建築における効果的な利用のための廃鋳物砂に関する実験的研究

Experimental investigation on waste foundry sand for effective utilization in building construction

本技術概要は、Manikandan A.氏、Anandha Raj L.氏、Aravindh P.氏によって執筆され、Research Journal of Chemistry and Environment(2020年)に掲載された学術論文「Experimental investigation on waste foundry sand for effective utilization in building construction」に基づいています。

Table 1
Physical properties of cement
Table 1 Physical properties of cement
Fig. 1: Comparison of concrete strength with WFS replacement
Fig. 1: Comparison of concrete strength with WFS replacement

キーワード

  • 主要キーワード: 廃鋳物砂
  • 副次キーワード: 鋳物砂リサイクル, コンクリート骨材, 持続可能な鋳造, コスト削減, 副産物利用

エグゼクティブサマリー

  • 課題: 鋳物工場から排出される年間約990万トンに及ぶ廃鋳物砂(WFS)の処理コストと環境負荷。
  • 手法: 従来のコンクリートの細骨材(川砂)を、異なる割合(10%、20%、30%、40%)の廃鋳物砂で代替し、その物理的・化学的特性と圧縮強度を評価。
  • 重要なブレークスルー: 細骨材を最大40%まで廃鋳物砂で代替したコンクリートが、28日経過時点で従来コンクリートの86%の強度を達成し、建設資材としての実用的な可能性を実証。
  • 結論: 廃鋳物砂は、単なる廃棄物ではなく、効果的な前処理を行うことで建設分野で価値ある代替資源となり、鋳物工場の廃棄物処理コスト削減と環境貢献を同時に実現できる。

課題:なぜこの研究がHPDC専門家にとって重要なのか

インドの鋳造業界では、年間推定999万トンもの廃鋳物砂(WFS)が排出されています。これらは主に埋め立て処分されますが、環境への負荷だけでなく、企業にとっては継続的な処理コストという経営上の課題となっています。特に、高品質なシリカ砂を主成分とするこの「廃棄物」は、本来、再利用のポテンシャルを秘めています。しかし、鋳造プロセスで使用される樹脂や化学物質がコンクリートなどの他用途への利用を妨げてきました。この研究は、WFSを単なる廃棄物から価値ある建設資材へと転換する具体的な方法を検証し、鋳造業界が直面するコストと環境という二つの大きな課題に対する実用的な解決策を提示するものです。

アプローチ:方法論の解明

本研究では、WFSを建設資材として有効活用するための体系的なアプローチが採用されました。研究者たちは、WFSの物理的・化学的特性を詳細に分析し、コンクリートへの適用可能性を評価しました。

手法1:材料特性の評価 Sakthi Auto-Component社から排出された廃鋳物砂(WFS)の化学組成を分析しました。その結果、マグネシウムと石灰の含有率が高いことが判明し、これがコンクリートの品質に影響を与える可能性があるため、直接的な使用は不適と判断されました。

手法2:石灰スラリーによる前処理 WFSに含まれる樹脂粒子を除去し、化学的性質を安定させるため、石灰スラリーを用いた前処理が実施されました。WFSを石灰溶液に約6時間浸漬させることで、発熱反応を利用して樹脂の結合能力を失わせ、コンクリート骨材としての適合性を高めました。

手法3:コンクリート配合と強度試験 セメント、細骨材、粗骨材の比率を1:1.5:3とする標準的なコンクリート配合を基準としました。細骨材(川砂)をWFSで0%(対照)、10%、20%、30%、40%の割合で代替したコンクリート供試体(150mm立方体)を作製しました。これらの供試体を7日、14日、28日間養生した後、圧縮強度試験を行い、各代替率がコンクリート強度に与える影響を定量的に評価しました。

ブレークスルー:主要な発見とデータ

本研究は、廃鋳物砂(WFS)がコンクリートの細骨材として有効に機能することを示す、説得力のあるデータを提示しました。

発見1:WFSは最大40%の代替率でも実用的な強度を維持する

WFSの代替率を高めても、コンクリートの圧縮強度は実用的なレベルを維持しました。論文のTable 4とTable 8によると、28日経過時点での平均圧縮強度は、従来のコンクリート(0% WFS)が19.36 MPaであったのに対し、WFSを40%代替したコンクリートは18.36 MPaでした。これは、従来比で約86%の強度に相当し、多くの建設用途において十分な性能を示唆しています。

