具体的な改善活動の指針となります。この課題を克服し、余剰能力を有効活用することで、インベストメント鋳造業界は、より要求の厳しい航空宇宙や医療分野へと飛躍する大きなポテンシャルを秘めています。
CASTMANでは、こうした最新の業界研究を応用し、お客様の生産性と品質の向上を支援することに尽力しています。本稿で議論された課題が貴社の事業目標と一致する場合、これらの原則を貴社の部品製造にどのように適用できるか、ぜひ当社のエンジニアリングチームにご相談ください。
著作権情報
このコンテンツは、A.V. Sata氏およびN.R. Maheta氏による論文「5 Cs of Investment Casting Foundries in Rajkot Cluster – An Industrial Survey」に基づく要約および分析です。
出典: https://doi.org/10.24425/afe.2021.138672
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