鋳造Al-Si-Cu合金の析出特性に及ぼす冷却速度の影響

Effect of Cooling Rate on the Precipitation Characteristics of Cast Al-Si-Cu Alloy

ADC12合金の特性を最大化:冷却速度制御による析出硬化の最適化

この技術概要は、M. Okayasu, N. Sahara, M. Toudaによって執筆され、ARCHIVES of FOUNDRY ENGINEERING (2021)に掲載された学術論文「Effect of Cooling Rate on the Precipitation Characteristics of Cast Al-Si-Cu Alloy」に基づいています。

Fig. l. Schematic diagram of various solicUfication processes to obtain different cooling rate
Fig. l. Schematic diagram of various solicUfication processes to obtain different cooling rate

キーワード

  • 主要キーワード: ADC12 冷却速度
  • 副次キーワード: 析出硬化, アルミニウム合金, 時効処理, 機械的特性, 固溶化処理, ダイカスト

エグゼクティブサマリー

  • 課題: 鋳造アルミニウム合金の強度向上に用いられる従来のT6熱処理は、高温での固溶化処理時に「膨れ」などの欠陥を引き起こすという問題がありました。
  • 手法: 本研究では、ADC12合金の凝固時の冷却速度を変化させ、その後の低温時効処理によって、高温の固溶化プロセスを経ずに析出硬化を誘起する手法を実験的に検証しました。
  • 重要なブレークスルー: 鋳造時の冷却速度が0.03 °C/sを超えることで、α-Al相中に銅(Cu)が十分に固溶し、その後の時効処理によって顕著な析出硬化が可能になることが明らかになりました。
  • 結論: 鋳造工程における冷却速度の適切な制御は、問題の多いT6熱処理の固溶化工程を代替し、欠陥の少ない高強度ADC12部品を実現するための有効な手段となり得ます。

課題:なぜこの研究がHPDC専門家にとって重要なのか

自動車の軽量化による燃費向上や排出ガス削減の要求が高まる中、時効硬化型アルミニウム合金への注目が集まっています。特にダイカストは、薄肉で複雑形状の部品を高い生産性で製造できるため、トランスミッションケースやエンジンブロックなどに広く利用されています。しかし、鋳造Al合金は鍛造材に比べて強度が劣るため、構造部材への適用は限定的でした。

この強度を向上させる一般的な手法がT6熱処理(溶体化処理+時効処理)です。しかし、鋳造品を約500°Cの高温で加熱する溶体化処理は、内部のガスが膨張して「膨れ(blister defect)」と呼ばれる表面欠陥を引き起こすリスクがあり、特に高圧ダイカスト(HPDC)部品への適用を困難にしていました。本研究は、この高温での溶体化処理を省略し、鋳造時の冷却プロセスそのものを利用して析出硬化を実現するという、製造現場の課題に直結する重要なテーマに取り組んでいます。

アプローチ:研究手法の解明

本研究では、市販のAl-Si-Cu系合金(ADC12: Al-10.4Si-1.7Cu-0.3Mg-0.9Fe mass%)を用いて、鋳造時の冷却速度がその後の析出硬化に与える影響を体系的に調査しました。

手法1:冷却速度の制御
ADC12合金(95g)を630°Cで溶解し、熱的特性の異なる鋳型に重力鋳造することで、4つの異なる冷却速度を実現しました。

  • GC (Gravity Casting in steel mold): 鋼製鋳型による急冷 (1.17 °C/s)
  • AC (Air Cooling in ceramic mold): セラミック製鋳型による空冷 (0.052 °C/s)
  • FAC (Furnace Air Cooling in ceramic mold): セラミック製鋳型を用い、炉内で送風冷却 (0.030 °C/s)
  • FC (Furnace Cooling in ceramic mold): セラミック製鋳型を用い、炉内で徐冷 (0.006 °C/s)

手法2:析出硬化と特性評価
鋳造された各サンプルに対し、高温の固溶化処理(STプロセス)を行わず、175°Cおよび220°Cで1~96時間の低温時効処理(LTA)を施しました。その後、マイクロビッカース硬さ試験、ナノインデンテーション試験、引張試験により機械的特性を評価し、光学顕微鏡、EBSD(電子後方散乱回折)、STEM(走査透過電子顕微鏡)を用いて微細組織の変化を詳細に観察しました。