発見2:WFSは初期の強度発現を促進する可能性がある

WFSの初期の熱特性がセメントの水和反応を促進するため、WFSを配合したコンクリートは従来のコンクリートと同等の強度発現を示しました。7日経過時点での強度を比較すると、10% WFS(13 MPa)は対照(14 MPa)に近く、20% WFS(12.18 MPa)も大きな低下は見られませんでした。これは、WFSが初期段階で水和を加速させる効果を持つことを示しており、後の段階で強度の伸びが鈍化するものの、初期養生においては有利に働く可能性を示しています。下のグラフは、各代替率における強度推移を比較したものです。

研究開発および事業運営への実践的示唆

  • プロセスエンジニア向け: この研究は、鋳物工場から排出される砂の化学組成(特にマグネシウムと石灰)が再利用の鍵を握ることを示唆しています。石灰スラリー処理のような簡単な前処理プロセスを導入することで、廃棄物を付加価値のある製品に変え、処理コストを削減できる可能性があります。
  • 品質管理チーム向け: 論文のTable 4(化学分析)は、自社のWFSの再利用可能性を評価するための基準となり得ます。また、Table 5から8に示される強度データは、WFSを再利用した際の品質管理目標を設定する上で貴重な参考情報となります。
  • 調達・経営企画担当者向け: 論文では、商業用の砂が1トンあたり8000ルピーであるのに対し、WFSは無料で入手可能であると指摘しています。これは、廃棄物処理コストの削減だけでなく、新たな収益源を生み出す可能性を示唆しており、持続可能性と経済性を両立させる事業戦略を検討する上で重要なインプットとなります。

論文詳細


Experimental investigation on waste foundry sand for effective utilization in building construction

1. 概要:

  • タイトル: Experimental investigation on waste foundry sand for effective utilization in building construction
  • 著者: Manikandan A., Anandha Raj L. and Aravindh P.
  • 発行年: 2020
  • 掲載誌/学会: Research Journal of Chemistry and Environment, Vol. 24 (Special Issue I)
  • キーワード: Metal casting, Waste foundry sand, Non-ferrous, Concrete cube, Cost effective.

2. 抄録:

インドの金属鋳造産業は十分に確立されており、国際基準に基づき推定999万トンの様々なグレードの鋳物を生産している。インドには約5000の鋳造所があり、ねずみ鋳鉄、ダクタイル鋳鉄、SG鉄、非鉄金属、鋼の鋳物を生産しており、その総量は年間約990万トンに上る。本研究は、ErodeのSakthi Auto-Component社から排出された廃鋳物砂(WFS)の物理的・化学的特性と、建材としての効果的な利用法について概説する。WFSサンプルとフライアッシュを異なる割合でコンクリートキューブに配合して実験し、その強度結果を比較して建設における最適な使用法を特定する。従来のコンクリートとWFSを使用したコンクリートとのコスト比較に基づき、効果的な利用の経済的側面を示す。

3. 序論:

鋳物砂は、均一な物理的特性を持つ高品質のシリカ砂である。これは鉄および非鉄金属鋳造産業の副産物であり、その熱伝導性のために何世紀にもわたって鋳型材料として使用されてきた。WFSは、燃焼した炭素、残留バインダー(ベントナイト、シーコール、樹脂)の薄膜でコーティングされた高シリカで構成されている。使用されるバインダーによって、WFSはグリーンサンドと化学的に結合された砂に分類される。最近の研究者たちはこの廃棄物利用に取り組み、コンクリート中の天然砂を10%のWFSで代替した場合、同様の化学的特性を示すと結論付けている。また、WFSの化学組成は主に鋳造プロセスと産業の種類に依存する。

4. 研究の概要:

研究トピックの背景:

鋳物産業から大量に排出される廃鋳物砂(WFS)は、その処理が環境的・経済的な課題となっている。一方で、建設業界では天然資源である川砂の枯渇が問題視されており、代替骨材の需要が高まっている。この研究は、WFSを建設用コンクリートの細骨材として再利用することで、両業界の課題を同時に解決することを目的としている。

従来の研究の状況:

従来の研究では、WFSが構造物の埋め戻し材や道路の路盤材として利用されてきた。また、コンクリートの細骨材として一部代替する試みも行われており、Marianaら、Yucelら、Dushyantら、Mahimaらの研究では、WFSをコンクリートやブロックに利用する研究が行われている。多くは10%程度の代替率で良好な結果が得られると結論付けているが、20~30%の代替で実用的な結果が得られたとする研究もある。

研究の目的:

