Simulation and Casting Process of Aluminum Alloy Multi-Way Valve Body with Various Gating Systems
この技術概要は、[Li Rong氏、Chen Lunjun氏、Su Ming氏、Zeng Qi氏、Liu Yong氏、Wang Heng氏]による学術論文「Simulation and Casting Process of Aluminum Alloy Multi-Way Valve Body with Various Gating Systems」に基づいています。この論文は[ARCHIVES of FOUNDRY ENGINEERING](2018年)に掲載されました。



キーワード
- 主要キーワード: アルミニウム合金鋳造
- 副次キーワード: 多方向バルブボディ, ゲートシステム, 鋳造シミュレーション, 鋳造欠陥, 湯流れ解析, 凝固解析
エグゼクティブサマリー
- 課題: 複雑な内部流路を持つアルミニウム合金製多方向バルブボディは、鋳造時にガス巻き込みや凝固欠陥が発生しやすいという課題がありました。
- 手法: 鋳造シミュレーションソフトウェアを用いて、片側ゲート方式と両側ゲート方式の充填・凝固プロセスを比較分析し、その結果を基に最適なゲートシステムを設計しました。
- 主要なブレークスルー: 中央からの注入と両側への分岐を行う新しいゲートシステムと、最適化されたライザー(押湯)設計により、安定した充填と順次凝固を実現し、鋳巣欠陥を大幅に削減しました。
- 結論: シミュレーション主導のプロセス最適化により、従来の鋳鉄製に匹敵する品質で、内部流路がよりクリーンな高性能アルミニウム合金製バルブボディの製造が可能になりました。
課題:なぜこの研究がHPDC専門家にとって重要なのか
建設機械の油圧システムにおける重要部品である一体型多方向バルブボディは、従来、ダクタイル鋳鉄で作られてきました。しかし、鋳鉄は1300°Cという高温で鋳造されるため、内部の中子砂が溶着しやすく、油圧システムの汚染を引き起こすという大きな問題がありました。
この問題を解決するため、アルミニウム合金が代替材料として選ばれました。アルミニウム合金は、内部の砂を容易に除去でき、油圧システムをクリーンに保つことができます。しかし、アルミニウム合金製バルブボディは内部流路が非常に複雑であるため、鋳造方案、特にゲートシステムの設計が極めて困難です。不適切な設計は、ガスの巻き込み、酸化、湯境、鋳巣といった欠陥を引き起こし、製品の性能を著しく低下させます。実際の鋳造実験を繰り返すことはコストと時間がかかるため、欠陥箇所を正確に予測し、効率的に解決策を導き出すためのシミュレーション技術の活用が不可欠でした。
アプローチ:方法論の解明
本研究では、複雑なアルミニウム合金製バルブボディの鋳造プロセスを最適化するために、シミュレーション解析と実験的検証を組み合わせたアプローチを取りました。
手法1:ゲートシステムの比較シミュレーション 2つの異なる初期ゲートシステム(両側ゲート方式と片側ゲート方式)を設計し、鋳造シミュレーションソフトウェアを用いて湯流れ充填プロセスと凝固プロセスを解析しました。ガス状態、空気接触時間、充填速度、温度分布、ホットスポット、鋳巣などのパラメータを詳細に比較・評価しました。
手法2:最適化設計と検証 初期設計のシミュレーション結果で明らかになった問題点(両側ゲート方式での乱流、片側ゲート方式での充填遅延と酸化)を解決するため、新しいゲートシステムとライザー(押湯)を設計しました。この最適化案についても同様にシミュレーションを行い、欠陥の低減効果を予測しました。最終的に、シミュレーションで最良と判断された方案を用いて実際の鋳造実験を行い、その有効性を検証しました。
ブレークスルー:主要な発見とデータ
発見1:初期ゲートシステム(両側 vs. 片側)の比較と課題
シミュレーションの結果、両側ゲート方式と片側ゲート方式にはそれぞれ一長一短があることが明らかになりました。 - 両側ゲート方式: 図4(a)に示すように、溶湯の流れが中央で衝突し、激しい乱流を発生させました。これによりガスの巻き込みが増加しました。充填速度は速いものの、安定性に欠けていました。 - 片側ゲート方式: 図5(b)に示すように、空気との接触時間が両側ゲート方式よりも長くなり、溶湯の酸化リスクが高まりました。充填は比較的穏やかでしたが、充填時間が長くなることで溶湯の温度低下が進み、湯境などの欠陥を引き起こす可能性がありました。 さらに、図9で示されるように、どちらの方式でもバルブボディの厚肉部で最終凝固が起こり、深刻な鋳巣(ポロシティ)が発生することが予測されました。これは、ライザーからの溶湯補給が不十分であることを示しています。