ブレークスルー:主要な研究結果とデータ

本研究により、冷却速度がADC12合金の機械的特性をいかに左右するかが、具体的なデータと共に明らかになりました。

発見1:冷却速度が析出硬化の鍵を握る

最大の発見は、鋳造時の冷却速度が0.03 °C/s(FACサンプル)を超える場合にのみ、その後の低温時効処理によって有効な析出硬化が起こることです。図5(a)に示すように、175°Cで20時間時効処理を行った後、冷却速度の速いGC(1.17 °C/s)およびAC(0.052 °C/s)サンプルは、約115HVという高いビッカース硬度値を示しました。 一方、最も冷却速度が遅いFCサンプル(0.006 °C/s)では、硬度の上昇はほとんど見られませんでした。これは、速い冷却によってCu原子がα-Alマトリックス中に過飽和に固溶し、後の時効処理で硬化に寄与する析出物を形成できたことを示唆しています。

発見2:硬化メカニズムを微細組織レベルで解明

なぜ冷却速度によって硬化の度合いが変わるのか、そのメカニズムがSTEM観察によって解明されました。図7に示すように、有効な硬化が見られたFACサンプルでは、時効処理後に析出硬化の主因であるθ' (CuAl2) の準安定相が明確に観察されました。 これに対し、硬化しなかったFCサンプルでは、θ'相は観察されず、代わりにQ相(AlMgSiCu)が形成されていました。この微細組織レベルでの違いが、巨視的な機械的特性の差となって現れたのです。

研究開発および製造現場への実践的示唆

本研究の成果は、様々な役割の専門家にとって、具体的で実践的な知見を提供します。

  • プロセスエンジニア向け: この研究は、鋳造プロセスにおける冷却速度を0.03 °C/s以上に制御することで、T6熱処理の固溶化工程を省略しつつ、析出硬化による強度向上が可能であることを示唆しています。これにより、膨れ欠陥のリスクを低減し、工程の簡略化やコスト削減に貢献できる可能性があります。
  • 品質管理チーム向け: 論文の図5は、冷却速度と時効条件(温度・時間)が硬度に与える影響を明確に示しており、新しい品質検査基準を策定する際の貴重なデータとなります。例えば、製品の特定部位の硬度を測定することで、その部位が適切な冷却速度で製造されたかを間接的に評価できる可能性があります。
  • 設計エンジニア向け: この結果は、部品の肉厚や形状といった設計要素が、凝固時の局所的な冷却速度に影響を与え、最終的な機械的特性を左右することを示しています。強度が必要な部位の冷却を促進するような設計(例:冷却管の配置検討)は、初期設計段階で考慮すべき重要な要素となります。

論文詳細


Effect of Cooling Rate on the Precipitation Characteristics of Cast Al-Si-Cu Alloy

1. 概要:

  • 論文名: Effect of Cooling Rate on the Precipitation Characteristics of Cast Al-Si-Cu Alloy
  • 著者: M. Okayasu, N. Sahara, M. Touda
  • 発表年: 2021
  • 発表誌/学会: ARCHIVES of FOUNDRY ENGINEERING
  • キーワード: Aluminum alloy, Casting, Precipitation, Solid solution, Aging, Solidification rate

2. 要旨:

鋳造アルミニウム合金(ADC12)の析出硬化の程度に及ぼす冷却速度の影響を実験的に調査した。本研究では、時効処理(Cuベースの析出硬化)後のADC12の機械的特性を改善するため、α-Al相へのCuの固溶化における冷却速度を調査した。0.03 °C/sを超える冷却速度での鋳造プロセス中に、α-Al相へのCuの固溶が起こった。このプロセスは、T6処理の固溶化プロセスに置き換えられた。固溶の程度は冷却速度に依存し、冷却速度が速いほど、より広範な固溶が形成された。高い冷却速度で作製された鋳造ADC12合金では、低温加熱(175 °Cで20時間)後に高い析出硬化が起こり、鋳造Al合金の機械的特性が向上した。しかし、より高い温度でより長時間の低温加熱を行うと、過時効により硬度が低下した。

