本論文概要は、['Proceedings of InterPACK’03®']によって発表された['Characterization of Mixed Metals Swaged Heat Sinks for Concentrated Heat Source']という論文に基づいて作成されました。
1. 概要:
- タイトル: 集中熱源用混合金属スウェージヒートシンクの特性評価 (Characterization of Mixed Metals Swaged Heat Sinks for Concentrated Heat Source)
- 著者: Ahmed M. Zaghlol, William Leonard, Richard Culham
- 発表年: 2003年
- 発表ジャーナル/学会: Proceedings of InterPACK’03®: International Electronic Packaging Technical Conference and Exhibition (国際電子パッケージング技術会議および展示会)
- キーワード: ヒートシンク, 混合金属, スウェージ, 熱性能, 強制対流, 集中熱源 (heat sink, mixed metal, swaged, thermal performance, forced convection, concentrated heat source)



2. 抄録または序論
本研究論文は、強制対流条件下における4種類の異なるヒートシンク構成の熱性能に関する実験的研究を紹介します。本研究では、アルミニウムと銅を様々な組み合わせで使用したヒートシンク、すなわち、全アルミニウム、全銅、銅ベースプレートとアルミニウムフィン、アルミニウムベースプレートと銅フィンを比較します。研究の目的は、集中熱源にさらされた場合のこれらの混合金属スウェージヒートシンクの熱抵抗特性を評価し、対比することです。実験は垂直風洞内で行われ、様々な空気流速をシミュレーションし、各ヒートシンク設計の熱的挙動を評価するために、レイノルズ数を体系的に変更しました。
3. 研究背景:
研究テーマの背景:
電子システムの性能向上への要求の高まりは、高温と効果的な放熱に関連する問題によってますます制約されています。ヒートシンクが不可欠な2つの重要な分野は、PCボードレベルのマイクロプロセッサとパワーエレクトロニクスです。電子パッケージの小型化の傾向と電力密度の増加は、熱流束の大幅な増加につながります。ヒートシンクの熱抵抗を軽減するために、設計エンジニアは、アルミニウムよりも優れた熱伝導率を示す材料、特に銅などの材料を使用する必要があります。アルミニウムベースプレート上の銅フィン、銅ベースプレート上のアルミニウムフィン、および全銅構造などのヒートシンク設計における銅などの金属の戦略的な実装は、熱拡散能力を高める上で重要な役割を果たします。
既存研究の現状:
低消費電力および中程度の熱流束を特徴とするアプリケーションの場合、押出しヒートシンクは、その費用対効果のために主に採用されています。しかし、押出し製造プロセスには限界があり、特にフィン厚さと間隔が減少するにつれてダイが破損しやすくなる高アスペクト比フィンを製造する際に限界があります(Chu、Belady、Patelの研究を参照)。高消費電力および高熱流束のシナリオでは、高アスペクト比のボンドヒートシンクが適切になります。ダイカストは、大量生産のための実行可能な製造代替手段として浮上し、低い平均コストプロファイルを提供します。それにもかかわらず、ダイカストは、多孔性が増加し、合金純度が低下した製品をもたらし、結果として熱伝導率を低下させる可能性があることを認識することが重要です。ボンドフィンヒートシンクでは、ベースは通常、プレートまたは押出しフィンの挿入を容易にするためにスロット付きの押出し形状で製造されます。フィンをベースプレートに取り付けることは、熱エポキシ、ろう付け、または「スウェージ」を含む様々な方法によって達成できます。熱エポキシは、高アスペクト比フィンを接着するために頻繁に使用されます。ただし、熱エポキシの本質的に低い熱伝導率のため、熱インピーダンスを低減するために厚さを最小限に抑える必要があります。ろう付けは、フィラー材料の液相温度(450℃)以上および母材の固相温度以下で実行される溶接サブグループであり、ジョイント内のフィラー材料分布のために毛細管現象に依存しています。