発見2:最適化ゲートシステムによる欠陥の大幅な改善
初期設計の問題点を解決するために、図11に示すような中央から注入し、両側に均等に溶湯を供給する「シングルゲート・デュアルフロー方式」を考案しました。 この最適化設計は、図12が示すように、溶湯の乱流を大幅に抑制し、穏やかで安定した充填を実現しました。また、ライザーの設計も図13のように変更し、厚肉部への溶湯補給を確実に行えるようにしました。 その結果、図14のシミュレーションで示されるように、鋳巣欠陥は製品内部から完全に排除され、ライザー部分に集中させることができました。これにより、健全な鋳物が得られることが確認されました。
研究開発および運用への実践的示唆
- プロセスエンジニア向け: この研究は、複雑な形状の鋳物において、中央からの注入と分岐流路を用いるゲートシステムが、充填のバランスを取り、乱流を抑制するのに有効であることを示唆しています。
- 品質管理チーム向け: 論文の図9と図14のデータは、ゲートシステムとライザーの設計が鋳巣の発生位置と規模に直接的な影響を与えることを示しています。シミュレーションによる欠陥予測箇所を重点的に検査することで、品質保証の精度を高めることができます。
- 設計エンジニア向け: 凝固解析の結果は、製品の厚肉部が最終凝固領域となり、欠陥が発生しやすいことを示しています。設計の初期段階で、これらの領域に効果的に溶湯を補給できるライザーの配置を考慮することが重要です。
論文詳細
Simulation and Casting Process of Aluminum Alloy Multi-Way Valve Body with Various Gating Systems
1. 概要:
- タイトル: Simulation and Casting Process of Aluminum Alloy Multi-Way Valve Body with Various Gating Systems
- 著者: Li Rong, Chen Lunjun, Su Ming, Zeng Qi, Liu Yong, Wang Heng
- 発行年: 2018
- 掲載誌/学会: ARCHIVES of FOUNDRY ENGINEERING, Volume 18, Issue 2/2018
- キーワード: Casting, Aluminum alloy, Valve body, Gating system, Simulation
2. 要旨:
複雑なアルミニウム合金製多方向バルブボディの鋳造における様々なゲートシステムの影響を研究するため、ソフトウェアシミュレーションによる解析と最適化が実施された。続いて、アルミニウム合金製バルブボディの湯流れを確認するために鋳造が行われた。コンピュータシミュレーションの結果、片側鋳造方式と比較して、両側ゲートシステムの鋳造方式は外部ガスの充填を減少させ、空気接触時間も短くなることが示された。しかし、両側からの注入により、溶湯が同時に到達できず、キャビティ内への溶湯速度が異なり、溶湯の充填安定性に影響を与えた。ライザーの不合理な設定は凝固時間の延長を招き、凝固中に多くの鋳造欠陥を発生させた。また、両方のゲートシステムとも、鋳造全体の不適切な凝固を引き起こした。これらの問題を克服するため、中央注入部にストレートゲートを設置し、注入の両側で水平ゲートによる分岐を行うことで、アルミニウム合金製多方向バルブボディに対してより良い鋳造結果が得られることが示された。
3. 序論:
一体型油圧多方向バルブは、建設機械における最高技術レベルの重要部品である。その製造には材料、成形、熱処理などの課題が関わる。現在、ほとんどの一体型多方向バルブはダクタイル鋳鉄で作られているが、鋳造温度が非常に高い(約1300°C)ため、内部流路に中子砂が付着し、油圧システムを汚染するという大きな問題がある。そのため、アルミニウム合金材料が多方向バルブボディの製造に選ばれた。高性能アルミニウム合金ボディは油圧システムの高圧に耐えることができ、内部の砂を容易に清掃できるため、油圧システムをクリーンに保つことができる。航空宇宙産業や自動車産業の継続的な発展に伴い、高性能キーコンポーネント生産のための高性能アルミニウム合金の研究開発が不可欠である。多方向バルブボディの複雑な内部流路のため、直接中子を設計して鋳造実験を行うことは非常に困難であることが証明されている。鋳造シミュレーションソフトウェアは、欠陥箇所を可視化し、実際の鋳造を必要とせずに解決策を提案できる。本研究では、一体型多方向バルブボディの充填プロセスについてシミュレーションが実施された。