3. 緒言:

地球温暖化とガス排出量削減のための車両軽量化の需要により、時効硬化型アルミニウム合金が近年注目を集めている。鋳造技術は薄肉で複雑な形状の部品を高生産性で製造する利点があるため、自動車部品に広く用いられている。しかし、鋳造Al合金は材料強度が低いため、その使用は満足のいくものではなかった。機械的特性を改善するアプローチとして、冷却速度の制御による二次デンドライトアーム間隔(SDAS)の微細化や、T6処理による準安定析出物の利用がある。しかし、T6処理における高温の固溶化プロセスは、鋳造Al合金に膨れ欠陥を発生させるため適していない。先行研究では、高圧ダイカストの急速凝固プロセスによって固溶化プロセスを代替できることが示されたが、適切な冷却速度は明確にされていなかった。したがって、本研究では、鋳造Al合金の析出硬化に及ぼす凝固速度の影響を調査する。

4. 研究の概要:

研究トピックの背景:

自動車産業における軽量化の要求に応えるため、鉄鋼材料を代替可能な高強度鋳造アルミニウム合金の開発が求められている。

先行研究の状況:

鋳造Al合金の強度向上策として、凝固時の冷却速度制御による組織微細化や、T6処理による析出硬化が知られている。しかし、T6処理における高温の固溶化プロセスは、鋳造欠陥(膨れ)を引き起こすため、特にダイカスト部品への適用には課題があった。急速凝固が固溶化プロセスを代替しうることが示唆されていたが、析出硬化を可能にするために必要な具体的な冷却速度の閾値は明らかにされていなかった。

研究の目的:

本研究の目的は、鋳造Al-Si-Cu合金(ADC12)において、T6処理の高温固溶化プロセスを経ずに析出硬化を達成するために、凝固時の冷却速度が及ぼす影響を定量的に明らかにすることである。

研究の核心:

本研究では、4つの異なる冷却速度でADC12合金を鋳造し、その後の低温時効処理による硬化挙動を比較検討した。機械的特性の評価と微細組織観察を通じて、析出硬化を可能にする冷却速度の臨界値を特定し、そのメカニズムを解明した。

5. 研究方法

研究デザイン:

市販のADC12合金を用い、鋳型材質(鋼、セラミック)と冷却環境(大気中、炉内)を組み合わせることで4水準の冷却速度(1.17, 0.052, 0.030, 0.006 °C/s)を設定した。鋳造後、固溶化処理は行わず、175°Cおよび220°Cで低温時効処理を施し、各サンプルの機械的特性と微細組織を比較評価する実験的アプローチを採用した。

データ収集・分析方法:

温度プロファイルは熱電対を用いて直接測定した。機械的特性は、マイクロビッカース硬さ試験機、ナノインデンテーションシステム、および万能試験機(引張試験)を用いて評価した。微細組織観察には、光学顕微鏡、EBSD(電子後方散乱回折)分析機能付きSEM(走査電子顕微鏡)、およびSTEM(走査透過電子顕微鏡)が用いられた。

研究対象と範囲:

研究対象は、市販の鋳造用アルミニウム合金ADC12(Al-10.4Si-1.7Cu-0.3Mg-0.9Fe mass%)である。調査範囲は、重力鋳造によって得られる冷却速度(0.006 °C/sから1.17 °C/s)が、その後の低温時効処理(175°Cおよび220°C)による析出硬化挙動に与える影響に限定される。

6. 主要な結果:

主要な結果:

  • 鋳造プロセス中の冷却速度が0.03 °C/sを超える場合、α-Alマトリックス中にCu元素の固溶が起こった。この鋳造時の冷却プロセスは、析出硬化を誘起するためのT6固溶化処理の代替となりうる。
  • 固溶の程度は冷却速度に依存し、より速い冷却速度でより広範な固溶が形成された。
  • 冷却速度が0.03 °C/sを超えるサンプルでは、時効処理後に析出硬化が確認された。特にGCおよびACサンプルでは、175°Cで20時間の時効処理後に高いビッカース硬度値が得られた。
  • より高い温度や長時間の時効処理では過時効が発生し、機械的特性が低下した。
  • STEM分析により、硬化したサンプル(FAC-LT)ではθ' (CuAl2) 準安定相の析出が確認された一方、硬化しなかったサンプル(FC-LT)では析出が見られなかった。