研究の必要性:
本研究は、「スウェージ」プロセス、金属変位接合技術を使用して製造されたヒートシンクの熱性能特性評価に焦点を当てています。図1に示されているスウェージプロセスは、高密度フィンヒートシンクの製造に適した冷間成形プロセスです。この方法は、フィンとベース間の堅牢な熱接触を保証すると同時に、空気と湿気から溝を密閉することによって腐食を防ぎ、したがって陽極酸化処理を可能にします。本研究は、スウェージによって製造された様々な混合金属構成の熱抵抗を実験的に定量化し、比較することにより、改善されたヒートシンク性能のための材料選択の最適化に関する貴重な洞察を提供することを目的としています。
4. 研究目的と研究課題:
研究目的:
主な研究目的は、強制対流下における4種類の異なるヒートシンク設計の熱性能を実験的に評価し、比較することです。これらの設計は次のとおりです。アルミニウムベースプレート/アルミニウムフィン(Al Base-Al Fins)、銅ベースプレート/アルミニウムフィン(Cu Base-Al Fins)、アルミニウムベースプレート/銅フィン(Al Base-Cu Fins)、銅ベースプレート/銅フィン(Cu Base-Cu Fins)。本研究は、ベースプレートとフィン材料の様々な組み合わせ、特にアルミニウムと銅が集中熱源にさらされた場合にスウェージヒートシンクの全体的な熱抵抗に及ぼす影響の理解に焦点を当てています。
主な研究課題:
本研究で取り組む主な研究課題は次のとおりです。
- 材料の組み合わせ(ベースプレートおよびフィンに対するアルミニウム対銅)は、強制対流下におけるスウェージヒートシンクの熱抵抗にどのように影響するか?
- 全アルミニウムヒートシンクと比較して、混合金属構成を活用することで達成される熱抵抗の減少率はどの程度か?
- 混合金属ヒートシンクにおける銅(ベースプレート対フィン)の位置は、集中熱源にさらされた場合の熱性能にどのように影響するか?
- レイノルズ数の関数としての様々なヒートシンク設計に関連する圧力降下特性は何か?
研究仮説:
明示的に仮説として述べられてはいませんが、本研究は、次の予想によって暗黙のうちに導かれています。
- 銅は熱伝導率が高いため、銅を組み込んだヒートシンクは、全アルミニウムヒートシンクと比較して、より低い熱抵抗を示すでしょう。
- 全銅ヒートシンクは、テストされた構成の中で最も低い熱抵抗を示すでしょう。
- 混合金属ヒートシンクは、中間程度の熱性能を提供し、性能の向上度は、ベースプレートまたはフィンのいずれかに銅を戦略的に配置するかどうかによって異なります。
- 特に平坦な銅フィンを備えたヒートシンクは、フィン形状と厚さの違いにより、アルミニウムセレーションフィンを備えたヒートシンクと比較して、より高い圧力降下を示す可能性があります。
5. 研究方法論
研究デザイン:
本研究では、強制対流下における4つの異なるヒートシンク構成の熱性能を調査するために、制御された垂直風洞を利用した実験的研究デザインを採用しました。実験設定には、風洞内でバックツーバック構成で同一のヒートシンクペアをテストすることが含まれていました。図3に示すこの配置は、熱損失を最小限に抑え、放熱を正確に測定することを目的としていました。
データ収集方法:
温度測定は、テフロンコーティングされた5ミルT型銅-コンスタンタン熱電対を使用して取得しました。熱電対は、ベースプレート温度を測定するために、各ヒータープレートの4つの内部位置(図5のT1-T4として表示)に戦略的に配置されました。周囲温度は、主流量路のすぐ外側に配置された2つの熱電対を使用して監視しました。ヒートシンクアセンブリに接近する空気速度は、上流に配置されたDantecホットワイヤー風速計を使用して測定しました。ヒートシンクを横切る圧力降下は、2つのDwyer差圧トランスデューサを使用して測定し、測定はヒートシンクアセンブリの上流と下流で行いました。
分析方法:
熱性能を評価するための主要な指標は熱抵抗(Rθ)であり、式(1)を使用して計算しました。