4. 研究の概要:
研究トピックの背景:
本研究は、建設機械用の高性能な一体型油圧多方向バルブボディの製造を対象としている。従来のダクタイル鋳鉄製バルブが抱える内部清浄性の問題を解決するため、代替材料としてアルミニウム合金に着目した。
従来の研究状況:
従来、この種のバルブはダクタイル鋳鉄で製造されてきたが、高温鋳造に起因する問題点が指摘されていた。アルミニウム合金の利用は有望視されているが、その複雑な形状から鋳造方案の確立が困難であった。鋳造シミュレーションソフトウェアが、このような複雑な鋳物の欠陥予測とプロセス最適化に有効なツールとして利用されていることが背景にある。
研究の目的:
本研究の目的は、複雑なアルミニウム合金製多方向バルブボディの鋳造において、異なるゲートシステム(湯口方案)が充填および凝固プロセスに与える影響を、シミュレーションと実験を通じて解明し、欠陥のない健全な鋳物を製造するための最適な鋳造プロセスを確立することである。
中心的な研究:
研究の中心は、(1) 片側ゲート方式と両側ゲート方式の2つの初期設計について、シミュレーションによる湯流れ・凝固解析を行い、それぞれの長所と短所を明らかにすること、(2) シミュレーション結果に基づき、両者の欠点を克服する新しい最適化ゲートシステムとライザー設計を提案すること、(3) 最適化設計の有効性をシミュレーションで確認し、最終的に実験鋳造によって検証することである。
5. 研究方法
研究デザイン:
本研究は、比較シミュレーション分析とそれに続く実験的検証という研究デザインを採用している。まず、2種類の異なるゲートシステム(両側、片側)をモデル化し、シミュレーションソフトウェアを用いて鋳造プロセスを解析した。次に、これらの解析結果から得られた知見に基づき、最適化されたゲートシステムを設計し、再度シミュレーションでその有効性を評価した。最後に、シミュレーションで得られた最適な方案を用いて実際の鋳造を行い、結果を比較検証した。
データ収集と分析方法:
データ収集は、主に鋳造シミュレーションソフトウェアを用いて行われた。解析された主なパラメータは、トレーサー粒子による湯流れ状態、空気接触時間、充填速度、凝固温度、ホットスポット分布、鋳巣(ポロシティ)分布、冷却速度である。これらのシミュレーション結果を可視化し、比較分析することで、各ゲートシステムの特性と問題点を特定した。また、実験鋳造では、製造された鋳物を切断し、内部の欠陥を目視で観察することで、シミュレーション結果の妥当性を検証した。
研究の対象と範囲:
本研究の対象は、複雑な内部流路を持つ特定のアルミニウム合金製一体型多方向バルブボディである。研究範囲は、ゲートシステムの設計(両側、片側、最適化設計)が、鋳造時の溶湯充填挙動および凝固プロセスに与える影響の分析に限定される。材料はアルミニウム合金とし、鋳造法は砂型鋳造を前提としている。
6. 主要な結果:
主要な結果:
- 両側ゲートシステムは、片側システムと比較して充填時間が短く、空気接触時間も短縮されたが、溶湯の衝突による激しい乱流とガス巻き込みを引き起こした。
- 片側ゲートシステムは、充填が穏やかであったが、充填時間が長くなるため溶湯の酸化リスクが高まり、また冷却が進みやすかった。
- 初期設計の2つのシステムはどちらも、バルブボディの厚肉部で最終凝固が起こり、深刻な鋳巣欠陥が発生することがシミュレーションで予測された。これは不適切な順次凝固が原因であった。
- 中央から注入し両側に分岐する最適化ゲートシステムと、改良されたライザー設計により、乱流を抑制した安定充填と適切な順次凝固が達成された。
- 最適化プロセスにより、鋳巣欠陥は製品内部からライザー部に移動させることができ、健全な鋳物の製造が可能であることがシミュレーションと実験の両方で確認された。
- 最適化されたアルミニウム合金製バルブボディは、鋳鉄製と同等の形状精度を持ち、内部流路はよりクリーンであった。
図の名称リスト:
- Fig. 1. Model of multi-valve