本研究の目的は、Sakthi Auto-Component社から排出されたWFSの物理的・化学的特性を調査し、コンクリートの細骨材としての最適な代替率を特定することである。さらに、従来のコンクリートとのコスト比較を行い、WFS利用の経済的な実行可能性を示すことにある。

研究の核心:

研究の核心は、WFSを細骨材として10%、20%、30%、40%の割合で代替したコンクリートキューブを作製し、その圧縮強度を7日、14日、28日経過時点で測定することにある。特に、WFSに含まれる不純物(樹脂など)を除去するための石灰スラリー処理を施し、コンクリートの品質への悪影響を最小限に抑える工夫がなされている点が重要である。これにより、従来の研究よりも高い代替率での利用可能性を探っている。

5. 研究方法

研究デザイン:

本研究は、実験的アプローチを採用している。対照群として従来のコンクリート(WFS代替率0%)を設定し、実験群としてWFS代替率を10%、20%、30%、40%と変化させたコンクリートを作製した。各群の圧縮強度を所定の養生期間(7、14、28日)後に測定し、結果を比較分析する。

データ収集・分析方法:

データ収集は、コンクリート技術研究所において、標準的な試験手順に従って行われた。作製された150mm×150mm×150mmのコンクリートキューブ供試体は、圧縮試験機を用いて圧縮強度(MPa)が測定された。各代替率・各養生期間において複数の供試体(A, B, C)のデータを収集し、その平均値を算出して比較分析に用いた。また、セメント、骨材、WFSの物理的・化学的特性も標準試験法に基づき分析された。

研究対象と範囲:

研究対象は、ErodeのSakthi Auto-Component社から提供された廃鋳物砂(WFS)である。研究範囲は、このWFSをコンクリートの細骨材として部分的に代替した場合の圧縮強度特性の評価に限定される。コンクリートの配合比は1:1.5:3に固定されている。耐久性やその他の力学特性については本研究の範囲外である。

6. 主要な結果:

主要な結果:

  • WFSの化学分析により、マグネシウムと石灰の含有率が高いことが判明したため、コンクリート骨材として使用する前に石灰スラリーによる前処理が必要であった。
  • 従来のコンクリート(WFS 0%)の28日平均圧縮強度は19.36 MPaであった。
  • WFSを10%代替した場合の28日強度は19.188 MPa、20%代替で19.5 MPa、30%代替で19.1667 MPaとなり、30%までは従来のコンクリートと同等以上の強度を示した。
  • WFSを40%代替した場合の28日強度は18.36 MPaであり、これは従来のコンクリートの約86%に相当する強度であり、実用的な利用が可能であることを示唆している。
  • WFSの初期の熱特性がセメントの水和を促進するため、WFSを用いたコンクリートは従来のコンクリートと同等の強度発現を示す。

Figure Name List:

  • Fig. 1: Comparison of concrete strength with WFS replacement

7. 結論:

WFSサンプルをコンクリートの細骨材として最大40%まで部分的に代替することは効率的であり、28日経過時点で従来コンクリートの86%の強度を与えることがわかった。この配合にフライアッシュを加えることで、後の段階でのコンクリート供試体の養生後の強度が向上する可能性がある。コンクリートの細骨材をWFSサンプルで代替することにより、天然の土地資源を保護し、廃棄物の有効利用もコンクリート建設において効果的に行うことができる。

8. 参考文献:

  1. Tapkir R.R., Gholve N.N. and Jhadav V.P., Review of researches on replacement of fine aggregate by foundry sand in concrete, International Journal of Engineering Technology Science and Research, 5, 1696-1700 (2018)
  2. Mahima G., Sreevidya V. and Salim P.M., Waste Foundry Sand as a Replacement for Fine Aggregate in High Strength Solid Masonry Blocks, International Journal of Innovative Research in Science, Engineering and Technology, 5, 6879-6886 (2016)
  3. Dushyant R.B., Jayeshkumar P. and Jaydev J.B., Innovative ideas for manufacturing of the green concrete by utilising the used foundry sand and pozzocrete, International Journal of Emerging Science and Engineering, 1, 28-30 (2013)
  4. Mariana L.M., Jorg L., Rafael P., Raquel L.P. and Claudio O., Foundry sand for manufacturing paving units, 10th International Conference on Concrete block paving Shanghai, People Republic of China, 24-26 (2012)
  5. Saveria M., Daniela S. and Tittarelli F., Used Foundry Sand in Cement Mortars and Concrete Production, The Open Waste Management Journal, 3, 18-25 (2010)
  6. Mayudin S.A., Mohan M. and Reddy I.T., Strength behavior of concrete produced with foundry sand as fine aggregate replacement, International Journal For Technological Research In Engineering, 5 (2008)
  7. Siddique Rafat and Singh Gupreet, Utlization of waste foundry sand (WFS) in concrete manufacturing, Resources, conversation and Recycling, 55(11), 885-892 (2008)
  8. Naik T.R., Singh S.S., Tharaniyil M.P. and Wendrof R.B., Application of foundry By-product materials in manufacturing of concrete and mansory products, ACI Journal of Materials, 93, 41-50 (1996)
  9. Javed S. and Lovell C.W., Use of waste foundry sand in civil engineering, Transportation Research Board, 1486, 109-113 (1994).