ここで、Tsは平均ベースプレート温度、Tambは周囲空気温度、Qは熱伝達率です。平均ベースプレート温度Tsは、式(2)を使用して4つの熱電対読み取り値の平均として計算しました。

全アルミニウムヒートシンクと比較した代替金属ヒートシンクの熱抵抗の減少は、式(3)を使用して定量化しました。

フィンチャネルの空気の流れに対するレイノルズ数(Res)は、式(4)を使用して計算しました。

研究対象と範囲:
研究対象は、4つの異なるヒートシンク設計でした。
- アルミニウムベースプレート/アルミニウムフィン(Al B-Al F)
- 銅ベースプレート/アルミニウムフィン(Cu B-Al F)
- アルミニウムベースプレート/銅フィン(Al B-Cu F)
- 銅ベースプレート/銅フィン(Cu B-Cu F)
すべてのヒートシンクは、図2と表1に詳述されているように、同一のベースプレート面積、フィン高さ、およびフィン中心間距離を共有していました。アルミニウムフィンはセレーションおよび押出し成形され、銅フィンは平坦であり、圧延シートからせん断されました。実験は、1000から4000までのレイノルズ数範囲で実施され、これは2m/sから8m/sの接近速度に相当します。熱源は、ベースプレート表面積の10%を覆いました。
6. 主な研究結果:
主な研究結果:
実験結果は、テストされたヒートシンク構成間で熱性能に大きな違いがあることを実証しました。全銅ヒートシンク(Cu B-Cu F)は、最も低い熱抵抗を示し、全アルミニウムヒートシンク(Al B-Al F)と比較して平均22%の減少を達成しました。混合金属ヒートシンクは、中間程度の性能向上を示しました。具体的には、銅ベース/アルミニウムフィン(Cu B-Al F)ヒートシンクは、銅ベースプレートの強化された熱拡散により、熱性能が11.4%向上しました。アルミニウムベース/銅フィン(Al B-Cu F)ヒートシンクは、銅フィンの増加したフィン効率により、8.5%の向上を示しました。図8に示す圧力降下測定結果は、銅フィンを備えたヒートシンク(Al Base – Cu FinおよびCu Base-Cu Fin)が、アルミニウムフィンを備えたヒートシンクよりも高い圧力降下を経験したことを示しています。
提示されたデータの分析:
表2は、テストされたレイノルズ数範囲にわたる全アルミニウムヒートシンクに対する各代替金属ヒートシンクの熱抵抗の減少率を定量化しています。図7は、4つのヒートシンクタイプすべてについて、レイノルズ数の関数としての熱抵抗をグラフで示し、全銅設計の優れた性能と混合金属設計の中間的な性能を示しています。図8は、圧力降下特性を示しており、銅フィンヒートシンクに関連する圧力降下の増加を強調しています。データは、銅が熱性能を大幅に向上させる一方で、重量も増加させ、平坦なフィンの場合は圧力降下も増加させることを示しています。
図リスト:
- 図1:スウェージプロセス (Swaging process)
- 図2:ヒートシンクの形状と寸法 (Heatsink geometry and dimensions)
- 図3:バックツーバックヒートシンク構成 (Heat Sink Back-to-Back Configuration)
- 図4:ヒートシンクとヒータープレート (Heat Sink and Heater Plate)
- 図5:10%カバレッジヒータープレートの熱電対位置 (Thermocouple Locations on 10% Coverage Heater Plate)
- 図6:試験装置 (Testing Rig)
- 図7:フィン間隔レイノルズ数に対する熱抵抗 (Thermal resistance vs. fin spacing Reynolds Number)
- 図8:フィン間隔レイノルズ数に対する圧力降下 (Pressure drop vs. fin spacing Reynolds Number)

Figure 4: Heat Sink and Heater Plate
Figure 5: Thermocouple Locations on 10% Coverage Heater Plate
Figure 6: Testing Rig