- Fig. 2. Model of overall sand molding
- Fig. 3. Pouring system
- Fig. 4. Tracer particle status of various gating systems: a) Twin side gating system; b) Single side gating system
- Fig. 5. Air contact times of various gating systems: a) Twin gating system; b) Single side gating system
- Fig. 6. Filling speeds of various gating systems: a) Twin gating system; b) Single side gating system
- Fig. 7. Temperatures of various gating systems
- Fig. 8. Hotspots of different gating systems: a) Twin gating system; b) Single side gating system
- Fig. 9. Distribution of shrinkage and hotspots: a) Porosity; b) Hotspots; c) Time of solidification
- Fig. 10. Cooling rate of casting solidifications of various gating systems: a) Twin gating system; b) Single side gating system
- Fig. 11. Optimized gating system
- Fig. 12. Turbulence of new gating system
- Fig. 13. Modified riser of valve body
- Fig. 14. Defects and filling rate optimization
- Fig. 15. Solidification temperature of modified gating system
- Fig. 16. Casting of single side gating system
- Fig. 17. Cutting section of aluminum alloy valve body
- Fig. 18. Comparison of aluminum alloy and iron body: a) Aluminum alloy body; b) Iron valve body; c) Partial area of Aluminum alloy body; d) Partial area of iron valve body
7. 結論:
- 溶湯の流れの状態の違いが、様々なゲートシステムの充填効果に寄与する主な要因であった。両側ゲートシステムは、注入速度が速いため充填時間が短く、温度低下も少なかったが、乱流の増加と充填中の空気巻き込みの増大を引き起こした。片側ゲートシステムは充填がより安定していたが、酸化しやすかった。したがって、多方向バルブボディにとって、中子部分が重要であり、その成形は充填時間を短縮し、より安定しているべきである。
- 片側または両側ゲートシステムでは、バルブボディの順次凝固を保証できなかった。これはまた、バルブボディの中子または表面に欠陥を引き起こす可能性があった。これにより、中子の強度とバルブボディの表面品質が低下する可能性があった。
- 最適化されたゲートシステムは、キャビティ内の流れをより穏やかにするダブルゲートに基づいていた。また、このゲートシステムは、溶湯をキャビティの両側にバランスよく導き、両方の流れが同時にキャビティに注入されることを保証した。このシステムはこの鋳造に適しており、アルミニウム合金製多方向バルブボディの内部品質を保証した。最適化されたアルミニウム製多方向バルブボディは、鋳鉄の最適化レベルに達し、その内部流路はよりクリーンであった。
8. 参考文献:
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専門家Q&A:トップの質問に回答
Q1: なぜ初期設計では、両側ゲート方式と片側ゲート方式の両方が問題だったのですか?