専門家Q&A:トップの疑問に答える

Q1: なぜ廃鋳物砂(WFS)をコンクリートに直接使用せず、石灰スラリー処理が必要だったのですか? A1: 論文の化学分析(Table 4)によると、使用されたWFSにはマグネシウムと石灰の含有率が高いことが示されました。これらの成分はコンクリートの硬化プロセスや長期的な耐久性に悪影響を与える可能性があります。また、鋳造プロセスで使用された樹脂バインダーが残存しているため、石灰スラリー処理によってこれらの樹脂粒子を除去し、骨材としての品質を安定させる必要がありました。

Q2: WFSの代替率が40%の場合、強度が若干低下していますが、これは実用上問題ないのでしょうか? A2: 40%代替時の28日強度は18.36 MPaで、これは従来コンクリート(19.36 MPa)の86%に相当します。この強度レベルは、例えば無筋コンクリートや特定の二次製品など、超高強度を必要としない多くの建設用途において十分実用的です。コストと環境負荷の削減という大きなメリットを考慮すると、非常に魅力的な選択肢と言えます。

Q3: この研究結果は、あらゆる種類の廃鋳物砂に適用できますか? A3: 論文では、WFSの化学組成は鋳造プロセスや産業の種類に大きく依存すると述べられています。本研究は特定の自動車部品メーカーから排出されたWFSを対象としています。したがって、他の鋳物工場(例えば、非鉄金属や異なるバインダーを使用する工場)のWFSを使用する場合は、同様の化学分析と予備試験を行い、その特性に合わせた前処理や配合設計を検討する必要があります。

Q4: WFSを使用することで、コスト面で具体的にどのようなメリットが期待できますか? A4: 論文では、商業用の砂が1トンあたり8000ルピー(平均)であるのに対し、WFSは無料で入手可能であると指摘しています。コンクリートの細骨材の40%をWFSで代替する場合、骨材コストを大幅に削減できます。さらに、これまで費用をかけて処理していた廃棄物を有価物として活用できるため、廃棄物処理コストの削減にも繋がり、全体として大きな経済的メリットが期待できます。

Q5: 論文ではフライアッシュの追加に言及していますが、どのような効果が期待されるのですか? A5: 結論部分で、フライアッシュを追加することで「後の段階での強度が向上する可能性がある」と述べられています。フライアッシュはポゾラン反応により、長期的にコンクリートの強度を増進させ、緻密な組織を形成する効果があります。WFSの利用で懸念される可能性のある長期強度の伸び悩みや耐久性を、フライアッシュが補完する役割を果たすことが期待されます。

結論:より高い品質と生産性への道を切り拓く

鋳物工場から排出される廃鋳物砂は、長らく処理コストと環境負荷の源泉と見なされてきました。しかし、本研究は、適切な前処理を施すことで、この「廃棄物」が建設分野で価値ある資源となり得ることを明確に示しました。最大40%という高い代替率でも実用的な強度を維持できるという発見は、鋳造業界にとって、持続可能性と経済性を両立させる新たな道筋を提供するものです。

CASTMANでは、お客様の生産性と品質向上を支援するため、常に最新の業界研究を応用することに尽力しています。本稿で議論された課題がお客様の事業目標と合致する場合、これらの原理を貴社のコンポーネント製造にどのように実装できるか、ぜひ当社のエンジニアリングチームにご相談ください。

著作権情報

このコンテンツは、Manikandan A.氏らによる論文「Experimental investigation on waste foundry sand for effective utilization in building construction」に基づく要約および分析です。

出典: Res. J. Chem. Environ., Vol. 24 (Special Issue I), 56-59 (2020)

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