Figure 8: Pressure drop vs. fin spacing Reynolds Number
7. 結論:
主な調査結果の要約:
本実験的研究は、混合金属スウェージヒートシンクの熱性能の利点を決定的に実証しています。全銅ヒートシンクは、全アルミニウムと比較して22%の熱抵抗の減少を達成し、最高の熱性能を提供します。混合金属設計は、性能と重量の間のトレードオフを提供します。銅ベースプレート(Cu B-Al F)を活用することは、アルミニウムベースプレートに銅フィンを使用するよりも(Al B-Cu F、8.5%の改善)、熱抵抗を低減するのに効果的です(11.4%の改善)。ただし、銅ヒートシンクは重量が大幅に重くなります。
研究の学術的意義:
本研究は、スウェージプロセスを使用して製造された様々な混合金属ヒートシンク構成に関する貴重な実験データと比較分析を提供します。ヒートシンク設計に銅を組み込むことの熱性能の利点を定量化し、電子システムの熱管理における材料選択の影響に関するより深い理解に貢献します。本研究は、強制対流下で熱拡散を強化する銅ベースプレートとフィン効率を向上させる銅フィンの効果を強調しています。
実用的な意味合い:
調査結果は、性能要件、重量の考慮事項、およびコスト制約に基づいて適切な材料と構成を選択する際に、ヒートシンク設計者に実用的なガイダンスを提供します。最高の熱性能を要求するアプリケーションの場合、全銅ヒートシンクが最適ですが、重量が増加します。混合金属設計、特に銅ベース/アルミニウムフィンヒートシンクは、重量の急激な増加を抑えながら、改善された熱性能の説得力のあるバランスを提供します。本研究はまた、スウェージプロセスを高性能混合金属ヒートシンクの製造のための実行可能な製造技術として検証します。
研究の限界と今後の研究分野:
本研究は、強制対流条件と、制御された風洞環境内でテストされた特定のヒートシンク形状に限定されています。熱源サイズは、ベースプレートカバレッジ10%で固定されました。今後の研究では、研究結果を一般化するために、より広範囲のヒートシンク形状、フィン設計(例:様々なフィンプロファイルと間隔)、および熱源サイズを調査することができます。自然対流および様々な空気流条件での熱性能を調査することも有益でしょう。追加の研究では、実際の電子アプリケーションにおけるスウェージ混合金属ヒートシンクの長期的な信頼性と費用対効果を調査することもできます。
8. 参考文献:
- H.W. Chu, C.L. Belady and C.D. Patel, “A Survey of High-performance, High Aspect Ratio, Air Cooled Heat Sinks", 1999 International Systems Packaging Symposium, Jan. 11-13, 1999, San Diego, California, USA.
- H. Jonsson and B. Palm, “Influence of Airflow Bypass on the Thermal performance and Pressure Drop of Plate Fin and Pin Fin Heat Sinks for Electronics Cooling", Proceedings of Eurotherm Sem. No. 58, Nantes, France, Sept. 24-26, 1997, pp. 44-50.
- W. Leonard, P. Teertstra, J.R. Culham and A. Zaghlol, "Characterization of Heat Sink Flow Bypass in Plate Fin Heat Sinks", Proceedings of IMECE 2002: International Mechanical Congress and Exposition Nov. 17-22, 2002 New Orleans, Louisiana.
- Robert W. Messler Jr., Joining of Advanced Materials, Stoneham, MA, 1993.
- R-Theta Catalogues.
- Zaghlol, K. Hermann, J. Butler, P. Teertstra, and J.R. Culham, "Forced Convection Heat Transfer for Swaged Mixed Metal Heat sinks," Proceedings of Itherm2002 IEEE Symposium, May 29-June1, 2002, San Diego, California, USA.
- Zaghlol, W. Leonard, and J.R. Culham, “Characterization of Swaged Mixed Metal Heat sinks," to be presented in APEC 2003, Miami Beach, Florida, February 2003.
9. 著作権:
- 本資料は、"Ahmed M. Zaghlol, William Leonard, Richard Culham"の論文:「Characterization of Mixed Metals Swaged Heat Sinks for Concentrated Heat Source」に基づいています。
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