A1: 両方の方式に決定的な欠点があったためです。両側ゲート方式は、充填は速いものの、キャビティ中央で溶湯が激しく衝突し、乱流とガスの巻き込みを引き起こしました(図4参照)。一方、片側ゲート方式は充填が穏やかである反面、充填に時間がかかりすぎるため、溶湯が空気に長時間さらされて酸化しやすく、また温度低下による湯境のリスクがありました(図5参照)。
Q2: 最適化されたゲートシステムの重要な変更点は何でしたか?
A2: 最も重要な変更点は、注入方式を根本的に変えたことです。側面から注入するのではなく、中央に1つのゲート(湯口)を設け、そこから両側に均等に溶湯を分岐させる「シングルゲート・デュアルフロー方式」を採用しました(図11参照)。これにより、両側への充填がバランスよく同時に行われ、溶湯の衝突が避けられ、穏やかで安定した充填が実現しました。
Q3: 改良されたライザー(押湯)の設計は、どのように鋳物の品質を向上させましたか?
A3: 改良されたライザーは、バルブボディの最も厚い部分、つまり最後に凝固する部分に直接配置され、十分な量の溶湯を補給できるように設計されました(図13参照)。これにより、凝固収縮による体積不足をライザーが補い、製品内部に発生していた鋳巣(ポロシティ)をライザー部に移動させることができました。シミュレーション結果(図14参照)は、このアプローチによって製品本体が健全になったことを明確に示しています。
Q4: 論文では中子の予熱の重要性について言及されていますが、なぜですか?
A4: 中子が配置される領域は、溶湯の熱を吸収しやすく、局所的に冷却速度が非常に速くなるためです。図10のシミュレーション結果が示すように、この急激な冷却は鋳巣欠陥の主な原因となります。中子を事前に適切な温度に予熱しておくことで、溶湯との温度差を小さくし、急冷を防ぎ、鋳物全体の温度勾配を均一にすることができます。これにより、凝固がより緩やかになり、欠陥の発生を抑制できます。
Q5: 最適化されたアルミニウム製バルブボディと、従来の鋳鉄製バルブボディを比較した最終的な評価はどうでしたか?
A5: 最終的な評価は非常に良好でした。図17の比較写真が示すように、最適化されたプロセスで製造されたアルミニウム合金製バルブボディは、表面が滑らかで、鋳鉄製と同等の形状精度を達成しました。さらに重要な点として、切断して確認した内部流路は非常に滑らかでクリーンであり、鋳鉄製が抱える砂の付着という問題を根本的に解決できることが実証されました。
結論:より高い品質と生産性への道を開く
複雑な形状を持つアルミニウム合金鋳造は、ガス巻き込みや凝固欠陥といった多くの課題を伴います。本研究は、鋳造シミュレーションを駆使することで、これらの課題を体系的に解決できることを証明しました。両側ゲート方式の乱流と、片側ゲート方式の酸化リスクというトレードオフを、中央注入・両側分岐という革新的なゲートシステムで克服し、健全な鋳物を安定して生産する道筋を示しました。
このアプローチは、試作コストの削減と開発期間の短縮に直結し、高品質な部品の安定供給を可能にします。
CASTMANでは、最新の業界研究を応用し、お客様の生産性と品質の向上を支援することに尽力しています。この論文で議論された課題がお客様の事業目標と一致する場合、これらの原則をお客様のコンポーネントにどのように実装できるか、ぜひ当社のエンジニアリングチームにご相談ください。
著作権情報
このコンテンツは、[Li Rong氏、Chen Lunjun氏、Su Ming氏、Zeng Qi氏、Liu Yong氏、Wang Heng氏]による論文「Simulation and Casting Process of Aluminum Alloy Multi-Way Valve Body with Various Gating Systems」に基づく要約および分析です。
出典: https://doi.org/10.24425/122507
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