Figure Name List:

  • Fig. 1. Schematic diagram of various solicUfication processes to obtain different cooling rate
  • Fig. 2. Temperature profiles during the solidification of the ADC12 samples (GC, AC, FAC, and FC)
  • Fig. 3. Micrographs of the cast ADC12 samples obtained using four different cooling rates (i. e., the GC, AC, FAC, and FC samples) and various heating processes
  • Fig. 4. EBSD analysis (IPF and KAM maps) of the GC, AC, FAC, and FC samples of ADC12 before LT aging.
  • Fig. 5. Vickers hardness as a function of aging time for the GC, AC, FAC, and FC ADC12 samples: (a)175°C and (b) 220°C
  • Fig. 6. (a) Harclness values determined by nano-indentation and (b) curves of load vs. depth before and after the heating processes for the GC, AC, FAC, and FC ADC12 samples
  • Fig. 7. STEM images for the FAC-LT, and FC-LT samples
Fig. 2. Temperature profiles during the solidification of the ADC12 samples (GC, AC, FAC, and FC)
Fig. 2. Temperature profiles during the solidification of the ADC12 samples (GC, AC, FAC, and FC)
Fig. 3. Micrographs of the cast ADC12 samples obtained using four different cooling rates (i. e., the GC, AC, FAC, and FC samples) and various heating processes
Fig. 3. Micrographs of the cast ADC12 samples obtained using four different cooling rates (i. e., the GC, AC, FAC, and FC samples) and various heating processes
Figure 5 presents the Vickers hardness as a function of aging time at 175°C and 220°C for the four samples. The hardness values of GC, AC, and FAC samples increased rapidly upon subjecting them to LTA at 175°C for approximately 20 h, although a slight improvement of hardness is obtained by LTA at 220°C. After aging at 175°C for 20 h, the GC and AC samples displayed high hardness values of 115 HV. The enhancement of the hardness value could be attributed to the different severity of precipitation hardening. In contrast, the hardness values of the three samples decreased when they were over-aged by heating for more than 20 h [12]. Moreover, the hardness profile of the FC sample plateaued and decreased as the heating time increased at 175°C and 220°C, respectively. Note, despite no clear microstructural changes for the cast ADC12 samples after LTA (Figure 3), the hardness values were altered for all samples. (a) Temperature: 175°C
Figure 5 presents the Vickers hardness as a function of aging time at 175°C and 220°C for the four samples. The hardness values of GC, AC, and FAC samples increased rapidly upon subjecting them to LTA at 175°C for approximately 20 h, although a slight improvement of hardness is obtained by LTA at 220°C. After aging at 175°C for 20 h, the GC and AC samples displayed high hardness values of 115 HV. The enhancement of the hardness value could be attributed to the different severity of precipitation hardening. In contrast, the hardness values of the three samples decreased when they were over-aged by heating for more than 20 h [12]. Moreover, the hardness profile of the FC sample plateaued and decreased as the heating time increased at 175°C and 220°C, respectively. Note, despite no clear microstructural changes for the cast ADC12 samples after LTA (Figure 3), the hardness values were altered for all samples. (a) Temperature: 175°C

7. 結論:

本研究では、鋳造ADC12の析出の程度に及ぼす冷却速度の影響を調査した。得られた実験結果に基づき、以下の結論が導き出される。
1) 0.03 °C/s (FAC) を超える冷却速度での鋳造プロセス中に、α-Alマトリックス内でCu元素の固溶が発生した。この冷却プロセスは、CuAl2の析出硬化を誘起するためのT6固溶化処理の代替となりうる。固溶の程度は冷却速度に依存し、冷却速度が速いほど、より広範な固溶が形成された。
2) 冷却速度 > 0.03 °C/s で冷却された鋳造ADC12サンプルでは、時効処理後に析出硬化が発生した。さらに、GCおよびACサンプルでは、175°Cで20時間の時効処理後に高いビッカース硬度値が得られた。より高い温度および長時間の加熱プロセスでは過時効が発生し、機械的特性の低下を招いた。

8. 参考文献:

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専門家Q&A:技術的な疑問に答える

Q1: なぜ低温時効処理(LTA)の温度として175°Cと220°Cが選ばれたのですか?

A1: 論文によると、これらの加熱温度は著者らの先行研究[12]に基づいて決定されました。この先行研究において、ADC12合金の時効による機械的特性への影響が詳細に分析されており、今回の研究ではその知見を基に、析出硬化を評価する上で適切な温度としてこれらの値が採用されました。

Q2: 0.03 °C/sという冷却速度の閾値には、どのような物理的な意味があるのですか?

A2: この0.03 °C/sは、本研究において、鋳造中にα-Alマトリックス内へCu(銅)が後の析出硬化に十分な量だけ固溶するために必要とされた最低限の冷却速度です。これより遅い冷却速度(例:FCサンプルの0.006 °C/s)では、凝固中にCuが平衡相として晶出してしまい、マトリックス中に固溶する量が不十分になるため、後の時効処理で硬度を向上させることができませんでした。

Q3: 二次デンドライトアーム間隔(SDAS)は冷却速度によってどのように変化しましたか?

A3: 論文の表1に示されている通り、SDASと冷却速度には明確な逆相関の関係が見られました。最も速い冷却速度であるGC(1.17 °C/s)ではSDASが13.2 µmと最も小さく、最も遅いFC(0.006 °C/s)では95.0 µmと最も大きくなりました。これは、冷却速度が速いほど凝固組織が微細化するという一般的な鋳造の原則を裏付けています。

Q4: 時効処理の前後で、光学顕微鏡レベルでの組織に目立った変化はありましたか?

A4: ありませんでした。図3(b)に示すように、長時間の時効処理後でも、共晶相などに顕著な組織変化は観察されませんでした。硬度の大幅な変化は、光学顕微鏡では観察できないナノスケールの析出物(準安定相)の形成または粗大化に起因するものであり、マクロな組織レベルでの変化ではないことが示唆されます。

Q5: 硬度上昇に寄与した具体的な析出物と、硬化しなかった場合に見られた相は何ですか?

A5: 図7のSTEM観察結果がその答えを示しています。有効な硬化が見られたFACサンプルでは、時効処理後に硬化の主因であるθ' (CuAl2) 準安定相が明確に観察されました。一方、硬化しなかったFCサンプルでは、このθ'相は見られず、代わりにQ相 (AlMgSiCu) が形成されていました。この析出する相の違いが、両者の機械的特性の差を決定づけたと考えられます。

結論:高品質・高生産性への道を拓く

本研究は、鋳造アルミニウム合金ADC12の強度向上における長年の課題、すなわちT6熱処理に伴う膨れ欠陥のリスクに対する、エレガントな解決策を提示しました。重要なブレークスルーは、鋳造時のADC12 冷却速度を0.03 °C/s以上に制御することで、高温の固溶化処理を省略し、その後の低温時効処理だけで高い強度を引き出せることを実証した点にあります。これは、プロセスエンジニアにとっては工程の簡略化と欠陥率の低減を、設計エンジニアにとっては材料のポテンシャルを最大限に引き出す設計の可能性を意味します。

CASTMANでは、こうした最新の業界研究を応用し、お客様の生産性と品質の向上を支援することにコミットしています。本稿で議論された課題が貴社の事業目標と合致する場合、これらの原理をいかに貴社の部品に適用できるか、ぜひ当社のエンジニアリングチームにご相談ください。

著作権情報

このコンテンツは、"[M. Okayasu, N. Sahara, M. Touda]" 氏による論文 "[Effect of Cooling Rate on the Precipitation Characteristics of Cast Al-Si-Cu Alloy]" に基づく要約および分析です。

出典: [https://doi.org/10.24425/afe.2021.138679]

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